« 0036 | トップページ | 0042 »

スワンネックのように歪みの少ないゴルフクラブが市場に流通することなく、歪んだクラブでしかゴルフが出来ない場合、一番いいのはゴルフをしないことだ。これに勝る方法はない。

しかし嫌でもゴルフをしなければ接待が出来ない、付き合いが出来ない、仕事にならないというのが宮仕えの常でもあるし、ゴルフが出来れば夫婦で楽しめるのだが、という場合もあるだろう。

そこで、ゴルフが歪んだスポーツであるということを十分了解した人間が、それでもやむを得ずゴルフをしなければならない時どうするか。

 
あるいは練習場へ通わなければ楽しめないような傲慢(ごうまん)なスポーツには耐えられないが、夫婦でゴルフ場を歩くのは嫌でないという場合、どうしたらまっとうな人間でいながらゴルファー並にゴルフが出来るか、スライスを避けられるか、教える。 ただしそれは飽くまで最後の手段であり、やらないに越したことはない。

ゴルファーにとってスライスを治す方策はゴマンとある。しかしながら、まっとうで健全な人間のために、ゴルファーにならずに済ませてなお、スライスを避ける、というアドヴァイスはほんの二つ三つしかない。

一つは激しいグースネックのクラブを使うことだ。計算上、ヘッドがシャフトから30センチ右に引っ込んでいるような化け物グースがあれば、何とかなる。しかしそれはスワンネックよりもっと不気味だろう。

次の方法は、右足かかとを上げずにスイングすることである。右足のかかとを絶対に上げずにスイングする。どれほど思い切り打っても構わないが、決して右足のかかとを上げてはいけない。無論体重を左にシフトしなければ明治の大砲だから、右足に体重は残せない。

歪んだ道具を使って、しかも右足のかかとを上げたら、その先は歪んだゴルファーへまっしぐらだ。
 
ゴルファーという人種は右足のかかとを上げてもボールが打てる。健全な人間には、インパクトはアドレスの再現でなければならないと教訓を垂れているゴルファー本人が、その舌の根が乾かないうちに、アドレスで上げていない右足のかかとを、インパクトでは目一杯上げて打っているという非道を許すことは出来ない。

アドレスと違う格好で、何ゆえアドレスと同じところにあるボールが打てるか。馬鹿野郎。アドレスに戻れと教えながら、アドレスと違う格好でボールを打たせる。それについて全てのゴルファーが口を閉ざし、誰ひとり語ろうとしない。

 
その明らかな事実にフタをして、封印している。ピタゴラス学派は正方形の対角線の長さについて、その線を引くことはもちろん、語ることさえ禁止した。

タイガー・ウッズの面白いところは、頭を激しく上下させる、いわゆるスウェイ打法で見事にナイスショットするが、正確なコントロールを心がけたときのショットでは、かかとをほとんど上げないことだ。

 
実はスウェイ打法はかかとを上げないでも済むのだが、歪んだゴルファーはこの重要なポイントには言及せず、ただスウェイは良くないと小さな声でタイガーに反抗する。

右足のかかとを上げないでスイングしても、絶対スライスしないとは言い切れない。しかしそれで仮にボールが左に飛び出せば、スイングがそちらを向いていることがわかる。軌道を治せばいい。

 
重いものを引っ張れば誰でもそうなるのだから、初心者は大抵そうなる。ところが道具の歪みを信じないゴルファーは、スライスの原因を自分のスイングに帰着させようとがんばる。それでスイングが歪む。挙げ句の果ては、原因がこんがらかって、話はそう簡単ではなくなる。

歪んだクラブを使っても、その歪みはかかとを上げさえしなければ最小限の影響で収まるから、ゴルファーのように自分自身を歪ませなくともゴルフになる。 右足のかかとを上げないで打ってスライスする分が、あるいはホックする分が、ゴルフクラブ自体の持つ歪み分にほぼ等しいと思えばいい。ブルース・リツキも気にするほどではないとおっしゃっている。ただしくれぐれも明治の大砲にはならないように。

体重をきっちり左へシフトさせていながら、右足のかかとを3センチ以上浮かせずにスイングすることは簡単ではない。かかとを上げないでボールを打つのは実際不自然かも知れない。 しかしそれはアドレスに戻るという操作のために最も堅実な方法である。これで健全な肉体と精神を保持したまま何とかゴルフが出来るだろう。

タイガーが右足のかかとをほとんど上げずにスイングするのを見たとき、私はハッとした。誰かに似ている。そう、私はいま一人のタイガーのスイングを思い出したのである。

 
そのタイガーは中村寅吉という。彼のスイングで一番特徴的なのは、ボールを打つ瞬間に、右足のかかとをあまり上げないことだった。それをハッと思いだして、私は笑った。寅はタイガーだから。

ついでながら、かかとを上げないスイングとしては、体型的にもダフィー・ウォルドルフの方が寅さんに似ている。もう一つついでながら、寅さんは多くの弟子を育てたはずだが、フラミンゴ打法の樋口久子もその一人だ。

 
あれほどしっかりしたオーソドックススイングの寅さんが、フラミンゴ打法に関係していたというのは妙だが、今それを見られないゴルファーは実に不幸だ。チャコ・ヒグチのスイングの美しさは世界に誇れるし、歴史に残る、と私は思っている。
 
その右足のかかとは上がっていた。しかもそのかかとの上がり方が、世界一美しかった。

一般的には巨人軍のホームラン王、王貞治さんの打法をフラミンゴ打法と言う、らしい。しかし樋口さんの打法もやっぱりフラミンゴ打法だから、日本には偉大なフラミンゴ打法が二つある。

姿から見れば王さんの方かも知れないが、淡いピンク色やオレンジ色と白が舞うのだから、やっぱりそれは女性だろう。筆者

« 0036 | トップページ | 0042 »