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ゴルフのグリップは不自然に細い。それを不自然とさえ思わないのが、ゴルファーのゴルファーたる由縁である。車のハンドルがゴルフグリップと同じ細さだったら、文句が出るだろう。

初心者はゴルフグリップの細さを異常だと思う。しかし先輩ゴルファーがそれが当たり前だと言うものだから初心者は何も言えない。なぜ、と聞いても答えは返ってこない。知らないのだから。

ゴルフのグリップが細いのは、端的に言えば極限まで手首を使いたいからに他ならない。手首の自由度は握ったものの太さに敏感で、グリップが細ければ細いほど手首は動きやすいし、指先も繊細に動く。

 
その限界がゴルフグリップの細さになって現れる。グリップが細くなるとよく飛ぶから、グリップが細くなっていった。しかしそんな飛距離至上主義やショットの繊細さなどに無縁な初心者は、しっかり安心して握れることをグリップの基本と考えるだろう。

実際女性用のゴルフグリップは全く細い。理由を知らない女性ゴルファーがよく我慢できると思うほど細い。きっと「それがクラブというものだ」と物を知らない亭主やコーチに言われて素直に信じたのだろう。

それにしてもプロゴルファーやクラブ屋がグリップの細さについて何と言い逃れているのか聞いてみたい。きっとバードングリップで握るためには仕方がないと言うだろうが。

女性用クラブのグリップは飛距離以前の、グリップするという根本的なレベルで細すぎる。男性用のグリップが女性用のグリップとして限界の細さだろう。男性用のグリップは男性が使うことを考えたとき、やはり限界にある。度を超して細いとは思わないが、男性用の標準的なグリップの太さとして適当だとは考えられない。

そういうわけで、パワーがあって飛距離がとりあえず十分なゴルファーは、グリップを太くして手首の動きを押さえると、簡単にショットの精度が上がる。グリップはすでに細い側の限界だから、余程特殊な人以外はもっと太いのを使う方が正しい。プロの包丁を奥様が使えば、怪我(けが)が絶えないからご飯を食べさせてもらえない。

これからゴルフを始めるという人は初めからもっと太いものでスタートした方がいい。車のハンドルとか体操競技の鉄棒は人間が握るのにちょうどいいはずだ。野球のバットも飛ばすために幾らか細くなっているが、それでもゴルフのグリップよりはるかに太い。私のグリップはちょうどそのバットくらいだが、何の不都合もない。

クラブを買うときにシャフトの硬さを選べるようにグリップの太さも選べる時代がやってくるなら、そのときには太いグリップを選ぶといい。その方がゴルフは簡単だ。ゴルファーは初心者に負けたくないからわざわざ難しい細い方を勧めるだろうが、その手に引っかかってはいけない。プロになろうというなら幾らか話は違ってくるかもしれないが、それでもそんなに違うわけではない。

細いグリップだと当たりの感触がわかりやすいのは当然だが、それで何が出来るというわけではない。ヘッドの真ん中に当たらなかったためにグリップがずれてしまうのがわかるくらいで、同じ状況で太いグリップならずれないのだから、細いグリップには何の意味もない。いつでもヘッドの真ん中に当たるようになって、細いグリップを使ってみたくなったら、細くすればいい。どうせ元に戻すだろうが。

グリップの細さはグリップの仕方にも影響されている。私は野球のバットよろしくワシづかみだが、一般には左手の親指をグリップに添わせる。この方法はなかなかいい方法で文句はないが、グリップを太く出来ない原因になっている。

非力な女性は握力もないから、コントロールや飛距離以前にしっかり握れるワシづかみの方がいいのではないか。そうすればもっと太いグリップが使えてグリップがゆるまない。

なお、左手の親指をグリップに沿わせて伸ばすというゴルフならではの方法は棒を振り回すあらゆるスポーツのグリップよりも優れた特性を持っている。しかしその意味を知らずに使うことは意味がないのでやめた方がいい。

 
いいはずだから使うとか、高い方がいいはずだから高いのを買う、というのは常に正解とは限らないし、余りに下品だ。

ゴルフ独特の握り方は正確さを向上させるためにある。飛距離は落ちるだろう。せっかく無理に細いグリップで飛距離を増そうとしたのに、左手親指をシャフトに添わせたら、元の木阿弥、ワシづかみと同じ飛距離になってしまう。

上手なゴルファーになると左手の使い方が変わって、正確さを失うことなく飛距離も出せるのだが、それにしたって飛距離はワシづかみには及ばない。ホームランバッターがバードングリップでバットを持ったら、二度とホームランは打てない。

両手全体がグリップに接しているワシづかみは、センサーの数もコントローラーの数も劇的に多くなるので、慣れれば非常に繊細なグリップであり、バードングリップに負けるはずがない。

無神経で不器用な人には向かないが、そもそも無神経なゴルファーにゴルフは向かない。ハリー・バードンは無神経な人でもゴルフを楽しめるようにそのグリップを考案したのである。日本人の繊細さはバードングリップを必要としないばかりか、非力さを補う方が先決なのだ。

左手の親指をシャフトに沿わせると、グリップは非常に優れた性質を持つようになるのだが、その良さに気付くまでは逆効果になる。自分のレヴェルに合わせたものの方が使い易い。ゴルフの技術がかなりのレヴェルに達すれば、自然と親指の価値に気付くが、それまではそのありがたさに気付かないばかりか、かえってスイングを壊しかねない。

さらに後学のために言えば、シャフトに沿わせた親指の本当の価値は、何もわからないのに使っていると生涯わからないで終わる。むしろワシづかみでやっていく方が、早くその意味に気付く。

 
プロはワシづかみで打てと言われても平然と打つだろうが、その際普段当たり前に使っているバードングリップのすごさにハッとすることだろう。素人はワシづかみでは打てないと言う。ところが彼等は親指を沿わせる価値は知らない。価値を知る者は恐れないが、知らない者は恐れるのである。

火の用心の拍子木を持つとき、私たちの両手は手首を自然にロックする。この形はわしづかみに比べて手首のロックが鮮明になるという特徴を持つ。手首をロックすると、握る力は幾らか弱くなるが、その方向性に対する感度は桁違いに高まる。クラブを元の位置に正確に振り下ろすには最高のグリップである。これがバードングリップの秘密だ。

鉄棒にぶら下がるとき、子供は五本の指全部を鉄棒に掛けるが、大人は親指を下に回してわしづかみにする。なぜか。私はバードングリップを考えながら、ずっとこの謎を解こうとしていた。人が木に登るための手を授けられたいきさつを考えていた。

 
そしてバードングリップのすばらしさを本当に知っているならば、グリップをさほど太くする必要はないが、それにしてもやはりバードングリップが可能な範囲で太いグリップを使うのが適当だという結論に至った。

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