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練習の果てに、ゴルファーはある程度安定したショットを身に付けるだろう。ところがそれ以上の精度が出ない。練習量が足りないのか。そうではない。限界の練習量をこなしても、やはりどこかで精度が限界に来る。これを歩留まりという。

或る機械が1000個の製品を製造するときに5個の不良品を出すとする。全く同じ仕掛けの機械があって、そちらは不良品が2個しか出ない。全く同じ仕掛けの機械になぜ歩留まりの差が出るのだろう。

100分の1ミリの精度で作られた部品を1000個使って作られた機械があるとする。だから誤差が重なれば歩留まりに差が出る。これを改善するには同じ仕掛けでもう一度新しい機械を作ってみるしかない。

無論その機械の歩留まりは作ってみないとわからない。もっとうまい方法がないかと思うだろうが、部品の精度を100分の1ミリから1000分の1ミリに一段上げると、そのコストは歩留まり5個の機械を10台作るより高くなる。どちらが得かということになる。

ゴルファーには自分のスイングの仕掛けを変えて新しく出直すという手があるが、初めから作り替えるのは大変だし、人間の部品は換えられないから、部品の精度の影響を受けにくいスイングに変更する。そこで負帰還が登場する。上手なゴルファーがショットの精度に限界を感じたとき、ショットの精度を一時忘れてただひたすらボールを打ちまくる、という行動をとることが知られている。

まるで文化人類学みたいな話だが、それまで練習場でひたすら目標に向かってボールを打っていたのが、目標を決めないでただ打つ。ナイスショットを忘れてグッドヒットを心がける。人間の本能というか、勘のすごさだ。

負帰還はパワーを精度にすり替える回路である。パワーを増やすだけで精度が上がる、となればパワーを持て余しているゴルファーにとって夢のようではないか。ドライバーのような飛距離が物を言うときにはパワーそのものでいいが、コントロールが大切な場面ではそのパワーの何割かを精度に変えて使う。だから精度に歩留まりが来たとき、それを打破する手は二つある。

一つは負帰還をもっと多く掛けることだ。今まで15パーセントの負帰還を掛けていたならそれを20パーセントにする。その分飛距離は落ちるから七番アイアンの距離は六番で打たなければならないが、負帰還量が増えた分ショットの精度は上がる。ただし負帰還は20パーセントくらいまでが限界で、30パーセントの負帰還を掛けるにはそれ相応の技術が必要になってくる。電気屋の話だとそれは非常に難しいらしい。

今一つの手は単純にパワーをアップすることだ。上手なゴルファーは本能的にこれをやっている。のびのび打っていると、精度を上げる練習ばかりしている間に落ちてしまったアイアンの距離を取り戻し、さらにパワーアップできる。

パワーが上がったところで再び目標に向かって練習を始めると、あら不思議、前よりショットの精度が上がる。この場合パワーの総量をアップさせて相対的に負帰還量を増やしたということで、距離は落ちない。

負帰還型スイングとはこういう話である。上手なゴルファーの多くはすでにネガティヴフィードバックを実践している。彼らがこの理論の存在をはっきりと認識することは、知らずにやっているのに比べれば有意義に違いない しかし負帰還型スイングをしていないゴルファーにフィードバックを教える具体的な方策はまだない。

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