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200グラムの、普通の重さのドライヴァーヘッドに47インチのレディースシャフトを差した私のクラブを見て、「よく待ち切れますね」と言った人がある。柔らかいシャフトは大きくしなるので、シャフトがしなるということを考慮しないパワフルなゴルファーが打てば、インパクトでヘッドは戻ってこない。従ってヘッドがボールに当たったとしてもヘッドは開いているからスライスする。

 

そこで「待つ」という発想が生まれる。待つというのはいい作戦だけれども、パワー全開で打つとなると、非常な高等技術である。

ところで、砂浜から沖に向かって投げ釣り用の竿を全力で振っても、その竿先が砂浜にぶつかるわけではない。なぜだろうか。それならゴルフクラブを投げ釣りのように、沖に向かう代わりにボールに向けて全力で投げれば、シャフトはインパクトで止まったままになる、のならば話は簡単だ。ただそうなるとフォロースルーって何かしらという疑問が生まれる。

エサとオモリは竿から離れてはるか海の彼方へ飛んでいくが、クラブのヘッドはシャフトから離れない。当然その重りの動きにシャフトが引っ張られる。それがフォロースルーになる、のだろうか。実際ゴルフクラブで投げ釣りのまねをしても、ピタリとは止まらない。がしかし普通のゴルフスイングほど派手にフォローは出ない。とすれば、案外投げ釣り打法は可能かも知れない。

昔は焼き芋屋さんや八百屋さんでバネばかりという秤を見かけたが、このごろ見ない。スイングスピードを測るのにそれに似た道具があるが、同じように自転車の空気入れを逆さにして振れば中の棒が伸びる。その棒にバネを付けて筒の底に固定すればスイング練習機が出来上がる。

子供の頃携帯用の細い空気入れが自転車のフレームに付いていたが、捨てずに取っておけばよかった。見るからにスイング練習機だ。ただしインパクトのところでどれだけ伸びているかどうかが問題だから、それがわかるような工夫がないと役には立たない。

投げ釣り打法は確かに「待つ」スイングだが、結果的に待つに過ぎない。私はもっと簡単な方法で柔らかいシャフトに対処している。ヘッドはいずれ戻ってくるのだから、戻るまでに長い距離を走らせればいい。つまりバックスイングを必要なだけ深くする。適当なオーヴァースイングにすればヘッドは適当に戻ってくる。

しなったシャフトが元に戻るには時間がかかる。その時間をインパクトで待って作るのか、それともダウンスイングにかかる時間を多くするのか、そこが問題だが、パワーに意味のある場合は待っているよりオーヴァースイングがいいし、操作性が大事なら」「待つ」のがいい。そこでドライヴァーの場合にはバックスイングの量を増やす。

タイガーのようなゴルファーは、投げ釣り打法を研究したのではないかと思われる節がある。それに対してジョン・デイリーはバックスイングを深くした。タイガー・ウッズがいずれカーボンシャフトのドライヴァーを使う時が来たならば、バックスイングを少し深くするしか方法はないだろう。

しかしながら普通のゴルファーにとっては、身に余るような硬いシャフトはいくらでも手に入る。不必要に硬いシャフトが存在するわけだ。シャフトのしなりはパワーを蓄積する。ヘッドの重さのためにもうこれ以上速くは振れないゴルファーが、シャフトのしなりの中に徐々にパワーを貯めておけば、飛距離が出る。シャフトのしなりは言わば非力なゴルファーのお助けマンなのだから、使える限り使うのがいい。

そこでゴルファーは投げ釣り打法とインパクトを「待つ」ことの意味を考え、オーヴァースイングの価値をも見いだす。ミへル・アンヘル・ヒメネスさんもそうおっしゃるだろう。

青木功プロは、丸ちゃんを除けば日本人ゴルファーとして唯一世界のゴルファーに意見の出来るゴルファーだが、彼は典型的な投げ釣り打法である。ただし背が高いのにフラットなそのスイングは素人向きでない。金井清一プロはシニアになっても勝ち続けるプロだが、彼は小柄でアップライトなスイングをするから、素人が参考にするには最適な投げ釣り打法である。

彼のスイングをよく見ると、インパクトでちょっと変わった動きをするのがわかる。手を伸ばす。手が伸びたらダフるからその分体が後ろへ逃げる、ように見える。漁師が海から網を引き上げる時のような、そんな張りが体に現れる。つまり金井プロはクラブをボールに向かって投げたのである。

そのとき体がガクンと音を立てる、ような感じがする。無論体は動かないが、確かにガクンというショックがある。クラブをぶんぶん振り回すスイングには見られない特徴だ。フォロースルーも普通のスイングのように華麗ではない。投げたクラブが跳ね返ってくるので、仕方なくその重さにつられて体を動かす、ただそれだけのいたって素っ気ないフォロースルーである。

ジョニー・ミラーのような、あるいは普通のゴルファーがやろうとするような力のこもったフォロースルーとは全く違う。クラブをパワーで振り回そうとするスイングと投げ釣り打法では相当気分が違うのである。金井プロのスイングは投げ釣りである。しかも非常にわかりやすいから素人にとっては貴重な標本である。

あの体格で、そのスイングでどれだけ勝ってきたかを考えると、どんなタイプの素人ゴルファーにも一度はじっと眺めてみる価値のあるスイングと言わねばならない。力を使わずにぐっとこらえるその方法は、プロの世界では苦しいはずだ。それを通した金井プロに、乾杯。(越の山風)で。

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