« 0013 | トップページ | 0015 »

ゴルフもスイングを考えている程度ならかわいいものだが、クラブをいじり始めたら泥沼だという。しかしクラブをいじるにしても、ちょっと重りを付けたりライ角を変えたりする程度ならそこそこである。

クラブ自体の構造を変えて、もっといいのを作ろうとするところまで行ったにしても、まだまだ仏様の手の平に乗ったままだ。

ゴルファーが使えないゴルフクラブを作るようになると、仏様の背中をつつく。ゴルファーには使えないが素人には使い易いゴルフクラブ、妙な話だ。

一方でゴルファー並に普通の改造もするのだが、打ちやすいようにヘッドを軽くしていくと、理想のスイングにたどり着く。ボールの打てない理想のゴルフクラブ、これをゴルフのブラックホールと呼ぶ。

如何に正確にボールをヒットするか、それを突き詰めていくと、エネルギーの全てを内に向けて使うことになる。爆発はエネルギーを外に向ける。それでボールは飛ぶし、宇宙は拡大飛散していく。内に向けられたエネルギーは全てを中心へ引き込んでいく。ブラックホールは外に出ようとする光さえ引っ張り込んで、まるでそこに何も無いかのように暗闇にたたずむ。

ゴルフのブラックホールではボールは打てない、が、確かにそこに存在するのである。しかも最近の研究では、ブラックホールも実はほんのかすかな光芒を放っているらしい。私のかすかな飛距離がそれだ。

左手首のパワー不足で理想のスイングが出来ない。何度も手首を痛めては、しばらくクラブを握れなかった。それでヘッドを軽くしたのだが、私の理想が実現したとき、それは夢だとわかった。なぜならそのクラブはヘッドが軽過ぎて、もはやボールが飛ばない。

こういう馬鹿馬鹿しいことを何十年も続けてきた中には、もちろん重い方もある。ヘッドの重さが金槌になると腕は振れるが腰を痛めた。理想のスイングにたどり着いたと思ったときには、重たくて振れないクラブになっていた。やはり夢だった。これらはある意味でゴルフの本質を語っている。

実のところ、理想のスイングはすでに実現されている。ボールが飛ばないほど軽いヘッドでしか実現できない理想のスイングは、馬鹿力のゴルファーが普通の重さのクラブで実現しているし、振れないほど重いクラブでしか実現できない理想のスイングもやっぱり、体力のあるゴルファーが実現している。

この堂々巡りは、ゴルフがスポーツであることを示したに過ぎなかった。つまり理想のスイングそのものがパワーの関数だったということで、それはつまりスポーツである。しかも変数はたぶんベキ数だろうから、パワーがものをいう。

万が一真に理想のスイングがあるとしても、それは理想のパワーによってのみ実現されるだろう。これを普通のパワーしか持ち合わせていないゴルファーが実現するには積分するしかないのだろうかと悩んだ。

私の飛ばないスイングの原因はヘッドを回さないことによる。回転式ドアが風でばたんと閉まる音にビックリすることはあるが、引き戸では驚かない。つまづいて転んだときの勢いは、わざとやって作り出せる速度ではない。張り手と突き押しでは速度が桁違いだ。

私のスイングは突き押しだから飛ばない。相手がゴルフボールでなく、砲丸投げの球ならば突き押しが勝つだろうが、ゴルフボールはそれほど重くはない。

わかっていてもやめられないのは、私のスイングが収縮過程にあって、ブラックホールに近いところにいるからだ。一度完全に収縮させてしまって、超新星の爆発が起これば、ボールは劇的に飛ぶのだが、どうすれば収縮を早められるか、それがわからない。

正確なヒットを考える限り、ゴルファーすべてはブラックホールに向かう。それは止むを得ないことなのだが、ブラックホールではゴルフにならない。ぎりぎりそれを避けて、なおかつそこそこのスコアで上がれるポイント、中庸というものを見つけられるかどうか、それが凡人ゴルファーの勝敗を分かつ。

« 0013 | トップページ | 0015 »