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ゴルフ嫌いは知らないことだが、ゴルフクラブにはグースネックという形のものがある。ヘッドが右に少しばかり引っ込んでいるクラブをそう呼ぶ。グースネックの歴史は相当古いが、一般化したのは最近の話で、今では多くのゴルファーが使用している。

ヘッドが引っ込んでいるとどうなるかというと、ボールを打とうと思った瞬間に、まだヘッドが開いていて真っ直ぐになっていない初心者ゴルファー、つまりまっとうな人間に、かすかな猶予を与える。

歪んだ道具は人の自然感覚を乱し、元に戻ったと信じられるときにまだ戻ってこないように作られている。それでグースネックのアイアンは作られた。

グースネックはまだ正しいスイングが出来ない仮免状態のゴルファーが使う。もっとも元々歪んだクラブを使うのに正しいスイングというのも妙な話で、正しく言えば、まっとうな人間のままそこそこゴルフを楽しむための便利グッズというところだ。ゴルフの方向としては評価できる。

だから今の段階では一生グースネックのクラブで済ますのが、嫌でもゴルフをせざるを得ないまっとうなゴルファーに残された唯一の道かも知れない。上手なゴルファーのスイングは「正しい」のではなく、「うまい」のである。何しろ手品だから。

真の手品師であるところのプロゴルファーは、当然のことにグースネックを嫌わねばならない。グースネックを使うプロゴルファーはまだゴルフを知らないか、経済的事情で使っているに過ぎない。低い弾道のボールを打つためにグースネックを利用するのは、悪くはないが、意味もない。

グースネックの仕掛けは、目覚まし時計を5分進めておいて、毎朝ベルが鳴った次の瞬間「ほっ」として、何だか得をしたような気になるのと似ている。猫じゃあるまいし、自分で揺すった振り子に驚いて飛びかかるようではどうにもならない。プロは目覚ましが鳴る5分前にきっと目を覚ますので、そんなものはいらない。

グースネックが似合うスイングをするプロはごく限られている。一般にグースネックはスイングが後手に回る、という感じになるのでプロはむしろ逆グースネックの方がいい。このリヴァースグースという発想はまだ具体的になっていないが、理論的に考えると、上級者はいずれクラブヘッドが、というよりもブレードがわずかに左へ突き出ているリヴァースグースのアイアンを使うようになる。

ウッドは元々リバースグースだ。知らないプロもいるだろうが、クリークがドライヴィングアイアンより打ちやすい理由の一つ目は、インパクトにおける時差に関連して、アドレスが決まりやすいことだ。リヴァースグースのアイアンはアドレスが非常にはっきり見えるので、ぐずぐずせずにアドレスが決まる。

アイアンを構えて長いことぐずぐずしているプロも、フェアウェイウッドを持つと案外さっと打っていくのは、アマチュアのように「どうせそんなに正確には打てない」と思うからではない。アドレスが決まりやすいからだ。

リヴァースグースのアイアンはボールの弾道が高い。だからパワーに余裕のあるプロは、難しいコースで勝ちたいなら早いとこリヴァースグースのスワンネックに換えた方がいい。

ユーティリティーとかタラコと呼ばれるクラブは要するにグースネックのウッドだが、理屈を知らないプロがしばらく使って大抵やめる。余程特別なスイングをするプロでない限り、プロは普通のクラブで結構なのだ。そしてもっと結構なのがリヴァースグースのアイアンである。

ちなみにクリークが打ちやすいもう一つの理由はトルクが小さいことで、それでヘッドのキックが緩やかになる。ヘッドがアイアンのような板状でなく、ずんぐりとしたウッドの形になると、ヘッドの重心がぼんやりとしてきて、スウィートスポットもぼやっと広がりを見せるてくる。

アイアンではそんなことにはならない。トルクが大きいからだ。どちらも結局はリヴァースグースというネック構造から来る効用である。トルクを感じてヘッドの動きを知るタイプのゴルファーにはトルクがある方がいいが、やや時代遅れである。

パターはトルクの無いものが多くなったが、昔ながらのL字というかキャラミティ・ジェーン型を使うゴルファーの気分はよくわかる。パターを引くときもヘッドはわずかに開いて行くから大きなトルクが生じる。

L字パターはアイアンと同じ形なので最大のトルクを発生する。そのため握った手がトルクを感じる。しかしパターはわずかな動きしかしないので、トルクを感じてもそれに引っ張られてしまうようなことはない。パターではトルクをコントロールして打つ必要はなく、逆にトルクがスイングをコントロールして打たせてくれる。

つまりトルクが、ヘッドの向きを正しくセットするための情報源になっている。トルクを感じると、それを抑えようとしっかりグリップを支える。それによってヘッドを真っ直ぐ出せる。

それに対してゼブラなどトルクの無いパターは、トルクがないから情報はない。真っ直ぐ打つための情報や力加減の情報は体の中、特に目にあるだけだ。

個人的にはパターの方こそトルクがある方がいいと思う。実際パターの名手にはL字を使う人が多い。しかしアイアンとなると話は別だ。スイングの速度がトルクを劇的に増大させ、自由が利かなくなる。

慣れるまで大変だし、慣れたところで永久にそれをコントロールし続けなければホックしたりスライスしたり、微妙だ。情報はありがたいが、それに振り回されるのでは迷惑せんばん。

従ってトルクの少ないクラブを簡単に振って、余った神経を別のところに使った方がゴルフがやさしくなる。ベン・ホーガンはそれを知っていた。彼がデザインしたアイアンはそれまで誰も作ったことのないすばらしいアイアンだったが、素人目には普通だ。トルクの小さなアイアンは初心者にもプロにも朗報である。スワンネックはベン・ホーガンの夢だったのだ。

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