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私は今日新しいスイングを見つけた、と思った。いいスイングか悪いスイングか、それはまだわからないが、考えたこともない、変なスイングである、と思った。

このスイングは左の腕が伸び縮みする、ような気がした。きれいな円を描くのにコンパスの足が伸縮したら駄目だから、ゴルフスイングでは左の腕が伸び縮みしてはまずい。しかしこの新しいスイングはいろいろと都合がいい。

しばらく振っているうちに、どこかで見たことがあるような気がした。このスイングはチャールズ・ハウエルのスイングによく似ている。ついでにアーニー・エルスも同じタイプだと気付いた、と思った。

腕が縮むのではなく、スイングという円の中心点がシフトするのだ。スイングの軸がブレるとも言えるが、普通にブレると言う場合は、スイングが生み出す力学的な力を体が支え切れずに引っ張られたり、あるいは力んで無理な力を入れようとして体勢が崩れるという意味だ。

しかしこのスイングの場合は、ちょうどヨーヨーの速度を上げるために絶妙のリズムで手を上下させるような意味でのブレであり、ある規則に従って美しくブレるのである。ブランコを漕ぐとき、ブランコの二本のワイヤーは両手で握られた箇所で「く」の字に折れる。必ず折れる。実は、折れなければブランコは漕げない。

もしもブランコのワイヤーが決して曲がらない二本の棒で出来ていたとしたら、ブランコを漕ぐのはかなり大変な作業になるだろう。座っている場合は膝から先を上手にばたつかせなければならない。だからこそブランコの吊りヒモはワイヤーや鎖のようなしなやかに曲がるもので作られている。

私が最初に腕が縮むと思ったのは、ブランコのワイヤーが「く」の字になるのと同じ理屈で、つまり真っ直ぐの棒が「く」の字になれば棒の両端の距離は小さくなるということだった。

始めはどこが折れるのかわからず、感じとしてはヒジが折れるのかと思ったが、実際は手首が折れる。しかし普通のスイングとは逆に、逆「く」の字に折れる。熊手型だ。けれども普通のやり方ではそんなことは起こり得ない。ヘッドは重いからそれを回そうとすればシャフトは自然には「く」の字にしか折れない。

手首のパワーを使わずに、どこでどうやって逆「く」の字に折ることが出来るか。それは走っている汽車ぽっぽの煙を進行方向へなびかせることと同じで、不可能なことだろう。しかしなぜかそれが出来る。フェイスを開いているわけでもないのに高い弾道のボールが打てる世界のプロゴルファー達は、その方法を知っているのである。

翌朝そのスイングを再現しようとしていると、妙なことに気付いた。村上プロ、石井富士夫といっても知らないだろうが、バックスイングに入るときに、一瞬ヘッドが根を張っているかのようにその場に置き去りにされて、手首だけが右へシフトするように見えるスイングがある。

ハンマー投げの選手が、地面に置いたハンマーを動かし始めるときは、先に手だけがバックスイングを始める。ハンマーは動けない。それと同じような初期動作を、ゴルフスイングでやるようなものだ。

記憶が曖昧だが、府中の長谷川勝治というプロも、そういうスイングでプロのトーナメントを戦っていたと思う。このスタイルをもっと進めると、スタドラーに行き当たる。

パントマイムというか、マイケル・ジャクソンの化け物踊りというか、垂れ下がった腕をヒジのところでつまんで上に引っ張ると、文楽人形のような変な動きが見える。ちょうどハンガーに掛かって吊り下げられているセーターのヒジをつまんで上に持ち上げたような、そういう形が、ゴルフスイングに現れる。

これはブランコを大きく揺らす原理であると共に、一種の熊手型スイングでもある。私が新しいスイングだと思ったのは、逆「く」の字でボールを打つ、昔ながらの方法の一つに行き当たっただけだった。この種のスイングでは体がリフトアップしなければならない。

バックスイングからダウンスイングへ切り返すとき、体が一段上にシフトする。紙面上で、下から上へ向かってギザギザを書いていく。バックスイングの最中に斜め上へ、そしてトップからの折り返しでさらに斜め上へ、ギザギザにシフトアップする体。

実際に上がっているかどうかはわからないが、エルスのスイングは明らかにそんな感じを与える。しかしなぜ体をリフトアップして行かねばならないのか、それはまだわからないが、たぶん手に持った振り子の振動を大きくしたいときにするのと同じ動作だろうと思う。

ジャック・ニクラウスはやや熊手型のバックスイングを採る。しかしトップで手首を折り返すので熊手型には見えない。がしかし、その強靱な手首は実際には目に見えるほど折れていなかったのかも知れない。彼の余りに正確なショットを説明するために、熊手型を持ち出すことは不自然とも思えない。

関節が一つ無駄になる分飛距離が落ちる熊手型で、あれだけの飛距離を出すには相当の体力を要するだろうが、もしそれが出来たとすれば、ニクラウスのショットの正確さに謎もミステリーもなくなる。そうなると彼の天才は、ゴルフショットの天才という意味ではなくなる。彼は秀才だったのかも知れない。むしろ天才はパーマーの方だった。

ゴルフスイングには大分類がある。チャールズ・ハウエルを蒸留するとブルース・クランプトンに行き着くが、ブランコにかかわるスイングはすべてブルースへ収束し、これ以外の幾つかのスイングはシンプルな単振動かその亜流である。筆者

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