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グリーン上にボールがあるとする。カップまで5メートル。「何発で入るか」というのがゴルフだ、と思っているとスコアにはならない。「何発で入れようか」と考えるとスコアになる。「何発で入るか」は賭だが、「何発で入れるか」は計画である。計画は自分の能力と相談になるが、賭はただ神頼みだ。

普通50センチのパットは入ると思えるが、100センチ位になると意見が分かれる。パットがうまいゴルファーは入ると思えるが、普通のゴルファーが70センチのパットに100万円を賭けるかとなると、微妙だ。自分の安全圏はどれくらいだろうか。

たとえば自分の安全圏が20パーセントというのは、5メートルのパットに対してその20パーセントの大きさの円、つまり5メートル先の1メートルの円を狙えば必ず入る、という能力のことで、1メートル以内にボールが残れば次に進めるが失敗するとまた5メートルから打つルールだと考える。

安全圏5パーと豪語するゴルファーがいたとする。5パーセントとは5メートルの距離に対して25センチで、カップ周りに25センチの円を描き、それに確実に入ることだが、その円に入らなければ入るまでずっと5メートルを打ち続けなくてはならない。そんな賭けに出るゴルファーがいるだろうか。安全圏20パーセントを宣言してスリーパットが安全だろう。うまくすればツーパットだ。

そもそも「5メートルの距離から何回打てば入るか」と問われた場合、意味が二つあることに気付く。「二回で入る」と答えた人は、いわゆるツーパットを考えているわけだが、5メートルの距離を打ち続けて何度打てば入るかを考えるとなかなか「二回で入る」とは言えない。

この安全圏という考え方を使うとバクチは出来ない。安全圏20パーセントと決まった自分の実力からパット数は自動的に出てしまう。後は結果がいい方に転ぶかどうかでスコアが変わるが、ミスすれば同じところから2度打つことになるというルールだとバクチは出来なくなる。そうして実際5メートルをワンパット宣言するゴルファー達は常にバクチをしているわけで、上がってみればバクチは計画に勝てない。

家でパットの練習をすると、10回打って10回成功する距離は1メートル前後で、1メートル50くらいになると最後に緊張でビビってミスをする。しかしコースでは傾斜もあれば風もある。とても1メートルを安全圏とは思えない。つまり10パーセントの安全圏は至難の業だ。

パットだけでなく、ショットにもこのルールを適用するとどうなるか。360のミドルホールがある。ティーからどう打っていくか。グリーン上と同じように、フェアウェイに目印を作る。この場合、250飛ばせるゴルファーが、250先のフェアウェイに向かって打っていいわけではない。

落下地点のフェアウェイ幅が50なら、20パーセントの安全圏を宣言したゴルファーだけが打ってもいいことになる。もし距離に対して安全圏が3割必要なゴルファーはフェアウェイの幅が75以上ないと打ってはいけない。そのときはドライバーを軽く使って200打つとして、目印の直径は40になるが、安全圏が3割だと、200の60になる。そうなるとフェアウェイの幅が60以下では打てなくなる。安全圏というものは案外シビアだ。

クラブごとに自分のレヴェルを概算してみる。たとえば9番アイアンが必ずグリーンに乗るなら、グリーンの大きさを直径22メートルと考えれば9番で110飛ぶゴルファーは距離に対して2割ちょっとだから、9番については2割の安全圏を確保している。5番が155なら直径は約30でグリーンの大きさとまあ同じだとしても、いつも乗るとは限らないから2割の安全圏は5番では確保されていない。

スプーンなどは安全圏の概算さえ出せないゴルファーがいる。だからスプーンは使えない。ドライバーもスプーンも使えないで何がゴルフだと思うかも知れないが、バクチが計画に勝てない以上、使わない方がいいスコアになる。どうしても信じられなければ一度やってみればわかる。計画はバクチに負けない。

初心者がラウンドの前の日、練習場で納得がいくまで懸命にボールを打つと、そのラウンドは必ず惨憺たる惨めな結果になる。これはゴルフ界の常識である。なぜか。この努力がゴルフというゲームを最も大きく勘違いさせるからだ。

ゴルフの練習とはフルショットをすることではない。判断力を養うことだ。ラウンド前日の練習はその判断力を破滅的に悪くさせる。長い間全く練習しないでゴルフ場へ行くとボールに当たるかどうか心配だから無理をしない。そっと打つ。それでスコアは案外悪くないのが常識だ。

オーストラリアの田舎でゴルフをしていると、ティーでドライバーを持たないゴルファーが少なくない。たとえば5番アイアンを持っている。なぜと聞くと、「ウッドはどこに飛ぶかわからない。これなら何とか打てるから。」という返事が返ってくる。

たまには「ウッドが嫌いだ」と言うのさえいる。こういう返答は「正常な神経」によって発せられる。日本でゴルフをすると、誰もがドライバーを持ってスプリンクラーの如くボールをまき散らしている。これはゴルフとして正常と思えない。

どうしてゴルフをバクチにしたいのかというと、滅多にゴルフが出来ないせいだ。ママさんテニスでも試合に勝つには毎日5時間は練習する。それを5年やってようやくシングルである。だから週一ゴルファーがシングルになるには30年かかる。月一ゴルファーは150年ほどかかる。毎日練習しても15年かかる。

最近は週に何度もコースに出られる人が増えてきたが、そういう人のゴルフは極めて正常である。何もここぞとばかりシャカリキにならなくても、出来るゴルフでスコアを考える。出来ないことはコースではやらない。それは練習場で練習する。そういう正常なゴルファーが増えつつあるのは好ましいことだ。

全てのショットはパットの延長であり、フルショットはコロガシの延長にあるものだ。ドライバーで50とか100とかの距離を正確に打てるようになって、段々と距離を伸ばす。これは当たり前の話で、疑いの余地はない。

5番アイアンでも、初めに5メートル正確に打てるようになって、10メートルへ進む。50メートルを超える頃からスイングも大きくなって、フルショットの雰囲気が漂う。ティーでドライバーを持つのは本来うまい手であるべきで、一番遠くに打てるようになるのはたぶんドライバーだ。5番のフルショットよりもドライバーのハーフショットの方が安全に遠くへ飛ぶ。

ハンディ18のゴルファーにとって、145の池越えでドライバーは使いにくいが、池がなく、ガードバンカーもなければ6番のフルショットとドライバーのコロガシではほぼ同じスコアで上がるはずだ。スプーンなら6番よりいいだろう。4番のコントロールショットでもいい。より軽く打って届くクラブがより安全だと考えるのは自然だ。

私はすごい打ち下ろしのパー3約95メートルを、必ず7番で転がすゴルファーを知っている。右には池がある。グリーンの手前にはコブがあってグリーンをガードしている。いつも風が吹いている。低いところにあるせいかグリーンのまわりはいつもしっとり濡れている。一般のゴルファーはウェッジで打つ。ミスして手前に落ちる。風で右の池の縁に止まる。うまく行けば簡単にベタピンだが、なかなかうまくは行かない。

7番で転がすのはこのコースのオーナーである。自分で作ったから当然コースを知り尽くしていて、ここは7番でごろごろ転がすと、強過ぎても弱くてもコブに当たって跳ね上がって乗るのだ。転がせばほとんど自動的にグリーンオンするが、上から落とすとグリーンに落ちない限りボールは柔らかいフェアウェイにめり込む。私は自信があるのでウェッジを使うが、グリーンを外すともめる。7番アイアンのコロガシでミスをしても、ボールは芝の上に乗っているから次が楽だ。

ゴルフは競馬ではない。ある時どうして競馬がこんなに当たらないのかと考えた。馬を見ていないからだ。競馬担当記者は見ているが、それでも百発百中とは行かない。馬にインタビューしていないからだ。天皇賞の出走馬にレースの予想をしてもらえば、彼等は若い頃から必ず一度は戦っている相手ばかりだから、誰が勝つか大方の予想は出来る。予想紙よりはるかに当たるはずだ。

ゴルフは自分でするのだから本来予想とかけ離れるわけがないのだが、ゴルフ場でゴルファーは夢を見る。3連複を当てる夢を見る。3連単を狙っていると思えるゴルファーさえいるのだ。それはいい悪いではない。ただゴルフはバクチではない。バクチよりはるかに楽しいスポーツである。筆者

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