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ティーショットだけが飛距離である。当たり前の話だが、セカンドショットも飛距離だと誤解しているゴルファーにとっては当たり前の話でない。ゴルファーはセカンドショットの距離を「残り何ヤード」と表現する。残りの距離が少ない方が楽だ。なぜか?「距離が短いから」が正解で、「何番で打てるから」という答えは不正解である。

同じ距離を残して、自分が3番でなければ届かないから3番を使う時に、相手が6番を使うとする。その時ゴルファーは、6番で打てるゴルファーの方が有利だと錯覚する。距離が同じなら何番で打とうが難しさも同じだということを信じない。

軽く打てるのがいいなら3番アイアンをやめてスプーンで打てばいい。相手の6番より遥かに軽く打てる。どうしても6番の弾道の高さが必要な場合を除けば、低いボールの方が有利に決まっている。風の影響がないし、ラフに落ちても高いところから落ちるボールほど沈まない。

しかしティーショットは飛距離である。セカンドショットを楽にするためには1メートルでも先へ飛ばした方が有利だ。そのためにはコントロールに重点を置いたスイングとは別に、ティーショット専用の、飛ばすスイングがあると便利だ。

距離を伸ばすにはケプラーの法則に従うわけだが、それでも足りないときにはちょっとした小細工を使う。たとえばムチを使うときに、ムチの先が跳ねる直前でちょっとムチを引くと、先のスピードが増す。

ヨーヨーで遊ぶときも、ヨーヨーが一番下に伸び切る直前で、手を素早く上に動かして引っ張るだろう。

子供の頃ブランコを漕ぐとき、段々大きくスイングさせるために何をしたか。ただブランコに乗って手足をばたばたさせても揺れは大きくならない。ブランコは実に不思議な、力学と本能を結びつける大傑作な遊び道具ではなかったか。

子供の遊びがテレビゲームになって、ブランコで遊ばない子供も出てくるだろうが、それは世の中が豊かになった分、子供の世界が貧しくなったのである。

タイガーのスイングは一度沈んだ頭が伸び上がってくる。上下にスウェイするのでいいスイングとは言えないのだが、タイガーに文句を言える理論はあっても言う人がいないから、当然理論の方が黙っている。

実際には「飛ばすだけ」を考える理論がゴルフにないだけで、タイガーは正しい。これをスウェイ打法と呼ぶが、これは飛距離も増すが理論的には正確さも増すだろう。

攻撃と守りを別々のプレイヤーに受け持たせれば一人より強い、アメリカンフットボールのように。ゴルフは一人でやるものだが、ショットとパットが別物であるように、ティーショットとそれ以外のショットを別物と考えて差し支えはない。

上下にスウェイする方式にも、タイガーのように下がって上がるタイプと、エルスのように上がってまた上がるタイプがある。エルスはバックスイングで上がり、ダウンスイングでさらに上がる。古典的には村上隆風のスイングだ。

原理はヨーヨーで、可能な限り大きなスイングを生み出すためには、ヨーヨーが最下点に達する直前に引くばかりでなく、ヨーヨーが下がっていくときに自分の手も下げていって、地面にヨーヨーが当たらない限界まで下げれば、引っ張り上げるとき沢山動かせる。

さらに細かく言えば、ダウンスイング中に沈み込みと引き上げの両方をこなすタイプと、バックスイングで沈み込み、ダウンスイングで引っ張り上げるタイプがある。タイガーは前者に属するが、足腰が強くないと体をこわす。

後者のタイプは日常的によく見かけるタイプだ。この世に飛ばすレッスンはない。正確さのための全ての努力が飛距離を落とす。ゴルフレッスンの全ては正確なショットのためにある。従って飛ばすレッスンはない。

ケプラーの法則は偉大な定理だから飛ばす秘訣として唯一教えることが許されるが、上下にスウェイして打つのはタブーとなる。イングランドのポール・ケイシーはエルスのような大柄なゴルファーではない。

彼のスイングはタイガーよりもはるかにゆっくりしているが、飛距離は半端でない。こういうゴルファーは飛ばす秘訣のどれかを必ずを使っている。

彼が使っているのは野球のバッティングだ。プロ野球選手は一般のゴルファーよりはるかに飛ぶが、特にホームランバッターのゴルフボールは非常に飛ぶ。ダスティン・ジョンソンも同じだ。

今は知らないが、昔神宮第2球場がゴルフ練習場だった頃、私はそこで恐ろしくうまく飛ばすゴルファーを見たことがある。決して大柄ではない左利きのゴルファーだったが、実にパワフルに手首を自在に操る。

野球のバッティングと同じ握りで同じように手首を使えば誰でもボールは飛ぶ。ティーショットでたぶん40ヤードは余計に飛ぶ。ところがなかなかボールに当たらない。

ゴルフのグリップが今の形になったのはそのせいなのだから当たり前と言えば当たり前だが、考えようによっては、ティーからどうしても飛ばしたければ、バッティングスタイルが一番効果的だ。ただしうまくボールに当てるのは簡単でない。

普通のゴルファーはバッティングスタイルでやりたいところを無理に我慢してか、あるいは当たらないから断念して今のスイングを作り上げた。だから上手なゴルファーになればなるほどバッティングの要素が少なくなり、逆に10年もやって80が切れないゴルファーはバッティングスイングの要素が多い。

軽く打っているように見えて飛ぶゴルファーの多くは、ジョン・デイリーも宮本プロも、バッティングスイングだからだ。私は野球に詳しくないが、神宮で見た左利きのゴルファーはたぶん昔々巨人軍にいた荒川さんという人だったらしい。王選手の先生だからボールを飛ばす秘訣を知っているのは当然だ。

飛距離のためには手首の追い越しが効果的だが、それにはファジー・ゼラーや青木功プロのスイングを見る。

手首の追い越しを使うときはヘッドを開いて引かねばならない。アイアンのショットは正確さが第一なのでヘッドは出来ればシャットに引きたい。デイヴィス・ラブが言うようにバックスイングでシャフトが右に水平になったとき、フェイスが縦になっているのは飛距離のためにはまだ足りない。

ラブが言った位置で、どれだけフェイスを開けるかが飛距離を決定する。やってみればわかるが、これは真面目なゴルファーにとって清水(きよみず)の舞台から飛び降りるほど恐ろしい話である。

ラブはフェイス面が壁のように地面から垂直に立つと言ったが、それはコントロールも考慮した妥協点であって、飛ばすだけなら限りなく開けばいい。

そしてダウンスイングで思い切りクラブを引っ張ると、ヘッドが返ってくるのがわかる。すかさず右手で打つ。シャフトが円運動で風車のように回る。ただそれだけで間に合わないゴルファーは、シャフトを電気ドリルのようにねじり回しながら打てば、ボールははじかれる力も加わって飛ぶのである。

振動ドリルというのがあって、普通のドリルでは穴を開けにくい硬いものに穴開けするときに使う。これはドリルがただ回るだけでなく、キツツキのように突っつきながらドリルが回る。考えた奴は実に賢い。

いずれにせよねじれを使い、右手を使うとゴルフは格段に難しくなり、しかも汗が出て、ゴルフがスポーツになってしまう。

右手を使わなければゴルフはやさしいし、ビリヤード程度のゲームなのだが、右手を使うと途端に体力勝負だ。これはゴルフ本来の形ではないと思うが、飛距離だけを考えたら右手を使うことになって、そうしたらゴルフがスポーツになった、というのはストーリーとしては悪くない。

上下のスウェイに手首の追い越し、さらにバッティングスイング、それらが飛ばしの秘訣だ。細かく言うと左右のスウェイもある。それらの基本にはケプラーがいるのだが、彼の定理だけがスイングの正確さに悪い影響を与えない。

セルヒオ・ガルシアはケプラーだけで済ませている。左手の甲の動きがそれを物語る。古典派なのだ。彼がスランプに落ちることがあるなら、それは私と同じシャンクだろう。

ケプラー以外のどんな飛ばしの秘訣もスイングを危うくする。練習量がないとボールに当たらない。コントロールが出来ない。それでも飛ばすためには欠かせない。くれぐれも振動ドリルは精密穴あけには使わないように。

最後に一つ、正確なスイングのためのグリップのコツは広く握ることである。従って飛ばすためのグリップのコツはそれをやめることである。

左手の平に溝があるだろう。手首から中指に伸びる溝が。そこへシャフトを真っ直ぐ入れることはグリップの極意である。正確なスイングはそこから生まれると言っても過言ではない。飛ばしたいときはそれを捨てる。鉄棒をつかむような、くだらないグリップが、飛距離を増す。

飛距離を出す方法は、つまりは正確に打つ技術の一つ一つを捨てていくことである。その中で最大の効果を持っているのは、思い切り打つことである。思い切り打つという話は飛距離の話には必ず出てくる。しかしその思い切りも実は腹八分目なのだ。どこまで行ってもこの話は終わらないことになっている。

まともにゴルフをする限り、ゴルファーはゴルフに本当の思い切りが存在し得ないことに気付かねばならない。それが存在するのは、ドライヴィングコンテストと呼ばれるゲームと、108を切れない人々がやっているゴルフもどきのゲームと、70を打たないプロゴルファーのやっているスーパーゴルフの世界だけである。

飛距離を増すための全ての努力はボールの行き先を危うくする。それがゴルフだ。そして飛距離を増すための唯一の練習方法は素振りである。素振りの数だけ飛距離は伸びる。嘘ではない。理論は素振りを楽しく沢山するための調味料である。調味料だけ喰う奴はアホだ。

ボールを打つ回数ではない。素振りでなければいけない。とにかく速く振ろうと素振りを繰り返し、疲れ果てるまで毎日何時間でも素振りをする。半年後、飛距離は約30パーセント伸びる。それまで体がもつかどうか、勝負はそこだ。ゴルフはこの点でスポーツである。

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