« 0606  | トップページ | 0016 パットの名手 »

アイアンヘッドの付け根がアヒルの首のように曲がって、クラブフェイスがシャフトの先よりも右へ引っ込んだ形のアイアンをグースネックと呼んでいる。上手にとっては打ちにくいが初心者にはとても打ちやすい。また相当の腕前のゴルファーでも、フェアウェイの芝生の種類によっては軽いグースネックの方がいいときがあるそうだ。

グースネックの曲げ方向を変えて、ヘッドがシャフトの先より自分の体の方にぐいっと寄っているものをスワンネックと呼ぶ。通称マドロスパイプというパイプの形に似ている。ピンやアクシュネットのパターがアイアンになったようなものだ。

これだとシャフトの先はヘッドのかかとに挿さらず、もっとヘッドの中央に近いところへ差し込んだ形になる。アイアンの歴史から見れば別に目新しいものではないが、スワンネックはグースネックより革命的に上品である。

この手のアイアンはトルクが少ないから誰が打っても曲がりにくい。スライスしないのはもちろん、ホックも避けられる。幾らか飛距離が落ちるので作られることは滅多にないが、正確に打てるから現代のパターはほとんどスワンネックと同じ構造になっている。

初心者が練習無しでそこそこゴルフを楽しむにはスワンネックが必要だ。特別非力な女性や背が高くて痩せている男性はいきなりホックに悩むが、スワンネックならそんなことはないし、絶対にスライスしない。

古典的ゴルフクラブの歪みはクラブの重さと過大なトルクによるところが大きいが、スワンネックを使うと初心者でもボールは真っ直ぐ飛ぶ。少なくとも飛んだボールに納得がいくように飛ぶ。たとえ幾らかホックしてもスライスしても、なるほどと思える。

スワンネックを使うゴルファーに「教え魔」の出る幕は全くない。元々ゴルフは道具に錯覚が仕掛けられているから、まともな神経では真っ直ぐ飛ばない。手品の種を知っているかどうかの話だけだ。

しかし誰もそうだとは教えてくれない。強いドローボールを打つゴルファーは自分が上手だと勘違いしていて、ビョーキになっただけだということに気付かない。だから初心者に「スライスが自然でホックは手品と同じなんだ」と言ってあげるだけの器量がない。

大体「教え魔」のレベルというものは、ゲームの攻略本を手に入れて、それをさも自分が見つけた戦略のように自慢するガキと同じ程度だから、たかが知れている。

今のクラブがなぜ今の形になったかを真に知り尽くしている人は、百歩譲って「クラブが悪い」とは言わないだろう。ただ自動車教習所でフェラーリF-40を教習車にするのが正しいかと問いかけるのである。エンストさせずに教習コースを一周出来るとは思えない。(オートマチックだったりして)

スワンネックのウッドは簡単に作れる。それを愛用していた女の子がいた。練習もしないし年に何回しかコースにも出ないが、スワンネックは錯覚のないプレーが保証されるからゴルフは楽しい。

ゴルフが温泉ピンポンと同じレヴェルで普通に楽しめるスポーツに変身する奇跡の瞬間と言えるだろう。下手でも楽しめるのはそれが自然だからだ。100キロのバーベルを持ち上げられるまで、ずっと100キロのバーベルを抱いていてもつまらない。20キロから始めて少しずつ重いものを持ち上げられるようになるところが楽しいのだ。

普通のゴルフクラブが100キロのバーベルならば、スワンネックは20キロのバーベルである。まず持ち上がらなければつまらない。「まっとう」な人間が「まっとう」に打って「まっとう」に飛ばないクラブは「まっとう」ではない。

私はブローニンが初めて作ったアイアンを見たときの感動を忘れていない。それ以来ブローニンをまねた打ちやすいアイアンやウッドがたくさん出たが、もう一歩核心に迫るものがなかった。

ブローニンは画期的だったが、トルクの問題全てを解決する事は出来なかった。クリーブランドもゴルフ社会の哲学を根こそぎ変える勇気はなかった。しかしスワンネックはゴルフ社会の哲学を変えるだろう。

クラブ屋の努力で飛距離は思いのままだから、もはや歪んだややこしいクラブは必要ない。そもそもクラブが歪んだ最大の理由は飛距離だ。ボールにディンプルというでこぼこがついたのも飛距離のためだが、クラブにも目には見えないでこぼこが取り付けられた。だからクラブは歪んでいる。ゴルフはでこぼこだらけなのだ。

いい悪いを別にすれば、最近ようやくゴルフ全体がでこぼこでなくなって来ている。と言うわけでゴルフの趨勢からしてもでこぼこでない、形はでこぼこだけれど、スワンネックが生まれる背景は出来上がった。これでゴルフの教え魔は絶滅し、ゴルフが楽しい海水浴になる日も近い。ゴルフ場のランチも一層おいしく食べられるだろう。

スワンネックの試作品を持ってゴルフ場に出かけた子供が、「修理したんですか?」とキャディーに聞かれて、「いえそういう風に作ってあるんです」と答えたらしい。それを聞いたキャディーは、しげしげと妙なクラブを眺めて曰く「理にかなっている」と言ったそうだ。

毎日毎日お客の打つ怒スライスボールを探すために、フェアウェイ右側の林の中を歩き尽くしているキャディーにとってみれば、ゴルフクラブに詳しくなくても、このクラブなら右の林や崖下を走り回る重労働から解放されるということがわかるのだろう。

もう一人の初心者はスワンネッククラブを持ってゴルフレッスンに通ってしまった。教える方は初め大変面白がったらしいが、そのうちにとうとうこう言ったそうだ。「そのクラブは練習しなくても真っ直ぐ飛ぶんですが、それではレッスンのしようがないので、普通のクラブを使ってもらえませんか」と。

2008補

スワンネックはセントアンズのルールに抵触する。シャフトの中心軸がアイアンのかかとから7.5ミリ以上センターへ寄ってはいけないらしい。私のスワンネックは穏やかにちょうど7ミリ前後になっていたのでその点は問題なかったが、ネックを2段連結したので審査は通らなかった。

今ちょうど滑らかに湾曲したのを作っているのでそのうちに審査は通るだろう。しかし私のスワンネックは上級者用で、一番使うべき初心者用はかなりセンター寄りにシャフトを差さなければ意味がない。競技やプロになるつもりがないゴルファーはルールなど気にせず遊びとして使えばいい。あるいはゴルフとは別のスポーツと考えればいい。

日本人は社会の当たり前のルールは当たり前に破るのに、こういうルールになると妙にまじめなのは世界の七不思議の一つだ。こっちこそ本当の「遊び」なのに。

私がスワンネックを作り始めて10数年目に所ジョージさんも作ろうとしたらしいが、彼とその仲間たちはルールに抵触するのに気づいたらしくすぐやめた。やめなくてもいいのに。セントアンズが駄目と言ってもそれは公式競技での使用に限っての話だ。人々がゴルフ場で楽しむことをセントアンズは決して悪いこととは考えていない。

« 0606  | トップページ | 0016 パットの名手 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 0606  | トップページ | 0016 パットの名手 »