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ゴルフのスコアがパットで決まるというのは上手なゴルファーの口癖だが、それは正しいとも正しくないとも言える。しかし実際自分のショットに熱中しているレヴェルのゴルファーが、「ゴルフはパットである」と言うゴルファーに勝負を挑むのは無謀である。

ゴルファーは「ゴルフはパットだ」という言葉はそれなりにわかっているつもりでいるが、「パットがゴルフだ」と言われると納得がいかない。ドライバーやアイアンショットの方がゴルフのメインイヴェントだと思っている。しかし考えようによってはパットはいつでもホールの最後のショットだからメインイヴェンターで、ドライバーは前座ということになる。

これは案外冗談でもなくて、勝敗が決するのはいつも最後の方になるわけで、最初の方のショットの記憶は薄れ、この最後のパットさえ入れば、と思うとそこまでのショットの価値などほとんど無に等しく感じられる。ゴルフはパットだと言われるのにはそういう事情もある。

一般にゴルフはショットとパットという、性質の異なる二つのゲームで成り立っている。無論オリンピックの十種競技も、トライアスロンもやはり幾つかのゲームの総合力で争われるが、陸上は陸上だし、長距離を泳いで走って自転車を漕いでも、体力的には似たようなものだろう。だからトライアスロンは体力に自信のある者がやるし、十種競技は元々陸上の何らかの種目の選手だった人がする。ところがその点ゴルフは実に風変わりだ。

建設現場にユンボという機械がある。ブルドーザは下からシャクるがユンボは恐竜の首のような形をしていて上からガサッと掘る。日立がそれのごく小さいのを作った。通称「地球の耳かき」という。ゴルフは地球の耳かきと本物の耳かきの両方を使って古代の遺跡を発掘する。

遺跡の眠るそばまではユンボで一気に掘れるが、そこから先は遺跡を壊さないために耳かきで慎重に掘らなければならない。最初の10メートルをたった2日で掘れたとしても、そこから先は1メートル進むのに3ヶ月かかる。それがゴルフだ。

まともなショットが出来るまでにゴルファーは何年も努力しなければならない。ところがパットは初めからうまい奴がいる。練習とは無関係だ。パットは耳かきである。耳かきが好きでゴルフを始めたのではない。そこでゴルファーは耳かきを使う時間を何とか減らそうと、ユンボで掘れる限界を正確につかもうとする。

遺跡まで6メートルだったとすると、慎重に最初から耳かきで掘ると1年半かかる。もし遺跡まであと1メートルのところまで正確にわかれば、最初の5メートルはユンボで掘れる。あとは3ヶ月耳かきをすれば遺跡が発掘できる。トータルで3ヶ月と一日だ。

ショットの練習は運動である。夏場などは汗びっしょりで体力ぎりぎりまでボールを打つこともある。スポーツをしている満足感がそこにはある。それに比べてパットの練習は退屈だ。ゴルフをスポーツと考えればパットは余計なものだろう。

ベンホーガンはそう思った。彼は耳かきを使いたくないばかりに必死でショットの練習をし、ボールをピンそばに落とした。そうすれば耳かきはちょっと使うだけだ。

冬のオリンピックにバイアスロンという競技がある。肩にライフルを掛け、スキーで歩いては的を打ち、また歩く。スキーで速く歩くノルディックと射撃の腕はほとんど無関係だ。パットが好きだからゴルフを始めるわけではない。ショットが楽しいからゴルフを始めるのだろう。

しかしゴルフは生まれながらの2種競技である。どうしてもパットが付いてくることに多くのゴルファーは後から気付く。そのときゴルファーの明暗が分かれる。ラグビーのゴール寸前で突然笛が鳴り、審判から「なぞなぞ」が出題されたら、どうだろうか。「何それ?」という気分だろう。無論それに正解しないとゴールにならないわけだ。

パットの苦手なゴルファーにとってパットはその「なぞなぞ」に近いものがある。そんなものが何でゴルフなんだと言いたくなる。しかしパットは確かにストロークだし、他に手があるようにも見えないから仕方ないのだ。グリーンの代わりに直径20メートルの大きな穴が開いていたら、それこそ妙だ。

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