« 0126 精神力だけで簡単に80を切る方法 | トップページ | 0128 アイアンマットの大罪2(骨の長さは変わらない) »

何年ぶりかで練習場へ出かけた。思うところがあってアイアンのライ角を大きく変えたのだが、それで何が起こるかという謎をイメージだけでは解決できなかったので、悪い腰と座骨神経痛を押して、出かけた。ネットまで10メートルもない、40年前の明光ゴルフの練習場に似た小さな練習場を見つけておいた。

誰もいないひっそりとした小さな練習場は、考え事をするのにはうってつけだったが、なぜか私はお客を呼ぶ体質で、5分とたたない内にどやどやと沢山の人が入ってきた。初めてゴルフクラブを持つ若い初心者が、ボールを打ち始めた。当然ボールには当たらないが、とても楽しそうだ。

そのうちに所属のコーチが教え始めた。プロかどうかは知らない。若い人はみな元気がある。スイングはボールの上をかすめ、風圧で前方に転がる。背中でコーチの声が聞こえた。「軽く膝を曲げて、そのままの姿勢で打ちなさい」と。伸び上がるとボールに当たりませんから、と。私は見ていないが、よくわかる。

そのうちに私のところへやってきて、「いいスイングですが、もう少しコックを使えばもっといいスイングになります」と言った。私はその時、ロフト10度のアイアンでボールを打っていた。打球はハエが止まりそうな勢いで飛んでいた。たぶんそれを心配してくれたのだろう。しかし私はそのボールが10メートル先のネットの50センチの高さに、正確に真っ直ぐ当たっているのを知っていたので、それで十分だった。

その練習場は、アイアンマットの真ん中にボールを置かねばならない。以前練習場に通っていた頃は、マットの先端にボールを置いて打っていたが、そこではそういうスタンスが取れないようになっていた。したがって、私のクラブヘッドは人工芝の下のゴムに突き刺さる。だからボールが飛ぶはずがない。

マットの上のボールを上手に打つには特別な方法が必要で、それが日本人ゴルファーのゴルフスイングをある決まった範囲内のスイングに制限する。つまりほうき型スイングならば、たとえダフッても毛筆の毛先と同じだから字は太くなるが紙の上を滑っていく。

 
つまり掃くような打ち方だけが、アイアンマットの上では正解になる。鎌のように逆L字のスイングイメージは成り立たないのだ。しかしコースに出るとクラブヘッドは滑ってくれない。ダフリは立派にダフリになってボールは飛ばない。

 
人工芝が作られるようになって50年近いだろう。呉羽化学の試作品のような人工芝のコートでテニスをさせてもらったのは40年ほど前のことだ。しかしテニスのプロトーナメントでは人工芝はなかなか使われなかった。人工芝の下はコンクリートである。

ゴルフボールをフェアウェイにたたきつけても大して跳ね返らないだろうが、人工芝ではコンクリート並に跳ね返る。軽く動いているときはクッションが効いていて柔らかく感じるが、ある限度を超えた力が掛かると、コンクリートになる。子供がビルの4階から落ちてもケガ一つしないということはあるが、それは地面が土だからで、人工芝では駄目だ。

アイアンマットは芝とは違う。そのアイアンマットで決定的な被害を受けているのが日本の女性ゴルファーである。ゴルフを始めて2年3年のレディースゴルファーはフェアウェイでまともにボールを打てない。

理由の一つはアイアンマット専用の打法を教えるプロが、アイアンマットにダフリは発生しないという衝撃の事実を隠すからである。パワーのある男性がマットの上でダフると大きな音がするが、女性の柔らかな手首は、マットにぶつかったヘッドをすっと滑らせるのにちょうど都合がいい。

だからコースでダフる。トップなら真っ直ぐ飛ぶし距離は稼げるが、ダフリは何もしないで打数が増える。タクシーに乗って渋滞に巻き込まれたのと似ている。車は一歩も動かないのにメーターだけがカチャカチャ動いて加算していく。非力な女性にダフリは致命傷である。

アイアンマット最大の罪は、女性ゴルファーに幻想のナイスショットを見せることだろう。オーストラリアの小さなゴルフ場に、アイアンマットを知らない世界の、50,60歳のおばちゃんゴルファーがわいわいと沢山やってくるのは火曜日であるが、彼女たちのゴルフは日本女性とは全く違う。

マットがないのだからコースでしかボールを打てない。週に何度もコースに出るからうまいというのは確かにあるだろうが、それはある程度のスイングが出来るゴルファーには事実だが、彼女たちのスイングを見ていると、どうもそうでもない。もっと違うことがあるのだ。

当然のことだが、彼女たちにはアイアンマットの助けを借りたナイスショットの記憶がない。だから気合いを入れて打っているように見えない。ただ単にボールを前に運ぼうという打ち方をしている。決して簡単に打っているわけでもないだろうが、実力通りに打っているように見える。ダフリやトップする姿は見ない。

これに対して日本のおばちゃんたちは、アイアンマットが自動的にヘッドを走らせ、まるでレールの上に乗せられたようなヘッドが作り出す見事なナイスショットを、フェアウェイでも打とうとする。打てるはずがない。だからそれでミスをする。そうするといよいよ打とうとする。いよいよミスがひどくなる。この繰り返しだ。

全てはありもしない幻想のナイスショットを信じてしまうからだ。これを防ぐ一番いい手はマットを使わないことだ。練習場ではアイアンをティーアップして打つ。ティーアップしたボールを打つのは簡単ではない。サンドウェッジを、3センチティーアップして打つのとマットの上で打つのとどちらがいいかとプロに尋ねれば、答えはわかり切っている。

ティーアップの高さは、ヘッドがバウンドしたり滑ってもヘッドに当たらない高さにする。5番アイアンを正面から見れば、その厚みは4,5センチだろうから、かなり高いティーを使えば間違いない。これだとダフればヘッドはボールの下を抜けてしまうし、トップはトップになる。

フェアウェイウッドは元々滑るように作ってあるが、それでも高いティーアップにして練習すると、案外当たらないことに気付く。アイアンマットを使う目安は100を切るレヴェルになったあたりだろう。120もたたくうちは、高いティーアップの方が断然練習になる。決してアイアンマットを使ってはいけない。

そういえば、金井精一プロは、珍しい練習場出身のプロとして有名だが、私は金井プロのガッツとスイングが好きで、何度かそのスイングについても書いた。若い頃はアイアンマット育ちのシンプルで美しいスイングに見えたが、シニアに入って段々そのスイングが手品師のスイングのような、見事にボールだけをすくい取るスイングに見えるようになった。

彼がするのだから、それはアイアンマットスイングの究極の形なのだと思う。それはティーアップのボールを打つのに近い。

 
練習場のコーチはアイアンマットの上のスイングしか知らない。あるいは麻痺してしまってわからなくなる、という危険に気付かねばならない。ずいぶん昔から、私はアイアンマットが日本人ゴルファーのスイングを井の中の蛙にしている事実に憤(いきどお)りを感じていた。けれどもうまいアイデアはどうしても浮かばなかった。

上手なゴルファーの中にはアイアンマットを使わず、常にティーアップしたボールを打つゴルファーもいる。それは初心者がするのとは次元の違う理由によっている。しかしそれはそれでプロ並みの技術を要する。

アイアンマットの問題がこれだけ深刻だとわかれば、誰か才能ある専門家がもっといいアイアンマットを考え出すだろうと、これを書いた。筆者

« 0126 精神力だけで簡単に80を切る方法 | トップページ | 0128 アイアンマットの大罪2(骨の長さは変わらない) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 0126 精神力だけで簡単に80を切る方法 | トップページ | 0128 アイアンマットの大罪2(骨の長さは変わらない) »