« 0144 ジガーという道具 | トップページ | 0146 ハンドファーストのワナ »

野球のバットにはフェイスがない。ハイレヴェルになれば、バットのどの部分でボールを打つかくらいはちょっとおもしろそうだからやってみるだろうが、それにしても、ボールを打ち出す方向を決めるのはバットの向き、スイングの位相である。(ゴロかフライかはこの限りでない)

ゴルフクラブにフェイスがなければゴルフはもっと難しいが、スイングは幾らかわかりやすく素直になる。ヘッドの代わりにボール状の物体を付けたクラブを作ってスイングすると、不思議な体験が出来る。

最初に感じるのはグリップの尾根の存在だ。ゴルファーの中にはグリップが先細りの円筒、つまり円錐形だと思っている人もいるが、実際にはグリップエンドから先まで一本の尾根がある場合が多い。

パターグリップほどではないが、その尾根によってフェイスの向きがわかりやすくなっている。フェイスがボール状の物体に代わって方向がなくなると、その尾根が邪魔な感じになる。逆から見れば、それほどゴルファーはフェイスの方向に神経質だったということである。

次に、スクエアなスイングがしやすくなる。ヘッドの回転トルクがなくなると、アウトサイドインのスイングをしなくても済む。ヘッドそのもののトルクは、自然に振ろうと思えば誰でもスクエアに振れるはずのスイングを邪魔する。

この微妙なトルク分と、もう一つの、スイング全体のトルク分とを力ずくで相殺しようとして、本能的にスイングはアウトサイドインになる。

これは自動的に起こるので、ゴルファー自身が気付かないから始末に負えない。多くの初心者ゴルファーがアウトサイドインに振ってしまう原因のほとんどはこの二通りのトルクのいたずらだ。

ヘッドの代わりにボール状の物体の真ん中をシャフトが貫通している形式のクラブ、と言うか棒では、ヘッド自体のトルクはないから、あまり力を入れないで振れば自然にスクエアスイングになる。スクエアに振れない人がこのクラブを使うと自分のスイングが変だったことにすぐ気付く。

またすでにスクエアに振っている人がこのクラブを振ると、普通のクラブをスクエアに振るために結構がんばっていた自分に気付いて感動する。上級ゴルファーのみなさん、これはやってみる価値があります。(これによってトルクのいたずらがすごくよくわかるので、スイングを進化させられるでしょう。)

「ゴルファーに愛を!」には「全ての道はトルクに通ず」というタイトルがある。何が書かれているかもう忘れたけれど、たぶん同じことが書かれているだろう。どんなスイングでも構わないが、スクエアに振るのが一番簡単であり、ゴルフもしやすいのに、ヘッドのトルクのお陰でそれが出来ないで迷い道に落ちる。

たとえば子供がゴルフを始めるならば、最初はヘッドの代わりにボールの付いたトルクレスなクラブを振って、自然なスイングから始めさせてやりたいと思う。ヘッド自体の回転トルク分がないから自然にスクエアに振れる。

そしてスイングのもう一つのトルク問題だけが残る。先の重いものを振り回すとき、スイングの位相がずれる。インパクトの位置でそのスイングの最高速度が出ない。

方向を無視してさえ、スイングにはこれら二つの、克服しなければならないトルクの問題がある。ヘッド自体のトルクが生み出す歪みと、クラブ全体のトルクが作る歪みの両方が重なり合って、スイングは解析不能なほどややこしくなっている。

この二つを切り離せれば、スイングを作る作業は格段に易しくなる。ゴルファーにアウトサイドインという迷路を約束する普通のゴルフクラブは、方向のないクラブで克服できる。

もう一方の、スイング全体の位相ずれは全てのスイングスポーツに共通した落とし穴だが、ゴルフでは一般にスライスを生み出す。無理にフェイスを合わせたとしても、最高速度の地点で打たないのだから飛距離が出ない。

これは道具の重さが生み出すスイング全体の位相ずれであり、ゴルファーだけの悩みでもないから、特に取り上げない。プロに習えばいいことだ。

ヘッドの代わりにボールのような全対称の物体が付いたゴルフクラブを振り回すのでは実際にボールは打てないので、つまらなくて子供もやらないだろうが、歪んだスイングと戦う年月を考えると、こんなに簡単で、こんなに分かりやすい話は他にない、とだけ書いておく。要するに野球のバットでいいんだが。

« 0144 ジガーという道具 | トップページ | 0146 ハンドファーストのワナ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 0144 ジガーという道具 | トップページ | 0146 ハンドファーストのワナ »