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野球のバットを片手でつかみ、水平に支えて何秒耐えられるか。腕力のない非力な女性などはそうやって支えることすら出来ないだろう。ところが、同じバットを握り、今度はバットを垂直に立てておけば、非力な人でもバットは支えられるだろう。そんな当たり前の話が馬鹿馬鹿しいなら、ゴルフボールを真っ直ぐ飛ばす努力もまた馬鹿馬鹿しい。

同じバットをもう一本用意し、二本のバットをグリップエンドの底で合わせて瞬間接着剤で固定すると、重さは倍になるのに、前と同じところをつかんで水平に支えることは非力な人にも簡単に出来るようになる。それもまた当たり前の話であるが、実を言うとそれはスワンネックの話であり、またベン・ホーガンの夢でもあった。

けた外れの腕力を持っている人は、バットを水平にしようが垂直にしようが全然意に介さない。このけた外れの腕力は、ゴルフクラブを振るときに飛距離として現れるささやかな意味を持つ以上に、真っ直ぐ打てるという重大な意味を持っている。

古典的スイングの本質は、古典的ゴルフクラブの歪んだ性質を、けた外れの腕力無しに回避するための技術である、と言い換えることが出来る。つまり古典的スイングは古典的クラブを使いこなすために進化した。クラブが進化すれば古典的スイングの価値は下がるが、クラブが本質的に進化する可能性は今のところほとんどない。

ゴルフクラブがなぜ今の形で作られたのか、それに詮索の余地はない。誰が作り始めても同じ形になっただろう。クラブを大きな耳かきと言うことがあるが、よく見ると耳かきはスワンネック構造であってクラブとは違う。ゴルフはパターとアイアンとウッドを使うが、アイアンよりパターの方の進化が先にやってきた。今やほとんどのパターはスワンネッククラブと同じ構造である。

それは予想外の出来事だが、古典的クラブの持っている魅力が私の想像を遙かに超えてゴルファーの心を捉えていたということだ。古典的クラブはボールを遠くに飛ばすことが出来る。スワンネック側から見れば、それは歪みを逆手に取っていると表現できるが、古典的クラブの側から見ると、それこそゴルフスイングの究極の存在価値だということになる。

同じゴルファーがより少ないスコアでプレーできるゴルフクラブがいいクラブと言うならスワンネックはいいクラブであるが、真っ直ぐ遠くへ飛ぶのがゴルフクラブの理想だと言うなら、確かに古典的クラブにはそれを満足する可能性がある。スワンネックには飛ばす方の可能性がないので、軍配は古典的クラブに上がる。

ただし古典的クラブはスイングへの依存度が高く限りなく練習し続けなければならない。プロゴルファーの場合、シニアプロのように自在にボールを曲げることでスコアをまとめる場合を除けば、飛ばす必要のない部分ではスワンネックの方が有利だ。そういう選択をするプロが出てくると、古典的スイングは意味を失う。

ピンの左へは絶対に打てない場合(こういう場合が非常に多い。池に落とすプロは皆こちら側だ。)、ウェッジでピンを狙えば左に飛ぶ可能性があるから、どうしてもかなり右に打つことになる。スワンネックは引っかからないのでピン真っ直ぐに狙っても何ら問題はない。

クラブの性能が飛距離の面で限界に達すると、スワンネックの出番になるかも知れない。飛距離を制限する実務的な方法如何によってゴルフクラブは劇的に変わるだろう。すでにプロの中には古典的クラブを使いながら古典的スイングを使わないプロが出てきている。彼らはスワンネックなしにスワンネック的スイングをしようとしているのだ。

(パターの進化はいつでもクラブの進化に呼応して互いに逆走する。ということは、これから先のパターの進化は飛ぶことである。つまりよく転がることだ。大きなスイングなしに50ヤードも転がるパターがあったら、ワンピンなどはパターを動かさなくて済む。何しろ動かないのが一番正確なのだから、そういうパターが作られる。)

古典的ゴルフスイングのバランスシートは、歪みが飛距離を生むという性質が、いい方へ傾くのか悪い方に傾くのかで決まる。その境目はスコアに換算すると85前後にあって、これよりもいいスコアで回るゴルファーはとりあえず古典的クラブを使いこなしているだろう。それよりスコアが悪いゴルファーと、80を打たないゴルファーはスワンネックに替えてみる価値がある。

古典的スイングは古典的ゴルフクラブを使うために進化したが、ごく少数の限られた人たちが遊ぶゴルフではなくなった今、打ちやすいクラブ、特にアイアンが開発されるのは目に見えている。アイアンが無くなることだってあり得る。R&Aもこの部分のルールを変える日がやってくると思う。

パワーがあれば有利になるのはスポーツの基本だ。実際現代のプロは皆かなり大柄になってきている。しかし技術がそれを恐れることはない。ゴルフが身長別の階級制になることはないし、その必要もない。曲がらないが飛ばないクラブを作るとパワーの有利がさらに助長されることを心配したのか、それともイギリス特有の意味のない意地悪なのか、飛ばないアイアンはR&Aの規制を受けている。

飛ぶドライヴァーを規制し、飛ばないアイアンも規制する。この規制の中で古典的スイングは出来上がった。クラブが変わればスイングも少しずつ変わるが、その速度はクラブの変化に追いつかない。古典的スイングのバランスシートはクラブの変化に同期する。クラブフェイスを見つめ、そのクラブはどう打ったら一番いいか、考えることだ。筆者

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