« 0037 シニアが長尺パターを使うわけ | トップページ | 0040 ヘッドを開いて構える、謎解き »

1ラウンド平均43パットに悩むゴルファーならば、当然パターを研究する。今ではランガーやシン、それにメディエイトなど、長いパターを使う有名なプロが増えてようやく定着した感があるが、過去に長いパターが使われたことは何度もあったのに定着しなかった。

ゴルファーは保守的だから本質的な善し悪しは二の次にする。それで不自由なクラブで悪戦苦闘する。実に妙な人種だ。最近のパターはほとんどヘッドの真ん中にシャフトを挿してある。こうすればヘッドにトルクが無くなって素直に動く。

もっともクラブヘッドを開かないで引くことは不可能で、トルクはどうしても発生する。振り出してからインパクトまでに、うまくその分のトルクを補正しようということで、ヘッドはわざと強いトルクが出るようにしてあるのも事実だ。

そこまでわかって来て、ついにパターはトルクを無くしたものが主流になった。ゼブラというパターがヒットした。これは未来に向けて、もはや逆戻りすることはないだろう。しかしそういう発想は50年も前にすでにあった。保守的なゴルファーがそれを受け入れるのに50年かかっただけだ。

長いパターが受け入れられるのにも時間がかかった。長いパターは短いパットをするときボールとカップが同時に視界に入るので頭が動かない。普通のクラブを振るのとは大分違ってくるから違和感があるのも確かだが、何しろ誰も使っていないものに手を出すゴルファーがいなかった。頭が悪いんだ。

ゴルフが大衆化して競争が激化すると保守的でいられなくなる。それで飯を喰うプロともなれば、わずかでもいいものは取り入れるようになる。こうして長尺パターはそれなりに定着するし、一般のパターがトルクレスを主流にするという当たり前のことが起こる。

ゴルフは趣味の世界だから根本的に進歩的である必要はない。そこがいい。NASAが本気でクラブを開発したら、情緒も迷信もかなぐり捨てるのだから、あっという間にクラブは100年進化する。

それがいいとは思わない。ただベンホーガンのアイアンのように画期的なものが次々に生まれているのに、認められず消えていくのを見るのは寂しい。また何十年か後に出てくるのだろう。そのときヒットすることを祈るばかりだ。

幸いにベンホーガンはその名前によって評価されたが、長尺パターもトルクレスパターも、そしてスワンネックアイアンも長い間日の目を見なかった。私は消えていったそういうクラブを見てきたし、作った人の心意気に感動してきた。今でもブローニン505は形を変えて生きている。やさしいクラブを作ろうとすれば、その道筋で、一度はああいう形を見るはずだ。

さて、普通のパッティングスタイルで一番いいのは右手と左手を逆に握る、いわゆる逆オーバーラップである。人間の体の構造が変わらない限り、逆オーバーラップが一番うまくボールをヒットできる。

逆オーバーラップがじわじわその人口を増やすことは目に見えている。あと何十年かすれば主流になるだろう。それでもなお、私の能なしパットは救えなかった。そこで世間が逆オーバーラップ全盛になる前に、そのもう一つ先にある「前向きパット」を試みている。

ラインをまたいではいけないというルールが、この前向きパットのために作られたらしい。本当かどうかはともかく、そんな制限が作られるということは、それほどこの打ち方がよく入るのだと思った。

ラインをわずかに外したプロゴルファーが、首をひねりながらラインの後方に廻ってもう一度ラインを確かめている光景をしばしば見かける。前向きパットにその必要はないし、そういう言いわけは出来ない。

彼らの行動を見ると、本来前向きパットをしたいところを、まるでそれが出来ないための次善の策として、普通の横向きパットをしていることがわかる。こんなに素朴でまっとうな話を、何でゴルファーは理解しないのだろうか。

確かに前向きパットは見慣れない人にはちょっと妙な格好だ。当然保守的なゴルファーはやらない。長尺でさえ一般的になるのに長い時間がかかったのだから、前向きパットはもっと時間がかかる。そしてそれがあまりに入るからいずれ禁止になる。

前向きパットにヘッドアップの弊害はない。ヘッドアップしてもラインは変わらない。バランスされたパターを使えば前向きパットにトルクは生まれない。フェイスは常に目標にぴったり向きっぱなしだ。これ以外のどんなパッティングスタイルでも、バックスイングでフェイスは必ず開く。

開いたものは閉じなければならない。どれくらいで元に戻るか心配だ。パットのアドレスでフェイスを開いて構えるゴルファーは、せめて「開いて閉じる」動作を「閉じる」だけのシンプルな動作にしたいと考えたわけだ。

彼らのやり方は変則ではあるが理にかなっている。ビリー・メイフェアと杉原輝男さんに乾杯。(越の山風という間の抜けた名前の、しかし実にうまい酒がある。これで乾杯)何のこっちゃ。

グリーン上が真っ直ぐなラインばかりならばパットは簡単だとゴルファーは思うが、それは疑わしい。ショットに関してドローかスライスか、どちらかを持ち球にするゴルファーが多いように、パットを見ていても真っ直ぐのつもりでやや右に打ち出すゴルファーと、逆に左へ打ち出すゴルファーがいる。大抵は右に向かって左に打つ。

本当に真っ直ぐ打っているゴルファーは希だ。しかしパットの場合はショットと違ってインテンショナルではなく、本人は真っ直ぐ打っているつもりなのだから、もしもグリーンが本当にストレートラインばかりだと2メートルのパットは決して入らないことになる。ところがグリーンは真っ直ぐに見えても常にかすかに曲がるラインだから、曲がる方向が偶然自分に合っているときには入る。

右に打ち出すゴルファーはもちろんそれに気付いていないから、真っ直ぐなラインに見えるものは真っ直ぐに打つ、つもりで右へ打っている。それがたまたまかすかなホックラインだとカップに飛び込むだろう。パットの調子というのは、その日真っ直ぐに見えた誤解のラインに向かって、真っ直ぐに打っているつもりの、真っ直ぐではない誤解のパットとが相殺される必然が多い日に、調子が良かったという事になるだけだ。

だから幾ら練習してもラチが開かない。上手なゴルファーはなるべく同じ方向に曲がるパットラインを残すようにボールを落とす。スライスラインが得意だと信じているゴルファーは旗の左に打ってくる。それは賢いやり方だが、スライスラインが得意なのは、真っ直ぐのつもりのパットを実は少し左に打つ癖があるからかも知れない。そういうゴルファーは元々左に引っ張るタッチだからスライスラインはフィーリングが合う。

前向きパットに誤解の入るスキはほとんどない。ボーリングの球を投げるのと同じだ。あれを普通のパットのように横投げしたら相当難しいだろう。ビリヤードの棒をバットのように使ったら、それもほとんどコントロールが出来ない。真っ直ぐ突くからあれだけの精度が出るのだ。と言うわけで前向きパットの練習をしているが、まだ結果は出ない。

前向きパットにはもう一つ利点がある。よく「ボールを手で転がすように」打てという。手でボールを転がす感じが大事なのだ。丸ちゃんがグリーン上で時折そんな仕草をするのを見たことがあるだろう。それはちょうどボーリングの格好でボールを投げ出すことだ。

しかし幾らその感じをつかんでみても、実際には横投げするわけだから「転がす」感じは消えてしまう。その点前向きパットはそのままだ。右手を使って転がす感じを、次に靴べらの長さに変え、それをだんだんと長くしていく。そうして最後は左手でパターのグリップエンドを支えるようにする。その時右手のグリップは鉛筆を握る風に握る。卓球でいうペングリップだ。シェイクより正確に打てる。ただロングパットは打ちにくい。

前向きパットの正式名称は「クローケイ」である。クローケイというゲートボールのようなスポーツがあって、それに使う道具の使い方が似ているので前向きパットのことを「クローケイスタイル」と呼ぶ。

アメリカはイギリスのそういう伝統や歴史に劣等感を持っているので、パッティングの格好から見たままの表現として「サイドサドル」という名前を使っている。私は日本人なので「前向きパット」と言う。

補2
麒麟山酒造は「越の山風」の製造を終了しました。麒麟山「紅葉」もおいしいお酒です。筆者

« 0037 シニアが長尺パターを使うわけ | トップページ | 0040 ヘッドを開いて構える、謎解き »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 0037 シニアが長尺パターを使うわけ | トップページ | 0040 ヘッドを開いて構える、謎解き »