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子供の頃、マッチ棒くらいの細いゴム管は必需品だった。今では縁が無くなって滅多に見ないが、釣りの浮きを差し込んで糸に固定したり、自転車のおへそに使ったりした。このごろはゴム管の代わりに熱収縮チューブが家の中に散乱している。色も形もそっくりだが伸びない。

このチューブの切れっぱしをマブチモーターの軸に付けて回すと、回転速度によって真っ直ぐになったり百合の花のように開いたりする。面白いので眺めていたら、ゴルフクラブの握り方の話を思い出した。グリップにいい悪いは無いのだが、左手の握りはパームグリップがいいと昔から言われている。

しかし良く飛ぶドライヴァーの名前は知っていても、パームグリップの何たるかを知らないゴルファーが多い。それは悪いことでもないが、どっちも知らない方がもっと進歩的だし、また両方知っていても困らないだろう。

手の平にはキャッチャーミットと同じような膨らみがある。親指の根元から手首にかけてと、小指の根元から手首にかけて、アンコが入っている。その二つの山の間に谷間が出来るが、その谷にグリップを横たえて、ちょうど中指に沿って伸びているように握るとパームグリップになる。

とても不自然で、慣れないとうまく握れない。それに対して鉄棒を握るときのように4本の指の関節の溝にシャフトを沿わせて包み込むのをフィンガーグリップという。

パームグリップではシャフトが左腕の骨の続きのように真っ直ぐ伸びる。フィンガーグリップではバーベルを持ち上げるときのように握るので、左腕の骨とシャフトが角度を作る。それは自然には90度だが、手首を動かして真っ直ぐに見せかけている。

パームグリップはスイングするときの手首の返しが地味で目立たないが、実際にはフィンガーグリップより素早く鋭く返っている。だからいいグリップと言われるのかどうかはわからないが、ハンドダウンの構えを厳しく禁止するレッスンプロもこの考え方と同じだ。

従ってフィンガーグリップで握っていながらハンドアップしても何ら意味がないし、逆にパームで握っていればハンドダウンの構えでもレッスンプロの願いは叶(かな)っている。しかしパームグリップにはもっと重要な意味が別にある。

この話は案外分かりにくい話で、変な頭が書くからいよいよわかりにくいと思うが、人間工学的というか、幾何学的である。挑戦していただきたい。

北に向いている望遠鏡を南に向けるには、当たり前の話だがぐるっと回さなければならない。大きな望遠鏡ではかなり骨だ。30分くらいかかるのもあるだろう。ところが潜水艦の潜望鏡を北から南に回すのはわけないことだ。不思議な性格の私はそれを不思議だと思うことがある。

テニスラケットを振ってボールを打つとき、フォアハンドのストロークで振り遅れるとボールが右に飛ぶ。ゴロベースと同じで、振り遅れればバットはまだセンター方向に向くその前にボールを打つから、ボールはライトに飛ぶ。ところがヴォレーではそうならない。

ヴォレーではラケットシャフトは立っている。振り遅れようがどうしようが、ラケット面を右に向けて握っていれば右に飛ぶし、左に向ければ左に飛ぶ。それはスイングの時間経過に関わらない。しかもフェイスをどこへ向けるのも僅かな手首の動きで事足りる。

パームグリップが、左腕の骨にシャフトを継ぎ足して延長し、その先にヘッドを取り付けたものならば、フェイスの方向を変えるには骨を僅かに捻(ねじ)ればいい。フィンガーグリップの場合は原理的にそう簡単でない。

フェイスの方向を変えるには望遠鏡の方向を変えるのと同じ操作を要する。つまり、時間がかかる。パームグリップは潜望鏡で、フィンガーグリップは望遠鏡なのである。

インパクトに間に合わせるために、ゴルファーは必死でクラブを振る。ゴルファーが必死でクラブを振るのは必ずしも全てのパワーをボールに伝えたいからばかりではなく、時間に間に合わせてクラブフェイスを真っ直ぐにしたいという欲求でもある。悲しいかな、自分の影を踏もうというこの試みは未来永劫成功するはずがない。

従って左手をフィンガーグリップで握るゴルファーは、どこかでスイングを休むか、あるいはスイングを歪ませなければ真っ直ぐに打てない。一番簡単な歪ませ方は右手を使うことであるが、ターボ付きのエンジンはターボのかかり始めのタイミングが微妙で、コントロールはなかなか難しい。左はパームで握れと言われる由縁がここにある。

おわかりだろうか。これはゴム管の動きを見ていて気付いた話だ。フィンガーでは出来ない動きがパームでは出来る。もちろん人の手は柔軟性があるので理論はさほど鮮明に現れない。しかし効果は理屈通りだから、左手はパームで握るのがいい。

どんなグリップでも大きなお世話だと豪語する私がこれだけは勧めるのだから、そこにはそれなりの意義がある。その意味を知って使う限りは無論どうでもよろしい。あなたはパームグリップをご存じか。筆者

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