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アドレスからアドレスに戻る。シンプルな話だ。ところがバックスイングとダウンスイングは同じ形ではない。両方の写真を重ね合わせてピッタリと同じになるゴルファーはいない。

それでもアドレスには戻る。10引いて10戻る。初心者は10引いて7でアドレスに戻ってくる。残りの3はボールが飛んだ後に消化する。上手になると10引いて12戻すこともできる。だからスライスホックを使い分けられる。

波形観測の基本は振幅特性で、きれいな矩形波になっているか、などと観測をする。そこでは電圧や周波数特性も見ることが出来る。アドレスからアドレスに戻るというのはこのレヴェルの観測である。

しかしそれで終わりではない。振幅だけみるとうまい具合に行っているのに機械がうまく動作しなければ、さらに原因を探らざるを得ない。位相を調べて見ようか、となってベクトルスコープだネットワークアナライザーだという話になる。

ボールのところにヘッドが戻らなければ打てない。しかし10引いて7でも12でもボールは打てるし、たとえばアドレスでヘッドを開いて構えてストレートボールを打つゴルファーもいる。

インパクトではヘッドが真っ直ぐになっているからだ。スイングの軌道は同じでも、この場合明らかにヘッドの動きは行きと帰りが同じではない。こういう打ち方は一般に正しくないと言われるだろうが、正しくないという根拠はない。むしろ位相は良好かも知れないのだ。

そもそもなぜアドレスでヘッドを開いて構えるゴルファーがいるのかが問題だ。アドレスでヘッドを開いたり閉じたり、特に閉じる方の事情の大半は単にスイングの補正である。これはごく低次元の話だ。

そんなことをしても方向は修正できるが活きたボールが打てないから初心者はすぐやめる場合が多い。ただしかなりの上級者でヘッドをシャットにして構え、実に上手に打つゴルファーを知っている。

アドレスでヘッドを開かないと正確にボールを打てないと感じるゴルファーは確かに存在する。こういう非常に神経の繊細なゴルファーは、邪道と言われながら反論できずに、それでもヘッドを開き続けるか、さもなければ諦めるかを選択する。

波形解析に位相が出てくれば、それで問題が解決する時代もあった。それが段々神通力を失って群遅延特性が出たり、さらに微分利得が問題になって、解析技術は必要に迫られて進歩する。スペクトラムアナライザもネットワークアナライザも、一種の歪率計(わいりつけい)として活躍する。

ゴルフスイングの解析はテニスより進化している。だから私はゴルフの方法でテニスを解析し、教えている。どこが進化かというと、言葉が多い。「バックスイング」は普通名詞だが、ゴルフでは固有名詞になっている。「スイングプレーン」はテニスにはなかった。そこがすごい。

ゴルフスイングの解析に歪率計が使われるためには、何をもってそれを歪みとするかが決まらなければならない。まだゴルフスイングの分析技術はそこまで進歩してはいない。必要を感じていないからだ。

もしもゴルフスイングに歪率計が使われるようになったとして、それは進歩だが、正しい歪率計はヘッドを開いて構える方がスイングの歪率が小さいという信じがたい結論を出すだろう。

アドレスからアドレスに戻るという自然な感覚は人の心に受け入れられやすいが、人の心と真実が一致するとは限らない。アインシュタインは量子力学を信じなかったが、量子力学無しに今日の科学はない。

行き帰りでクラブヘッドの自転量が変わる方が自然だという理論は今のところない。ヘッドをやや開いてアドレスした場合、バックスイングでは普通と比べてヘッド自体の回転量は、元々開いている分だけ小さい。トップでは普通のゴルファーと同じ形になるのだから、初めから開いている分開いていく過程が省略される。ダウンスイングは同じだ。

それはパターを考えるとわかる。パターでもヘッドは「自然」に開いていく。しかし全てのゴルファーがパターではヘッドを開かずフェイスを目標に向けたままバックスイングしようとする。

大きなショットでは無理だがスイングの小さなパットならそれは可能だ。つまり普通のゴルファーでもヘッドの回転は不本意なのだ。そのパットと同じように全てのスイングをリニアに済まそうと努力するゴルファーさえいる。今も昔もどこかで誰かがこの夢と戦っている。

その夢に破れたゴルファーが次に行き着く先はどこか。彼等が常識をものともしない勇気を持っていたなら、ヘッドを開いて構えるアドレスにたどり着くだろう。そうすれば、少なくともバックスイングの途中まで、ヘッドを無回転でリニアに動かせる。

ゴルフスイングの解析技術は他のスポーツより幾らか進んでいるが、到底電気屋の比ではない。ゴルフで戦争するわけではないからNASAもヒューレット・パッカードも本腰は入れない。

「開いていったヘッドが真っ直ぐになって戻る」ことは、「開いていたヘッドが真っ直ぐになって戻る」こととどれほど違うかというと、「っ」だけだ。ゴルフスイングをバックスイング無しに、あらかじめトップの形を取っておいてそこから振り下ろすだけのものとすると、その「っ」さえいらなくなる。

非常に高度に熟練したゴルファーなら、もはやアドレスでヘッドを開かずともボールは打てる。そういう域に達してしまうと、開いていても開いて行ってもどちらでも同じ事だ。そうなって初めてアドレスで真っ直ぐ目標にフェイスを向けても差し支えがなくなる。

その時点ではどちらがいいか悪いかという議論はもはや意味がない。しかし実際そのレヴェルに達しているゴルファーはプロでさえそう多くはいないのだから、アマチュアがそんな無理な姿勢でスイングする必要はない。ヘッドは開いて構えればいい。筆者

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