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歴史的に見ると、ゴルフ場は新設される度に少しずつ距離が長くなってきた。野球場も大きくなってきたが、スタンドが大きくなっただけで、フィールドはさほど変わらない。ゴルフ場もスタンドが大きくなると見せ物小屋だが、野球が道具に頼る「飛び」を追求せず規制したのに反して、ゴルフだけがこんなになってしまったのはなぜだろうか。

自分が飛べば他人も飛ぶのだから何にもならないということが、欲ぼけのゴルファーにはわからない。もっとも欲ぼけはゴルファーに限らない。ママさんテニスのメンバー達が余りにネットを強く張るので、鉄製のネットポストが「ハ」の字に曲がる。冗談ではない。

何でそんなに強く張るのかと文句を言ったら、「強く張ればネットの上ぎりぎりに当たったボールが向こう側に落ちる。弱く張ると自分のコートに落ちる」のだそうだ。アホらしくて話にならない。お陰でネットの寿命も半分以下で、高価なネットがすぐぼろぼろになる。

飛ぶボールもクラブも、誰かが先に使えば、やむを得ず同じように飛ぶのを買う。先に使ったゴルファーがつかの間の優越感に浸る。この繰り返しだ。いつか誰かが止めるだろうと思っていたら、ゴルフ協会がとうとう動き出した。

こういう規制はゴルフ業界に活気がなくなるから本当はしない方がいい。しかし、それよりもっと重大な社会的損失が懸念されるから動き出したのだろう。活気のあるなしは、業界が存在してこその話なのだ。

と言うわけで、飛ばないボールを作ればいいのだが、飛ぶ方はただとにかく飛べば良かったが、飛ばない方は正確に「飛ばなさ具合」を宣言できなければならない。これが案外難しいらしい。飛距離の規制が始まる10年ほど前に、私は長瀬ゴムというボール会社に電話を掛けた。社名は変わったようだが、ゴムボールに関しては老舗の会社だ。

そこの開発担当に飛ばないゴルフボールを作れないかという話を持ちかけた。私のホームコースは全長約4300メートルのパー67である。レディースティーよりまだ短い。ここで練習していざ数十年来のゴルフがたきのコースに出向くと、そこはフルバックで6700メートル(7400ヤード)もある化け物コースだ。レギュラーでも6400メートル以上あるから勝手が違い過ぎる。

そこで考えた。4300割る6400で0、67だから、普通のボールの67パーセントだけ飛ぶボールを作ればいい。それを使ってホームコースをプレーすると何が起こるか。飛ばないボールで4300のホームコースをプレーした場合と、普通のボールで6400をプレーするのと、距離に関して、つまり使うクラブの選択について、全く同じ条件になる。私は感動で震えた。

しかし開発担当者の答えはノーだった。飛距離を正確に抑えることは簡単でないらしい。しかもゴルフボールは金の成る木で、それこそ特許の固まりが飛んでいるのだそうだ。私のもくろみはもろくも崩れた。その代わりに、ボールの飛距離について考えたお陰で、あるアイデアが浮かんだ。

ボールの飛距離にも規制が掛かる時代だ。規制とは何かというと長い話になるが、規制が長い目で見ていいということは滅多にない。出来れば無い方がいい。そこで、ボールの規制からひとまず女性用を切り離す。つまりレディース用ボールというカテゴリを作る。

ゴルフコースは男性用に造られているから女性が飛ぶボールを使うことに何ら問題はない。それどころかレディースティーという面倒くさいティーを取っ払えるかもしれない。男性と同じところから打てばいいのだ。男女が一緒にプレーするときティーグラウンドが別々なのでもたつく分時間が掛かる。ゴルフ場も困る。レディースボールというカテゴリーはそれをすっきりさせてくれる。

それに開発者はこれから先もどんなに飛ぶボールを作っても売れることになるから進歩の芽はつみ取られない。ついでにクラブの規制の方もレディースを除外すればいい。それなら科学の進歩にブレーキを掛けることにはならない。

これで女性ゴルファーは男性ゴルファーと戦うとき、ぐっと有利になるだろう。というより、今までが余りに不利だったのだから、これで男女対等に戦える。レディースゴルファーの数を劇的に増やすことにもなる。

将来女子プロと男子プロが同じティーから差しで勝負する日が来るかも知れない。それは実際科学の勝利である。それにしても、いつかはボールの飛距離を規制値の何パーセントと正確に表示したボールを販売してもらいたい。

現在のゴルフコースのせめて3割くらい短いコースで、チャンピオンコースと同等のゲームが楽しめれば、コースの経営も随分とラクになる。そのためには正確に3割飛ばないボールが必要だ。

そういうボールがないと、短いコースが簡易ゴルフ場のような扱いにされてしまう。それではいけない。3割飛ばないボールで3割短いコースをプレーすれば、チャンピオンコースを回ったのに等しい。1950年代の後半から60年代にかけてチャンピオンコースと銘打って登場した多くのコースは、距離を目安にチャンピオンコースと言ったのだから、4割飛ばないボールを使えば3割短いコースも立派なチャンピオンコースだ。

見方を変えて600ヤードのパー5は無意味に長すぎる。それは非力で届かないから長いと言うわけではなく、単に歩くにしても長すぎる。それを雄大なホールとは思わない。人の平均的視力を考えて見れば、500ヤードでも旗は遠く霞んでいる。雄大かどうかはコースの景色に負うところが大で、距離ばかり伸ばしてもつまらない。

ゴルフもそろそろスポーツとしての基準を確立する時期に来ている。アメリカはパワーに偏る。従ってアメリカのゴルフ場は長くなる。しかも空間のハザードが少なすぎる。上に打てなかったり、下に打てなかったりするのはラフに入ったときだけだ。パワーが生きる場面と技術が生きる場面のバランスが悪い。

ドライバーがどんどん改良されて、年に何度も買い換えるようになると、それはヘンだ。世の奥様方は正常だから顔をしかめる。ゴルファーの方がおかしい。元はラリーのようなスポーツだったゴルフがアメリカに行ってインディ500のようになってきた。スピードが優先されて、コーナリング技術の比重が軽くなった。

フレッド・ファンクはアメリカのプロの中で、ドライヴァーの飛距離が最低レヴェルのゴルファーである。一方タイガーは一番飛ぶ方の部類に入る。例えばこの二人を基準に、二人の勝率が全く同じになるようなゴルフコースを造れば、勝利に必要なパワーと正確性のバランスが絶妙のコースということになる。

毎年U.S.P.G.Aのシード選手の中からドライヴァーが一番飛ぶ選手と一番飛ばない選手を二人選んで、基準コースを設計する。そうするとパワーに偏ることもテクニックに走ることも無くなるだろう。ただしこの二人の勝率が同じになる、そういうコースが設計可能かどうかは難しい問題である。もっと難しいのはそういうコースでのトーナメントが、見ていて楽しいかどうかということだろう。

それにしてもなお、飛距離が選べるボールがほしい。

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