« 0141 逆テーパーのグリップ | トップページ | 0143 続ゴルフをバクチにしないお話 »

多くの人が「飛距離の出し方」を読みに来るが、飛距離に秘策があるわけではない。飛距離は危険と背中合わせであり、それは古典的ゴルフクラブと古典的スイングが求め続けたものである。したがって古典的スイングと道具こそが飛距離の秘策と言えるかも知れない。

ところが、もう一つ思い当たることがあって、それは危険な道具にもスイングにも頼らない方法であり、うまくすれば飛ばしたいゴルファーの役に立つかも知れない。

ホームランバッターがボールを遠くへ飛ばす技術を持っているというなら、彼らのスイングは国内のバッターに限れば例外なく投げ釣り打法なので、ゴルファーが投げ釣り打法を使えば、ボールは飛ぶはずだ。興味深いのは、投げ釣り打法はパワーオフで打つ打法であり、ボールを力任せにたたく打法ではないという事実だ。

パワーオフと言っても、浜辺で力一杯竿を振る釣り人は、パワーをオフにしているわけではない。思い切り振っていながら、しかし竿は勢い余って砂浜に激突するわけではない。ゴルフスイングで言えば、思い切り振って、それでもインパクトでクラブが止まるということになる。

竿は海の彼方、水面のやや上方に向かって投げ出される。それなら、ゴルフクラブはボールのやや右の地面の地下深く目がけて振り出されなければならない。イメージを作るために、ビルの屋上の手すりの前に立つ。飛び降りようとする格好で、ゴルフクラブを空間にアドレスする。眼の下は数十メートル下の地面だ。

こうすると、クラブを振り出す方向が見えるが、さて、投げ釣りと同じような力を出せそうには思えないだろう。ゴルフスイングのひとつの闇がここに存在する。足の向きを、つまりスタンスの取り方を変えて、地面に向かって一番力が出せそうな格好をすると、どんなスタンスになるか。

これは誰でも同じになる。誰でもスタンスは90度右回転した位置に納まる。少しオープンスタンスでやりたい人は、時計回りに70度くらい回転させたところで最も力を出せると感じる。こうなるとゴルフは背面飛びである。私が「背面飛び」というタイトルを書いたのは、ゴルフスイングの闇の中で迷っていた頃だった。

無論実際にそんなスタンスではボールは打ちにくいが、ややクローズドスタンスを取るゴルファーは、この辺の感覚を自然に表現しているのだ。投げ釣り打法はクローズドスタンスしかない。

初心者がゴルフクラブを振るとボールのところではヘッドスピードが遅い。その先で速くなる。この位相ずれはゴルフに限らない。ハエをたたこうとしてハエに逃げられる。誰にでも経験があることだが、ゴルフボールは逃げないのに、ゴルファーはハエに逃げられるのとよく似たタイミングでボールを打ちそこなっている。

ゴルフクラブをパワーオフで振ると言うのは力を抜くのではない。ダートトライアルで車の向きを変えるとき、ハンドルを切ってブレーキを踏めば車はつまずいたようにノメって方向を変える。急にアクセルを離しても同じことが起きるが、後輪駆動車だけはアクセルを踏み込んでも、十分なパワーがあれば車は向きを変える。なければ終わりだ。

どこかに書いたことがあるが、一般的な高速道でカーヴを曲がりきれずに壁に激突するときは、脇見運転や居眠りが原因だから、そのままカーヴに突っ込むケースがほとんどだが、首都高のような急なカーヴでは、始めから気を付けているので、曲がりきれずにカーヴの外側の壁に突っ込むことは少ない。

この場合には、たとえば左カーヴならば、スピードが出過ぎていて曲がりきれず、正面の壁にぶつかりそうなとき、ドライヴァーは壁を避けようとしてあわてて左にハンドルを切ると同時にブレーキを踏む。そうすると車はお尻を振ってくるっと回転しながら左側の壁にお尻から激突する。

左カーヴで曲がりきれずに左の壁にぶつかるという、ちょっと不思議な話だ。考えようによっては、左カーヴの左側の壁に、これ以上強くぶつかる方法は他にはないとも言える。

これが投げ釣り打法であり、パワーオフのテクニックである。見えないカーヴの裏側の壁に車をぶつける技術と考えれば、おもしろい。パワーオフとは言うがこれ以上パワフルに激突できないところが、投げ釣り打法のおもしろいところだ。

王、野村、田淵、大島、大杉、清原。野球を良く知らない私は、しかしスイングと名の付くものの中で、すごいスイングだけは、スポーツの種類に関わらずよく知っていた。これらの、ホームランを打つ名人たちは皆投げ釣り打法である。

特別な馬力を持っている後輪駆動の車だけが、パワーオンで回ることが出来る。パワーで飛ばす方法とは、後輪駆動の方法と酷似しているのだが、ここではそれに触れない。ちなみに、タイガー・ウッズはパワーヒッターではない。あれは投げ釣り打法の亜流の、スウェイ打法で飛ばしている。

« 0141 逆テーパーのグリップ | トップページ | 0143 続ゴルフをバクチにしないお話 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 0141 逆テーパーのグリップ | トップページ | 0143 続ゴルフをバクチにしないお話 »