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私のウッドはグリップ部分が短い。詰めて握るクセもあるが、ラバーグリップの三分の二しか握らない。しかもドライヴァーなどはアイアンと違って距離の調整やライの具合などでクラブをわざと短く持ったりすることはないから、グリップは常に余る。先から7センチ切り取っても全く困らないので切った。

しかしゴルファーは私のクラブを見ると、格好が悪いと笑う。切り取った部分のラバーはわずかに6グラムに過ぎないが、クラブ、特にドライヴァーの軽量化のために、クラブ屋がどれだけ知恵を絞ってがんばっているかを知ったら、笑ってはいられない。

430グラムのドライヴァーが軽かった時代があった。そしてヘッド200グラム、シャフト100グラム、そしてグリップ70グラムでトータル370グラムの時代が過ぎ、今やドライヴァーはトータルで290グラムの時代になっている。長い間ヘッドは強度の問題があって理想の軽さには作れなかった。

ヘッドは重ければ重いほど飛ぶが、それは同じスピードで振れる場合の話だ。ヘッドが軽ければ軽いほど速く振れるだろう。E=MCCで、ヘッドスピードが2倍になると4倍飛ぶ。一方重さが2倍になっても2倍しか飛ばない。

軽いヘッドを作ると強度が不足してヘッドが割れる。木製が張り子の寅の鉄製になり、そしてチタン製になった理由は丈夫で軽いヘッドを作るためだ。

十分な強度を保ったまま、もうこれ以上軽くしてもヘッドスピードは上がらないか、上がっても力積のバランスを越えて飛距離が落ち始めるというところまで来たら、それはクラブ屋の勝利であり、古典力学の時代は終わる。

高反発ヘッドの開発は、果たして力学時代の終わりを告げるものなのか、それともまだもっと軽いヘッドを作れば飛ぶのか。ヘッドの軽量化は200グラム辺りから足踏みしている。

力積問題の影響が少なかった昔、クラブの軽量化はシャフトから始まった。まずアルミが使われた。スポルディングのエグゼクティヴは、ある時期アルミシャフトだった。

それからかなり時間があってカーボンシャフトが生まれた。初期のカーボンは今時の軽いスチールとほぼ同じ重さがあったが、そのカーボンも70グラムまで軽くなった。さらなる軽量化のため、クラブ屋は戦った。それこそ涙ぐましいという表現がピッタリの、すさまじいというか、あさましい努力だ。そうして彼等はグリップを薄くした。

メーカーによってはテーパー、つまり段々太くなる部分のラバーの厚みを避けるために、シャフト自体のグリップ部分のテーパーを、グリップの形と同じようなラッパ型に作り、その分グリップの厚みを均一に薄くすることにした。それくらい1グラムの重みは大きい。

グリップは40グラムまで軽くなっている。このように軽量化の努力を価格で見れば、1グラムにつき1000円くらいの価値はある。使うことのないグリップ部分6グラムを切り取って、ゴルファーに笑われるということを別にすれば、それだけで6000円得をするわけだ。

私のドライヴァーは時代遅れのものだが、最新型のクラブを買って、それに同じ処置を施せば、世界一いいドライヴァーが出来上がるが、私の作戦は全てクラブ屋がとっくにやっているだろう。

クラブ屋に出来ないのが一つあった。私のウッドには穴が開いている。500円玉4つ分ほどの面積の大穴がヘッドの上の面に開いている。もちろんゴルファーは爆笑する。振れば笛のようにピーピーと音がするし、そんなに軽くしたら飛ばないし強度が無くなる、とゴルファーは口々に言う。

クラブ屋に出来ないことがアマチュアに出来るかと思うだろうが、クラブ屋には不特定多数のお客、という制限がある。誰が使っても大丈夫でなければならない。そこがクラブ屋の限界になるが、自分の使い方でいいなら何でも出来るのが本人であることのアドヴァンテイジだ。

強度の問題はメーカーのネックだ。私の力でこのヘッドがつぶれることはないがババ・ワトソンが打ったらたちまちつぶれるだろう。プロが打ってもつぶれないほど丈夫なヘッドを私が使う意味はない。

クラブ屋は自社のヘッドがつぶれたというのでは困るから、ロングヒッターでもつぶれない強度で作るだろうが、その分重くなったヘッドは、私には何の意味も価値もない、ただの重荷である。

もしもクラブヘッドがもっと軽い方が良くて、しかしそれはまだチタンでも作りきれないならば、プロ用に、ワンラウンドで壊れるぎりぎりの強度を持った、軽い使い捨てドライヴァーが作られるはずだ。

使い捨てコンタクトレンズと同じことがドライヴァーにも起こる。それほど軽さは大事な要素なのだから、ラバーグリップを切るのは当然だし、それは持ち主の自由だ。

ごく最近、チタンドライヴァーのヘッドの塗装をはがして軽くしようとしたら、妙なことが起こった。ヘッドの上側のほとんどがチタンではなく、カーボンの繊維で出来た布だった。それで穴が空いてしまった。

メーカーはヘッドを軽くしたかったのか、それとも安く作りたかったのか、それはわからないが、とにかくメーカーはがんばっているのだ。

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