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始めにお断りしておくが、ほとんど常に80は打たない本物のシングルゴルファーでない限り、ボールを曲げる技術を身につけることに意味はない。それは歩くことが出来ない段階で走ろうとするのに等しい。

真っ直ぐ打てないから80を切れないのであって、スタイミーなどで曲がるボールが打てたら80を切れたはずだ、などということはあり得ない。前の木がちょっと邪魔で、軽いドローを打てたら便利なのにと思った時には、邪魔にならないところへ確実に打つ練習が先だと考えよ。

何時だったかテレヴィを見ていたら、丸ちゃんがドローを打つ方法を説明していて、私はそれを見て感動した。彼の話は単純明快で、科学的にさえ思えた。

左ドッグレッグの場合、アドレスでは避けなければならない障害物の少し右に向けて普段通りのスタンスを取るが、フェイスだけはピン方向に向ける。つまりシャットフェイスになる。そのままアドレス通りの方向へ真っ直ぐ打てばいい。

私が感動したのはその方法に、ではない。それはニクラウスの時代から知れ渡っているし、プロの多くが同じ方法を使っているだろう。その通りにやって正しい結果を出せる丸ちゃんの技術のすごさに感動したのだ。

どこかで書いているが、私はこの方法をアマチュアには勧めない。理屈は単純だしわかりやすいが、この方法はとてつもなく難しい技術を前提に成り立っている。そもそもボールが飛び出す方向が、フェイスの向きとは無関係で、スイングの方向なのだという事実を信じ切るのに時間がかかる。

ここにはテニスのスマッシュ技術と同じ困難がある。日本人のテニスプレーヤーはラケットの面が向いている方向にボールが飛ぶと信じている。全日本のコーチさえそう信じている。したがってスマッシュを打つとき、何とかしてラケット面を下向きにしようと努力するが、オーヴァーヘッドのボールに対して、ラケット面を下向きにする方法は、ない。

ところが、ボールがスイング方向に飛ぶということを知っていると事情が一変する。しかしこれを理解するテニスプレーヤーは日本に私一人を除いて一人もいないのが現実であり、それを考えると、丸ちゃんの方法が日本人ゴルファー相手に成功する可能性も非常に小さいだろう。

非常にパワフルな、あるいはボールに無駄なくパワーを与えられるゴルファーだけが、つまりかなり上手なゴルファーだけがこの方法で満足なコントロールを手に入れることが出来る。それ以外のゴルファーは曲げ具合が丸ちゃんの言葉通りになる前にあきらめるはずだ。

ボールはどこに向いて飛び出すのか、それは簡単な話ではない。スイングの方向へ飛び出すと書いたが、それはスイングのスピードが十分に速い場合に限られる。思い切りよく打てば、ほとんどのゴルファーのボールはスイングの方向へ飛び出すが、たとえばパターフェイスを開いて打てば、ボールはスイング方向には出て行かない。

これはフェイスの摩擦係数に関係している。十分な摩擦があれば、ボールはスイング方向に飛び出すが、スイングが遅ければ、ボールはフェイスの向きの影響を受け始める。ライターに火がつくかつかないかと同じことで、シュッと擦(す)るその速度が問題になる。

幸いゴルフスイングはテニススイングよりも高速なので、幾らか躊躇してもボールはスイング方向へ飛び出すけれども、ボールが曲がり始めるポイントを正確にイメージ出来るためには相当の熟練を要する。

丸ちゃんの方法は単純明快に思われるだろうが、その実、それを使える段階に達するためには極めて高度な技術を要する話である。逆に、最も非科学的で簡単な方法は、サム・スニードの方法であるが、行き着くところは同じような気がしている。

スニードは右に曲げたいときには「右に曲がれ」と念じ、左にドローさせたければ「左に曲がれ」と念じたそうだ。これはある意味科学的にも説明できる。高速道路で右の景色を見れば、車は必ず右によれる。

ゴルファーがレッスンプロの言葉を信じて頭を残し過ぎるスイングを身につけている場合は別だが、初心者のスイングであれば、インパクトと同時に目標の左を見れば、ボールは自然に左にドローしていくし、右を見れば右に飛んでいく。これは人間工学的事実である。(ちなみに、後ろを向いたらドローする。前を向いたら、つまりヘッドアップしたらスライスする。)

テニスの初心者がホームランしているのを見て、私はそっちを向いているからホームランするのだと助言する。ボールを打つのと同時にネットの白帯を見つめろと言うと、ボールはホームランしない。それと同じだ。

スニードのスイングはまさに自然な、初心者風のスイングだったから、彼が言った言葉は嘘でも冗談でもなかったはずだ。まさに高速道路の事実に等しい。

私はボールを曲げないけれども、どうやって曲げるか、その方法は知っている。方法は一つではなく、沢山ある。その多くは人間工学的な方法であるが、心理学的な方法もある。しかしそれよりももっと革命的な方法がある。

誰もがボールを曲げるためにいつもと全く別のスイングを用意しようとはしない。スイングを大きく変えようとはしない。どこまでも自分の、一つのスイングにこだわる。それは正しいだろうかと考えてみた。

丸ちゃんの方法も変えるのは一応フェイスの向きだけである。スニードも気持ちを変えるだけだ。しかし、ゴルファーは過去に沢山のスイングを経験してきたはずで、その中から今のスイングを使ってゴルフをしている。ということは、過去のスイングの中に、スライスが出るスイングもあれば、ドローしかしないスイングもあっただろう。

そういう過去のスイングを使ってはいけないという法律はない。歌まねタレントは歌手として成功はしなかったが、歌手よりも歌はうまい、と思えるような人は少なくない。歌まねタレントは何人もの歌手のマネが出来る。

パッチワークという芸術さえ存在するのだから、どうしてもボールを曲げなければならない場面にたまたま出会ったときには、かつて十分に練習してもなおスライスに悩み続けたスイングとか、逆にどうしてもドローから逃れきれずに断念したスイングを、それで使ってどこが悪い。

物は考えようである。丸ちゃんがこの話を聞いても、まず文句は言わないだろうと思う。彼はゴルフを良く知っているから。

ちなみに私の方法は、と言うと、もしもやりたいと思えばの話だが、スライスには初心者の打法を使い、ドローには上級者の打法を使う。馬鹿馬鹿しい話だが本当だ。初心者はスライスする。バックスイングが浅く、それで飛ばそうとするからヘッドアップする。誰もが一度は初心者だったのだから、この方法は誰でも使える。

上級者になるとドローが出始める。十分なバックスイングでしかも打ち急がないからヘッドアップしない。それでドローが出る。あなたが上級者なら、これでドローを打っているだろうから、ボールは曲げられる。特別な手は使わない。実際問題なのは曲がらないボールを打つ技術を見つけることである。そりゃそうだ。筆者

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