« 0173 左利き右打ちの有利 | トップページ | 0175 ラウンドレッスン1 »

何の話かわからないかも知れないが、ヘッドは暴れるのである。最近のドライヴァーのようにライ角が大きくなればなるだけ、ヘッドは暴れまくる。暴れるヘッドがうまく作用するとボールは思いがけないほど飛ぶ。

それを楽しみにするゴルファーと、それを売りにするメーカーとが作り上げたのが今のゴルフ界である。しかし、ティーグラウンドに立ってドライヴァーのヘッドをじっと見つめると、ヘッドは私に問いかける。「暴れましょうか?」 

私はヘッドの先端(つま先)部分にシャフトを差し込んだパターを持っていた。アイアンにも同じようにヘッドの先端にシャフトを差したものがあったが、フェイスがボールを打ったあとにシャフトに当たる可能性があるし、ヘッドのキックが飛距離に対して有効でないため一般化しなかった。

試してみたければ左利き用のパターを買ってシャフトをぐっとこちら側に曲げれば、同じパターは作れる。この手のクラブを使ってみるとヘッドの暴れ方が実感できる。ドライヴァーのヘッドを180度回して逆さにし、それで素振りをするとヘッドが暴れる感じが見える。その感じでボールを打てればドローするとわかるゴルファーは熟練している。

ヘッドの先端にシャフトが刺さっているドライヴァーを使うと、スライサーが打てばホックし、上手なゴルファーが打つとスライスが出る。当然の話だ。私はヘッドの声に答えて「暴れないで欲しいんですが」とささやいた。

「わかりました。どの手を使うんですか?」
「わかりません」

「デイヴィス・ラヴで行きますか?」
「どういう意味でしょうか」

「バックスイングでフェイスを自然に開いて行けば、ダウンスイングで私に無理なトルクは発生しません。正確に打とうとして無理にシャットフェイスでバックスイングすると、ダウンスイングで私は急激なトルク上昇のために目が回るほど振り回されます。それで真っ直ぐボールをたたく自信はありません。」

「けれども開いたヘッドをうまく元に戻すにはタイミングが微妙です。うまくできるかどうか心配です。」

「アップライトに振るほど私にかかるトルクは増大し、首が折れるような気がするのです。ですから出来るだけ私の首が痛まないように工夫してください。」

つまり、アップライトに振るほどバックスイングでフェイスを大きく開く必要がある。これは手首のメカニズムから来る必然で、ある意味気分的な事実と言ってもいい。逆に言えば、奇跡を祈って飛距離を出したいならば、アップライトのバックスイングにシャットフェイスがふさわしい。

ラケットを握ってもゴルフクラブを握っても、道具は腕と真っ直ぐにはならない。道具が上に来ればスライスし、下に来ればドローする。剣道の竹刀も自然に握れば先が上に立つ。忍者のように逆手に握ればドローする。

ゴルファーがどうやってドローとスライスを打ち分けるか知らないが、私は右に行きたくないとき、スイングプレーンの下側でクラブヘッドを動かす。グリップした手の位置が作る軌跡がプレーンだとすれば、クラブは潜水艦のように海面下を進む。常にクラブヘッドが垂れ下がったような姿勢でクラブを振るのである。

左に打ちたくないときは、潜水艦(ドライヴァー)は水面に浮上して航行する。もっとはっきり右に打ちたいときにはプレーンをややアップライトにするだけだ。私の場合はこれだけでスライスが出る。無論同じように打ってドローも打てるが、加減できないのでやらない。

野球のバットは暴れない。バットと同じようにクラブを振ったのでは話にならない、わけだ。ゴルフクラブはバットの打球面にバスケットボールを貼り付けたものと似ている。そういうイメージを持てれば、実に扱いにくいものだと認識できる。

そこで初めてどうやって打とうか、振ろうかと考えるのである。何しろバスケットボールがくっついているからバランスが悪い。下手に振り回すと猛烈なねじれが起こって手首を痛めそうだ。このバットを暴れさせずに使い、うまく振る方法を考えるのは、ドライヴァーの振り方を考えるのと同じだ。

ここまでの話はトルクに関する暴れだったが、もう一つヘッドが暴れる要素はシャフトのしなりである。素早くバックスイングすると、一瞬シャフトは逆「く」の字にしなる。シャフトを逆にしならせたままトップで切り返すと、ヘッドは最大に暴れる。バスフィッシャーが釣り竿のしなりだけでルアーを遠くへ飛ばすのと同じ動作である。

ところが海釣りの竿はとても重いので、釣り人はまず竿を十分引いたところでセットし、そこから前へ投げるだけの動作でおもりを飛ばす。竿はしなって戻る。わざわざ異常にヘッドの重いドライヴァーを作ってみたのは、それで何が起こるか試したかったからだが、予想通りボールは真っ直ぐに飛ぶ。

重いクラブはゆっくり振るしかないので、素早いバックスイングになれない。バックスイングはまるでスローモーションのようになる。シャフトは逆「く」の字にしならない。飛距離は落ちるかも知れないが、抜群の安定度でボールはラウンド中ずっと同じ飛び方を続ける。夢はないが、心配もない。

口元まで水を入れたコップを運ぶとき、加速が大きければ水がこぼれる。だんだん速く動かしていけば水はこぼれない。ドライヴァーをバックスイングするときに、ドライヴァーヘッドを水の一杯入ったコップと同じに扱えば、ヘッドの暴れは小さくできる。実際、このバックスイングの速さを微妙に変えるだけでボールの飛ぶ方向や球質は激変する。

いつもと同じに振ったつもりがひどいドローやスライスになる原因が、バックスイングのペースにあることを知っているゴルファーは少ない。せいぜいバックスイングの方向や角度を検証するだけだ。

ヘッドは暴れる。どうすれば暴れないか、またどうすれば暴れさせられるか、それを知らないでドライヴァーを振るのは無謀としか言いようがない愚行である。 筆者

« 0173 左利き右打ちの有利 | トップページ | 0175 ラウンドレッスン1 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 0173 左利き右打ちの有利 | トップページ | 0175 ラウンドレッスン1 »