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スライスをとめる話はあちらこちらで書いた。基本的なスライスは野球のバッティングフォームからやってくる。バットを肩に担いだときの腕や手首の形は、両腕で棒をつかんでこれから何かをひっぱたこうとする人間の人間工学的基本であり、自然そのものである。

ここからフルスイングするとスライスが出る。全ての初心者ゴルファーはこの手でスライスを打つ。バットの代わりに羽子板を振ってみれば、インパクトで羽子板の面は垂直にならず、幾らか上を向く。フルスイングではなかなか元へは戻らない。ゴルフスイングでは羽子板が上を向く分だけ右を向くのでスライスになる。

ところが歴代のホームランバッターはこの手でドローを打つ。バットでホウムベイスをコンコンとたたいて握りをしっかりさせる、のかどうかは知らないが、その仕草をしたとき、バットの刻印が真上を向いていればスイングでボールを打った瞬間、刻印はやはり真上にいる。

これは天才的なスラッガーは一様にフルスイングしてもなおインパクトで手首の形を元に戻す才能を備えているということだ。それは手首が返ったと同時のできごとである。例外は張本と長島(古い話だが)、この二人は手首を返さずにホウムランが打てた。ゴルフで言えばフェード打ちのプロゴルファーと同じだ。

フェードは飛距離は出ないが安定したボールを打てる。張本の緻密で繊細な神経と怪力が手首を返さないフェード型のホウムランを打たせ、長島の天才もまたフェード型のホウムランを打てた。タイガーもスラッガーだからバックスクリーンへホウムランを打つタイプだが、どちらかというと手首が返ってレフトにホウムランを打ちやすい。

彼が意識的にスライスを打つのを見ると、手首を返さないようにかなり無理なフォームで打っている。それはアーノルド・パーマーのスイングフィニッシュを思い出させる。アーニーは打った後に返ってしまった手首を戻そうとタコ踊りのようにクラブを動かす。

手首を返すのがスイングの自然だが、慣れるのに手間がかかる。手首を返さなければスライスしか出ないのがこの話の筋書きであり、そこで登場するのが名手ポール・エイジンガーとリー・トレビノで、なるほどああやって打てば確かにプッシュアウトのスライスになる。

(アンディ・ビーンだったか、昔のことで記憶は定かではないが、初心者のスライスよりももっとひどいスライスボールでアメリカのプロツアーをプレーしていたプロがいた。最近ではババがフェアウェイセンターから40度も右を狙ってスライスを打つ。ババは左利き)

ところが私は手首を返さないでドローを打つタイプなのでスライスを打つのにこの手は使えない。ニクラウス流にフェイスを開いたセットアップで打てばいいかというと、残念ながらそう単純な話では済まない。フェイスを開けばヘッドのトルクが変わり、動きが変わる。

計算通りの効果を出すにはかなりの計算量を必要とするし、元々スイングがややインサイドアウトなので、フェイスを開いて普通に打てば、右に真っ直ぐ飛び出す。

スライスするかどうかはフェイスの開き具合次第だが、プッシュアウト分を考慮するとかなり左向きにスタンスを取らねばならなくなる。そういうのは怖い。左の池に向かって真っ直ぐ打つつもりになるのは容易でない。せめてフェアウェイの左ギリギリくらいを狙って打ちたい。プッシュアウト分がじゃまだ。

私にはもう一つスライスを打つ方法がある。それは前に書いたアイロン打法である。地面にアイロンを掛けるようにドライヴァーヘッドを動かす。ドライヴァーヘッドが大きくなってますます気分が出やすいこのバックスイングから打つと、スライスもドローも自由自在に打てる。

ちょっと老人臭い打ち方だが、スイング中のヘッドの向きが手に取るようにわかるのでスライスを打ちたければ手を先に回しヘッドを遅らせればいい。この仕掛けそのものはアップライトと同じだが、アップライトではヘッドのトルクが複雑に作用するので、たとえばヘッドを遅らせるとフェイスが下向きになったりもして、寄生的でかなりクリチカルな問題が沢山発生する。

アイロン打法でスライスを打つときの問題はアップライトスイングほどには力が入らないことと、スイングが職人技のようになっていてメカニカルなものではないという点だ。それでは形式を文書化することも詳細なメンテナンス方法を記録して公開することも出来ない。そこが問題だ。

アイロン打法のついでに書いておくが、世の中にはアイアンとウッドを比べた場合に、ウッドの方が打ちやすいと言うゴルファーがいる。その原因の根本にあるのはヘッドのバランスや全体の重さではなく、実はウッドのソールの広さである。

アイアンはソールが意識できないほど小さく、ほとんどフェイスだけを意識させられるクラブだが、ウッドのソールはフェイスよりも広い。アイロン掛けはシャツや服の上にアイロンの面を滑らせる。面が傾けばきれいに仕上がらない。

ウッドの方がいいショットが出やすいと言うゴルファーはウッドのスイングを作る上で知らず知らずにソールの向きをイメージしてスイングを作っている。フェイスの向きを気にしないわけはないが、気持ちのどこかでソールという広い面の動きを追っている。これはアイロン掛けに似ている。

スイング中にクラブフェイスの向きは立体幾何で考えれば相当に激しく変わるが、ウッドのソールの向きの変化はそれに比べれば穏やかである。その分フェイスの向きよりも取り扱いが楽だ。ほとんど無意識に、ゴルファーはそれを見ている。感じている。

もしもハンマー投げのハンマーが鉄の板状のものだったら、丸い鉄の球を投げるのに比べれば桁違いの神経を使わねばならない。アイアンが苦手なゴルファーはそういう落とし穴に落ち込んでいる。円運動を忘れさせるほど複雑に変化するアイアンフェイスの面の向きに比べると、ウッドの広いソールはほぼ円運動に対応して動いている。

スライスを打つために、普段と同じスイングでフェイスを開いておく方法にはヘッドのトルクという問題がある。手首を返さない方法は私のスイングでは使えない。アイロン打法は距離が出ない職人芸で、命がけの勝負には使えない。もっとも私にはゴルフに命を懸ける必要などないのだけれど。 筆者

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