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フェイスを開いて構える、という話は幾つも書いた。実戦でそうやって打ったことはないし、そんな勇気もない。しかしフェイスを開きたい衝動は、本人がそれを忘れた頃に必ず、どこからともなく帰ってくる。

やったことはないが、たとえフェイスを開いて打ってもボールは真っ直ぐに飛ぶ。やったことがないのに断言するのは私流でないと思うだろうが、正確に言えばフェイスを開いて打つのではなく、フェイスを開いて構えてから打つのであって、打つときに開いているわけではないから、これでいいのだ。

フェイスを開こうが閉じようが、フェイスはスクエアになって戻ってくる。普通のゴルファーがやってみるとどうなるか、その結果は必ずしも一つではないが、私の場合はボールは真っ直ぐに飛ぶ。

以前岸辺シローさんのような顔をしたゴルフおじさんがテレビに出てきて、フェアウェイウッドのフェイスを開いて構えるとドローすると言ったが、なぜかは説明してくれなかった。

私も同じことを言いたいが、説明する前に調べなければならない。物理的なことは調べやすいが、ゴルファーの心理的な作用が含まれるものは調べるのが大変で、なかなか簡単には行かない。

何でも言いたい放題に言っているように見えるだろうが、私は調べ尽くしていないこと、論理的に証明できていないことは言わない。そこが、宗教と科学の違いだと思っているから。ゴルフおじさんは信仰だが「ゴルファーに愛を!」は科学である。

フェイスを真っ直ぐ目標に向けてさえどこへ飛ぶかわからないのに、開いて打つという方法を採れば、何度開くかという問題が起こり、それは真っ直ぐよりはるかにやっかいなことになる。

そもそも15度開いて構えたクラブヘッドがなぜオーヴァーシュートを起こしてピタリと真正面になるのか、その理屈を調べ尽くさない限り、自信を持って使うわけに行かない。それでもなお、この15度の意味は決して小さくないと、そう思っている。

アイアンを15度ほど開いて構えると、ヘッドのトルクはほぼ消え去る。バックスイングに、クラブの重量以外のストレスがなくなるのだ。どんな怪力ゴルファーでも、トルクによるストレスをゼロには出来ない。

怪力だということは普段のプレーでは非常に有利だろうが、ここ一番のショット、それもパワーを必要としないデリケイトなショットの時、悲劇が訪れる。プロの劇的なミスショットの多くはドローである。そこには普段ヘッドのトルクを無視出来るだけ十分なパワーを持っているプロだからこそ陥(おちい)るワナがあるのだ。

前に書いてあるように、たとえばろうそく立て、燭台というのあるが、あれをつかんで持っていると、危ない。もしもその取っ手の部分が円筒形で、しかも滑り止めのないツルツルで、さらに手に油でも付いていたらどうなるか。

怪力ならば何とか支持できるかも知れないが、普通ならばろうそくは逆さまになって落ちる。ゴルフクラブも燭台と同じ構造で出来ている。私がスワンネックを作るのも、幾らかでもクラブのねじれトルクを軽減したいがためだ。

アイアンのヘッドを90度右に開けばトルクがなくなると思うだろう。しかしそれでは逆方向のトルクが発生する。15度という角度は経験的に絶妙の角度で、グリップの仕方と、各自のバックスイングの加速度にもよるが、30度を限度としてそれ以上開くとバックスイングの方向に対して逆トルクが発生する。

吹き流しや鯉のぼりがなびくのと全く同じことで、バックスイングの方向に平行にヘッドがなびいている限り、それは無論逆方向だけれども、ストレスは起こらない。ただスイングのスタート時だけは特別だ。これは止まっているものが動き出す初動時特有の物理が働くからに他ならない。

私は思うのだけれども、ゴルフクラブが今の形を続ける限り、ゴルフスイングというのはストレスとの戦いであり、ホームランを打つための技術的研鑽(けんさん)とは異質のものである。

しかしフェイスを15度開いて振り回せばストレスは少なくなるが、それもまた異常だろう。スワンネックにすればストレスからは解放されるけれど、飛距離というゴルフの2大要素の一方に問題が起こる。

つまり、ゴルフは野球やテニスのスイングと違って、力学的に不自然な道具を使うことによって歪んでいる。しかし飛距離というのはゴルフにとって重大な要素であり、そのために現在のクラブは力学的に適当だと言わざるを得なくなる。

野球だってもっと飛ばしたければバットに工夫は出来るが、それではピッチャーの投げるボールを打つことが出来そうもない。ボールが止まっているということによって、ゴルフクラブは異常な進化を遂げた、そういうことだ。

遠い将来、プロのゴルフはパワーヒッターがスワンネック指向のクラブを使い、非力なゴルファーが現行の飛距離に特化したゴルフクラブのヘッドを開いて構えるスイングを使い出す。

今はまだヘッドを開いてアドレスするなどという非道を考えるプロはいないが、ゴルフスイングが根本的にストレスを持っているものだということが明らかになれば、飛距離の有利と、ショットが元来持っている曖昧さのさじ加減を考慮した場合、ヘッドを開いて構えることの価値はゴルファーが今思っている以上に評価されるようになるだろう。

そうなるとゴルフ雑誌では毎号「クラブフェイスは何度開くべきか」というような話題が取り上げられる。

SF的に言えば、透明のヘッドアッセンブリが作られ、15度だけ開いた本当のヘッドの前にその透明のフェイスを取り付け、そのフェイスに合わせてアドレスして打つと、その透明のフェイスは空(ヌル)で、幻影であり、実際にボールを打つことが出来ず、ボールはそれを透き通って本当のヘッドに当たり、ボールが飛ぶ。

あなたは今、これを不可能で不自然な話だと思うかも知れないが、野球のバットに工学的な不自然はないが、ゴルフクラブには不自然がある。それを補正することは、不自然ではない。ルールがどうなるかだけが問題になる。

今ゴルファーがやっているそのスイングこそ、実はクラブの歪みを歪みと気付かないばかりに、無理矢理自分が悪いのだと、そう決めつけてがんばっている、そういうスイングなのだ。

ここまでわかってしまえば、たとえSFの日まで待てないゴルファーも、要はクラブの歪みを考慮して自分のスイングを作ればいい、ということがわかる。プロは正しいスイングを持っているが、なぜ正しいかは知らない。

プロがいつか、自分が思っている正しいスイングというものは、実は道具の歪みをごまかす、あるいは正しく補正出来るスイングに他ならない、と気づけば、いいスイングという意味がはっきりするし、習う者を悩ませることはなくなる。

野球などのスイングには道具による歪みがないから、いいスイングは物理学的にも人間工学的にもストレートに人の心に受け入れられるが、ゴルフスイングはそうではない。

ラグビーボールは投げるためにデザインされたので、地面を転がると不規則で始末に負えなくなる。そこがまたいいところなのだが、ゴルフクラブの場合、ハッキリとクラブの歪みを認識することが出来ない。

道具の性質を理解し、その歪みをいかに補正するか、その方法こそが、それぞれのゴルフ理論の主張なのである。そこがゴルフレッスン書がバッティングのレッスン書の千倍も売れる理由になっている。プロはこの事実を知らない。

私は狂っていると、あなたは思うか。しかし私はまだ人生で一度しか狂ったことがない。ボロは着てても心の錦、フーテンの虎さんの如くここまで生き延びてこられたのは、私が間違わなかったからだ。もっとも、間違ったから虎さんになった、とも言えるけれど。

ゴルフスイングはクラブヘッドを開いて閉じる経過である。15度あらかじめ開いておけば、その分閉じるのが早くなるのは当たり前だ。ゴルフおじさんはそれを言っているのだが、知らないで言っている。筆者

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