« 0474  前向きパットの思わぬ利点(パターヘッドの重さの限界について) | トップページ | 0475  絶対音階の「ド」とパッティング »

立てかけてある物干し竿を持ち上げるのは片手でも出来るが、地面に水平に置いてある物干し竿の端(はし)をつかんで持ち上げるのは容易ではない。ヴェクトルの内積ゼロで竿の質量だけが残るわけだ。

横向きパットはパターヘッドをさほど重く出来ないが前向きはパターをつり下げるだけだからかなり重くできる。ヘッドが重いと何が起こるか。私はこの話が好きだ。現代が嫌いだからだ。現代の製品はすべからく軽く作られる。まるでそれが正義のように。省エネには軽いことが欠かせないと言うが、それは元々異常な消費生活を続けたアメリカのツケを世界中が肩代わりして払っているに過ぎない。

昔の車のドアは重かった。ジャギュアのドアは自然に閉まった。開いたままのドアを放っておけばドアの重さで少しずつ閉じていき、最後はカチッと閉まる。半ドアにはならない。それは綿密に計算された技術に他ならない。それを現代は電動で閉める。それこそエネルギーの無駄使いだ。

何十年か前のある時期、私は車のドアをうまく閉められなくて困った。閉めたつもりが半ドアになっていることがしばしばだった。それはドアが軽くなって普通に押したのでは半ドアになってしまい、かなり乱暴に強く閉めないと閉まらなくなったのだ。何事かと思うほどの乱暴な音がした。あのころから世の中がおかしくなった。

特別な感性を持っていない限り、あるいはそういう才能を使ってパットをするゴルファーを除いてヘッドは重い方がいい。パターに限らない。ヘッドが普通の3倍の600グラムあるドライヴァーを普通のスピードで振れるなら、500ヤードをワンオンする。

それよりもっと、パターには重いヘッドが有効である。振り子は重いほど安定する。現代の技術はその重い振り子を捨てなければならなくなり、今では原子とか水晶片が揺(ゆ)らされている。子供達にとっては実に夢のないつまらない世の中だ。

遮音という技術は今でも重さが利(き)いてくる貴重な化石である。重いカーテンとか厚みのある壁のような原始的な原理を越える技術はまだ生まれていない。そこがうれしい。今はフライホイールの威力に感動する子供はいなくなったが、安定した回転力には欠かせないものだった。
レコードプレーヤーは初めリムというゴムのタイヤを回し、その回転をターンテーブルに伝えたがモーターの振動が針に伝わってわずかにゴロゴロという音がした。そこで次にはゴムベルトをターンテーブルに回して動力を伝えた。

最後には静かなモーターが開発されて直接回したがモーターの重さよりもターンテーブルの重さがすごかった。そのテーブルの重さがレコードプレーヤーの価格を決めた。どんなに精巧なフィードバックループを作っても、重さを持ったものを安定して動かすには重さで対処するしかなかった。

パターヘッドが重くなると小細工が利かなくなる。ボールを打つ瞬間に、頭の中に残っていた迷いが手に吹き出してちょっと強く打とうとしたりちょっと右へ打とうとしたりする。それで大きなミスが出る。それ以前に滑らかにいつも通りパターを引くことは至難の業だ。

ヘッドが重いとそういう微妙なことは起こりにくくなる。初めに計画した通りにバックスイング出来るし、フォワードスイングではバックスイングで貯めた力が優勢になる。それ以上のこともそれ以下のことも起こらない。箸(はし)のように軽いパターを使えばちょっとした体や手の動きでフェイスの向きはすぐに変わってしまうが、重いヘッドのパターはゆったりと動く。

ゴルフスイングではヘッドの重さで打てということがよく言われる。パットでもそういう話は通用しているが、本当に振り子式で打っているゴルファーは皆無だ。そんなことをしたら誰もカップまで届かない。ショットでも同じだ。私はアイアンもウッドも確かにヘッドの重さで打ってはいるが振り子とは違う。

ヘッドの重さを感じながら打つだけで決して振り子のようではない。振り子はバックスイングで作った位置エネルギーだけで打つが、パターをそうやって使うにはヘッドの重さもバックスイングの量も今よりかなり大きくなければならない。

実際パターのグリップエンドを左手の指二本で支え、右手でシャフトを引っ張ってバックスイングしてから右手を離せば振り子になるが、ボールはほとんど転がらない。ヘッドがボールの重さにはじき返される量を体験できるだけだ。つまりゴルファーは腕の力でパターを振っている。だからパターの動きが乱れる。

600グラムのドライヴァーは振れないが、限界2キログラムまでのパターは前向きパッティングなら振れる。私は1200グラムを試作した。非常に重いパターだが、パットするのに何の苦痛も不自由もない。ただバッグから取り出したり持ち運ぶ際に不注意に普通のパターと思い込んで扱うと手首を痛める。骨折するかも知れない。 筆者

« 0474  前向きパットの思わぬ利点(パターヘッドの重さの限界について) | トップページ | 0475  絶対音階の「ド」とパッティング »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 0474  前向きパットの思わぬ利点(パターヘッドの重さの限界について) | トップページ | 0475  絶対音階の「ド」とパッティング »