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0556 振動止め付きシャフト
テニスの方のタイトルに「振動止めは不思議なアイテムだった」というのがある。「だった」と過去形にしているが、実際には今でも一般のプレーヤーが使っている。プロははじめから使わない。真芯で打てば必要はないということかも知れない。
ラケットの面にはガットという名前の糸が張ってある。その一番ネックに近い部分に細い消しゴムのようなものを取り付ける。形状はいろいろだが、ようするに棒状のゴムをガットの縫い目に交互にくねくねと曲げて引っ掛けながら取り付ける。そうするとガットの振動がゴムによって吸収され、振動が少なくなって肘や手首を痛めない、と言うのだ。
私はレッスンの時に生徒が振動止めを付けていたら出来るだけ外してもらう。なぜかと言うと、ボールを打ったときの感触がわからなくなるからだ。寿司屋で箸を使って寿司を食べるのに似ている。箸を使わないにしても、手袋をして握り寿司をつかむような違和感がある。
ボールを打ったときに感触があれば、いい感触と悪い感触を見分けられる。そのおかげで無意識のうちに、いい感触の時の打ち方で打てる確率が自然に増えていく。
上手になっていく段階でこんな大事なものを捨てる手はない。だから私はレッスン中は振動止めを使わないようにと生徒に頼む。振動止めが腕の関節に優しいかどうかは知らないが、全く無意味ではないだろう。
だから十分上手になって、もうこれ以上スイング自体には進化がないという上級者は振動止めを使えばいい。テニスの振動止めという発想はゴルフシャフトにも生まれた。最近キャディバッグからクラブを抜き出そうとしたときにシャフトがポキンと折れたのを機会にシャフトを交換しようと、シャフトを探した。
センシコアという特別なシャフトが、思いの外不人気だということで在庫一掃の大安売りで何本も頂くことが出来た。このシャフトには振動止めが入っている。シャフトの内側にコルクが張り付けられているそうだ。
なるほどそれならコルクがシャフトの細かい振動を吸収するだろう。ところが、Xという最も硬いはずのシャフトなのにかなり柔らかくて、一度取り付けたが断念して外した。コルク分の重さを相殺するためにスチールの厚さに限界があったのだと思う。
貧乏な私は何とかそのシャフトを使わなければならないので、先の細い部分をカットし、いろいろ変わった方法で太い部分をヘッドに取り付け、シャフトが短くなった分、別のシャフトを切ってグリップエンド側から差し込み、全長を伸ばし、かつ硬さを作り出した。
それでクラブはかなり重くなったが、元々重いシャフトを探していたので好都合だった。伝家の宝刀バッフィーは390グラムほどだが、この方法で他のフェアウェイウッドをすべて10グラム以内に統一出来た。
まだ打っていないからわからないが、コルクを使った振動止めはかなり効果があると思われる。評判がよくないということだが、それは日本人ゴルファーのアホさ加減が関係しているからではないか。
テニスの振動止めと同じ理屈だから、普通ならプロは使わず、コーチはレッスン中にだけ外してもらい、一般のプレーヤーは常に使う、というのが自然なのだろうが、日本のゴルファーはそうならない。
上手なゴルファーが振動止めを使っても何ら問題はない。体に優しいだけ得をする。ただまだ初心者の域を出ないゴルファーで、もっとうまくなりたいと思うゴルファーは使わない方がいい。それだけの話なのだが、下手くそなのにうまいと思っている馬鹿ゴルファーが生意気なことを言う。
振動止め付きのシャフトはたぶん打球感がない。私がテニスのレッスンで振動止めを外してもらう理由もそこにある。まだ上手ではない生徒に早く上手になってもらいたいから、レッスン中だけ振動止めを外してもらう。
しかし打球感のあるなしがわかるゴルファーはかなり上手なゴルファーに限られる。そこまで上手なゴルファーは振動止め付きのシャフトが悪いとは決して言わない。レッスンプロが生徒にお願いするような場合以外、悪くないことがわかっているからだ。
自分が使うクラブのシャフトに振動止めが付いていようがいまいが、すでに相当にうまくなってしまったからにはどうにでもコントロールできることだし、どちらにも意味があることを知っているはずだ。付いていれば腕の関節に優しく、楽にゴルフが出来る。付いていなければショットの出来不出来がわかりやすい。
本当の上級者にとって、それはどちらのシャフトがいいか悪いかという話ではない。振動止めを使っていてちょっとショットの具合が悪くなったと思ったら、振動止めのないクラブでちょっと調整してみる、程度の話だ。
それを打球感が悪いから使わないと言うのは、格好を付けているのか、それともまだ上達途上なのか、二つに一つだ。プロだって、センシコアのような振動止め付きのシャフトが思い通りの硬さを実現できれば、使うだろう。
関節の劣化はプロにとって死活問題だから、振動で選手寿命を縮めるか、それとも完成されたスイングを永らく使って選手寿命を延ばすか、考えどころなのだが、たぶん、残念ながら振動止め付きのシャフトはまだプロが使うのに十分なシャフトの硬さ、トルクが出せないのだろう。
ある時期、テニスのプロの90パーセント以上がプリンスのデカラケを使っていた。契約などの経済的な理由もあっただろうが、デカラケは打ちやすかったし腕にも優しかった。ただ、繊細な感触がなかった。それでトップ3のプロだけがデカラケを使わないという期間が15年近く続いた。
ということは、振動止め付きのシャフトが、ランキングベスト3にいるトッププロゴルファー以外のほとんどのプロたちに使われる日が来たとしても不思議ではない。問題は打球感ではなく、硬さだ。そもそも打球感が悪いからスコアが悪いということはない。
それは単に趣味の問題であり、ウッドのヘッドを塗り替えて喜ぶレヴェルに過ぎない。ツルーテンパーの肩を持つわけではないが、日本のゴルファーはおかしい。私はツルーテンパーの技術者たちの努力、発想、そして勇気に敬意を表する。 筆者

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