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0389 チタンヘッドの軽さと戦う
「重いドライヴァーの効用」というタイトルを書いたが、ウッドが柿の木から鉄に変わったときも、チタンに変わったときも、ゴルファーはただ軽くなって楽だと思っただろうが、プロはそうでもなかった、はずだ。
プロの場合、それまでよりももっと軽いものが開発されて困惑することもある。プロだから用具の契約がある。無論軽い方がスイングは速くなるのだが、慣れ親しんだ感覚を捨てて新しいフォームを作らなければならない。
スイングを調整する手間と、クラブが軽くなったことによる飛距離の可能性をはかりにかけた場合、飛距離が足りないプロは喜んで使いこなすだろうが、飛ぶプロゴルファーにとって大した利益はない。
チタンは軽い。クラブの軽さを追求した、たぶん限界の軽さになっているだろう。そこまで来ると、人間の体というか体力というか、クラブを振り回す方の物体の性能に対して、どの程度の重さが最適なのか、そういう話になってくる。
私の伝家の宝刀とも言うべきバッフィーは現在395グラムある。最近チタンヘッドのスプーンにシャフトを差してゴルフ場へ持ち込んだ。打った瞬間、ボールは左へスッ飛んだ。吹っ飛んだとも言う。これでその日のゴルフは終わった。
帰宅して計測してみると349グラムしかなかった。シャフトの長さはバッフィーより2インチ半長い。バランスは変わらないから軽さを気にしなかった。さてそこで問題は、このスプーンを重くするべきかどうかだ。
以前から書いているとおり、ボールの重さは変わらないからクラブの重さには実用上限界がある。技術がそこまで行かない間は楽しい時間だったが、チタンヘッドによってこれ以上軽くする意味がなくなるところへ行き着いてしまった。
もっと軽いものは作れるかも知れないし、ゴルファーによっては今までより飛距離が出るかも知れない。しかし人間の感覚には限度がある。指先に1円玉を乗せたとき、私たちはその1グラムの重さを感じるのではなく、ものが指の上に乗っていることだけ感じている。0.1グラムならなおさらだ。
クラブが軽くなるほど、ゴルファーには高い感度が要求される。感度がコントロールで重さが飛距離だとすれば、どこかで最良のスコアが出せるポイントがある。ゴルファーとゴルフ道具はそのポイント探しの次元に入っている。
科学の進歩ももう果てに近づいている。それを応用する技術はまだこの先ずっと進化すると思うが、理論科学は検証作業待ちの理論であふれている。しかし実験で検証可能なものがあっても、技術開発を待たねばならない。
机上の空論と言うけれど、理論が理論を証明するしか他に方法がない状況になってきた。物理学に果てがあるということは、ルールの範囲内ではゴルファーの飛距離にも果てがあるのと同じで当たり前だが、応用物理の世界に果てはない。軽さの果てのその先には真っ直ぐ飛ばす道具の技術開発が待っている。
これには遺伝子組み替えやクローンと同様、倫理観の問題が入ってくる。誰が打っても真っ直ぐ飛ぶクラブはいずれ規制されるが、作るのは自由だし、規制は常に後手に回るのだから早い者勝ちということになる。
何だか科学の先に宗教が待っているような、怪しいことにならないよう、十分注意して歩かなければならない。
重いものの効果というのがある。他に代え難いか、あるいは代えるためには相当の技術をつぎ込まなければならないようなことがある。たとえば重いカーテンは遮音効果が大きい。別のもので代替するのは案外簡単ではない。
フォークリフトはほとんどおもりで出来ている。重くなければ荷を持ち上げられない。安定した回転を得るためにはフライホイールが使われている。これを軽いもので代替するには回転制御と外界からの振動制御の両方を必要とするから大変だ。
もっと簡単にはデスクの上の電気スタンド、これにはおもりが入っている。ないと倒れる。風に強いスイングの元はゴルファーの体重である。これに代われるほどの筋力を付けるのは簡単でない。
軽すぎる万年筆は書きにくいことがある。万年筆はキャップをお尻に差して使うように設計されているが、それと知らずにキャップをわきに置いて書くと、軽いからいいと感じることもあるが、ペン先がバランスを失ってその動きに安定感がない。
毛筆の筆は先の毛に墨を含ませて書くのだから柄は短くていいかというと、それは使いにくいだろうし、お箸もコンヴィニのお弁当などでは極力短く作るけれど、あれはとても使いにくい。ところが同じ短さでも重さが十分にあれば使いやすくなる。
このへんがクラブの全重量とクラブバランスの相互関係になっている。349グラムのチタン製スプーンのヘッドにおもりを付けて395グラムにするとバランスが変わるから、おもりを付けるならシャフトの中央あたりに付けるしかない。
ヘッドにおもりを付けるゴルファーは多いが、余程の事情がない限りおもりはもっとグリップ寄りに付けるものだ。つまりおもりはバランスを変えるのが目的ではなく、全重を幾らか増したいときに使う。
軽いクラブを求めていながらわざわざクラブを重くするのも妙な話だが、ヘッドの先におもりを付けてバランスを変え、ボールの行き先を加減するというのは危ない話で、それよりは全重を重くする方が穏(おだ)やかな効果が期待できる。
ヘッドにおもりを付ければシャフトのしなりが増える。それは柔らかいシャフトに交換しても同じだが、全く同じではない。手間はかかるがシャフトの交換の方が穏やかだ。それにしても、打ちやすいバッフィー395グラムに、スプーンを合わせるべきや否や。筆者

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