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野球のバッティングとゴルフスイングは似て非なるものである。ゴルフスイングをし過ぎたせいで久しぶりにバットを振ろうとしたら何だか妙だ。バッティングフォームを忘れてしまった。テニスをやり過ぎてもゴルフスイングを忘れることはない。つまりバッティングとゴルフスイングは微妙な違いがあって、かつ全く違う。

バッティングフォームでゴルフをするとすごく飛ぶけれどほとんど当たらない。三回に一回ヒットを打てれば首位打者だが、ゴルフは10回に9回ヒットが出せないと話にならない。これがゴルフスイングとバッティングの分かれ道である。

スクエアグリップでバッティングは出来ない。背中にバットを背負ってしまうとグリップがどうなっているかわからなくなるが、ゴルフの構えでわしづかみのスクエアに握ったバットをそのまま背中に背負っても大した違和感はない。

けれどもいざ本気でピッチャーの投げるボールを打つ気になり、バッターボックスにいる気分で構えているとグリップはわずかに絞られて、そのバットを元のゴルフのアドレスの形まで下げてみるとストロンググリップになっていた。ヴァードングリップでは当然バットスイングは出来ない。

ゴルフスイングでは右足かかとがひっくり返るほど上がるが、バッティングではそうならない。私がバッティングフォームを忘れたと言うのも、この右足先の動きがわからなくなったからだ。

イチローという打者のすごさがそこにある。彼のバッティングはゴルフスイングに近い。ホームランを狙って打つときだけ彼は野球のバッティングフォームを見せるが、それ以外はゴルフだ。だから彼が10回に9回ヒットを打っても私は驚かない。ボールがとまっていないことが4割しか打てない理由なのだろう。

バッティングでは右足に体重が残る。右足で踏ん張って打つからだ。タイガーがナイスショットのあとに右足をピュンと後ろに跳ね上げて左足に絡ませる仕草をする。アメリカのプロがみんなまねするのでアホかと思うのだが、野球のバッティングであれは出来ない。

たとえば私自身がバッティングフォームを思い出してそのバッティング型でスイングすれば230ヤードのティーショットが279ヤードを越える、はずだ。ただし滅多に当たらないだろう。飛ばしたいゴルファーはクラブを振る以前にバットの素振りを毎日1000回半年続けるに限る。

ゴルフクラブをいくら振ってもなかなかバッティング型に行き着かないので、バットを振るのがいい。それもゴルフスイングのように振るのではなく水平に振る。手首の返しを感じるには水平に振る方が簡単だ。それで感じがつかめてから、次にゴルフのスイングのような角度で振るといい。

かつてニクラウスはアイアンばかり振っていると飛距離は落ち、ドライヴァーでも正確に打つことばかり練習していると飛距離は落ちる、と言った。飛ばすことだけ考えてスイングしていると飛距離が出てくる。そしてゴルフクラブよりもバットを速く振る練習の方が効果的だ。

バッティング型は飛距離に特化されたスイングだから飛距離はすぐに30パーセント程度伸びるが、その分打率は2割5分がせいぜいで、取りあえずゴルフにならない。それでも総合的に考えれば無意味な話ではない。ただこの話は人生の残り年数の関数である。

やや細かい話
野球選手がホームベイスでバットを左手で握るとき、普通バットのマークを上に向けるらしい。ちなみに昔そのマークは「矢」だったが、今はカップになった。子供の頃それを「矢」だとは思わず麦の穂だと思っていた。ずっと後になってそれはヤバネスポーツの「矢」だとわかった。

もしもマークを上に向けて握った場合、ボールを打つ瞬間、マークはどこを向いているだろうか。スライサーはマークの反対側でボールを打つ。つまりマークは右側横にある。スラッガーがホームランを打つとき、マークはたぶん上を向いているだろう。

バットを寝かせて構える選手がいる。大抵はヒット打ちの名人だがホームランは打たない。この手の野球選手はたぶんスライサー同様マークの反対側でボールを打ったのではないか。

これはゴルフで言えばスクエアスイングに相当する。そのままの形でゴルフスイングだからそういうタイプの選手はきっとゴルフもうまかっただろうと察する。一方ホームランバッターはバットを立てて構える。威圧的にバットの先がベイスに被さるように。

バッティングは本質的にハンドダウンのスイングになっている。バッターボックスで腕とバットの角度は直角に近い。しかし無論ボールをヒットするときには腕とバットはほぼ真っ直ぐになる。ゴルフでもハンドダウンの構えからボールを打つときには真っ直ぐになって打つ。

ハンドダウンというのは構えの話である。だからハンドダウンはいけないとゴルフの先生が言うのは、つまり打つときは腕と道具は真っ直ぐ伸びているのだから、初めから真っ直ぐの方がシンプルだという思想だが、それはむちゃくちゃな話だ。

バットを寝かせて構えるということはゴルフで言えばハンドアップしているわけで、ゴルフで腕とクラブを真っ直ぐにして構えると、ボールは遠くへ飛ばない。ヒットは打ててもホームランは打てない方式だからだ。

だから野球ではバットを寝かせる構えは指導しない。つまりバットは立っている。ゴルフでハンドダウンという形はバットが立っている形と同じだから、ボールは飛ぶ。ゴルフのコーチは飛ばす方法を否定し、野球のコーチは飛ばない方法を否定する。

イチローはその辺の事情をよく知っていて、使い分ける。彼の後ろ足の動きはパワーヒット出来る仕掛けではないが、シングルヒットなら問題ないし一塁セーフになるためには便利だ。

アメリカのプロゴルフでもコントロールショットでは右足のかかとをほとんど上げないで打つプロが多い。上半身に力があるということもあるが、体重移動は飛距離を増し、逆にコントロールを乱す。どういう力を使うべきか、プロたちはそのバランスシートを持って戦っている。

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