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0363  ウッド型アイアン
15年の時を隔てて、今日またウッド型アイアンを作ってしまった。あの頃は打ちやすいアイアンを作りたいと考えながら、スワンネックに行き着くまで、気になるところをどんどんと排除したアイアンを作っていた。
最初にやったのがアイアンの先をカットすることだった。三角定規は二枚で一組になっている。アイアンフェイスはその一方によく似ているが、それをもう一方の形に変える。幽霊のおでこに付いている三角の白い紙のように。
正面から見た場合、アイアンのフェイスはバランスが悪いがウッドはバランスしている。サンダー(ディスクグラインダー)でアイアンの先を斜めにカットしてこの奇妙なアイアンを作ると何が起こるか、やってみればわかる。それはもう、感動ものだ。
ワッグルを知っているだろう。手首でクラブをコキコキと動かすあれだ。先をカットしたアイアンにカットした分のおもりを付けてワッグルしてみると、フェイスの先の戻りが早くなっているのに気付く。つまり初心者でもスライスは出にくい。
先の重さを取ってしまったのだから当たり前だが、こうするとスイングのイメージがウッドに近づく。クラブメーカーは「たらこ」で儲けたと書いたことがあるが、今のハイブイッドも横文字になっただけで内容は変わらないだろう。
私はハイブリッドをよく見たことはないが、どんなハイテクも基本的な物理の法則に逆らうわけには行かない。アイアンフェイスの先をカットする、その威力は計り知れない。だからもしも今のハイブリッドというのがアイアン型のフェイスなら、私は大いに驚く。
しかしそれはあり得ないと思う。それならなぜ今まで作られなかったのかというと、いや、ブローニンが作ったが、売れなかったのはなぜかというと、飛ばないからだ。
プロゴルファーのパワーが向上し、ハイテクが飛距離という要素一点に集中して製品を作り続けた結果、飛ばす分をコントロールに回したいと考えるプロが出てきた。飛距離は数字になるがコントロールは数字にならない。
それだけではない。メーカーは飛距離の方が扱いやすいし、コントロールのいいクラブを作るための新しい発想には保証のない投資が必要だ。本来ならば、あっと驚くようなハイブリッドを作って欲しいものだが、そんなことはしていないだろう。
お手軽に儲ければいいという思想の日本のメーカーは100年前から知られている当たり前の技術でハイブリッドを作るに違いない。ブローニンが出たとき、誰も見向きもしなかったのに。
と言うわけで、この幽霊のおでこの三角かんむりに似たアイアンはアイアンの歴史の中でたびたび現れては消えた。しかし今回は、もしかすると消えないかも知れない。ヨネックスが作ったものには思想が足りないが、作り続けるだけ偉(えら)い。
アイアンとウッドの垣根を取り払ったクラブセットを模索し始めて、アイアンのロフトを調整し切れなかったので3番アイアンが余った。それで久しぶりにフェイスの先をカットした。懐かしい形のアイアンを今、握っている。
これが飛ばない、つまり売れない事情は「古典的スイングのバランスシート」というタイトルにある通り、ゴルファーが飛ばすことに魅力を感じるからだ。スイングも道具も、だから危険を冒してでも飛ぶ方を選ぶ。
想像や予想をはるかに超える現象を見ると私たちは感動する。ゴルフボールには50年前のマジックボールと同じ感動がある。マジックボールを地面にたたきつければビルの屋上まで弾んだが、ゴルフボールも実に不思議なほど飛ぶ。
ゴルファーは人間の素朴な姿でゴルフを考える。悪いことではない。悪くはないが、よくもない。常識という名の腐った野菜に群がるハエは、新鮮な野菜の味を知らない。知らないどころかまずいと信じている。食べたこともないくせに。
この奇妙なアイアンフェイスに幅広のソールを付ければハイブリッドだが、そこまでしなくてもこのアイアンの不思議さはきっと誰にでもわかる。アイアンセットの一本、たとえば6番アイアンをこのスタイルにすると、6番だけ今までとは違ったスイングになっているのに気付くだろう。
アドレスのイメージからして変わってくる。悪くなるのではない。6番だけ飛び抜けて打ちやすく、スイングイメージも出しやすくなる。嘘ではない。ただし、前から言い続けているように、やさしくなった分だけ打球感がなくなり、飛ばなくなる。
これもどこかで書いたが、5段変速のマニュアルが4段オートマチックになったのと同じ変化が起こる。初めのうちは、これでは車じゃないとか、車を走らせる楽しみがないとか思うだろうが、ドライヴの目的が目的地にあるか、それとも車の運転そのものにあるか、二手に分かれる。
プロは目的地が大事だが、素人は高度な技術を楽しむ方がいい場合もある。そういうゴルファーに限ってへたくそがいいスコアで上がるのを喜ばない。プロはスコアのいい方が偉(えら)いという事実を身にしみて知っている。
古くて使っていないアイアンはあるだろうから是非一本作ってみては如何だろうか。サンダーはさほど高いものではないが、ヘッドを切るには危険が伴う。自信がなければ誰かサンダーを使い慣れた人に切ってもらうか、時間を掛けて鉄ノコ出来る方が安全だ。 筆者

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