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ババ・ワトソンという左利きの化け物ロングヒッターがいる。彼のスイングが妙に気になってヴィデオを繰り返し見ていた。私が直(じか)に見たロングヒッターも左利きだったが、テニスでも左利きはサーヴが速い。

心臓が左にあるので左利きの方が血液を送りやすいからだともっともなことを言う人がいるが、本当とも思えない。しかし左利きの化け物ロングヒッターがいることは確かだ。

ババ・ワトソンがクエイルホローの13番210ヤードのショートホールに立っていた。何番アイアンかわからないが、彼ならば7番でも十分届くと思うが、ボールはかなり低く出ていた。

6番を押さえて打ったのかも知れない。とにかくそのスイングを画面にずっと流し続けていると、ふと妙なことに気付いた。このスイングは誰かに似ている。そう、フレッド・カプルズに似ている。

昔、知り合いの左利きゴルファーのためにテレヴィを買ってきて中を改造し、左右が反転したテレヴィを作った。ほとんどのゴルファーは右利きだからこのテレヴィでトーナメントを見ればみんな左利きだ。

便利だと思ったのだが、文字が反転するので見にくいと不評だった。今それがあるといいが、左でもババ・ワトソンのスイングがカプルズに似ているのはわかる。

しばらく見ていた或る一瞬、背筋がぞくっとするようなインスピレイションが湧いた。このスイングはもしやフライングエルボではないのか。興奮した私は玄関から外へ飛び出し、外に置いてある4番アイアンを握って久しぶりにフライングエルボのスイングをしてみた。やっぱりそうだ、それはまさしくババ・ワトソンだった。

フライングエルボは普通のスイングとは異なるシステムでボールを打つので、コンヴェンショナルなゴルファーやコーチに嫌われた。私のスイングもそうだが、一般にゴルフは左腕一本でやる方が簡単にショットが安定する。ところがフライングエルボは右腕が存在感を主張する。

フライングエルボはシリンダーが伸びることでアームを動かす。普通のスイングはシリンダーが縮むことでアームを引っ張る。左腕というアームを動かす右腕というシリンダーの動きが全く逆になっている。「フライングエルボの逆襲」に書いたとおり、この打ち方はクラブを真っ直ぐ動かしたいという心理から生まれた。

だから本来真っ直ぐ打つには適したスイングで、たとえばパターを構えるときに右の腕を大きく開いて構えるゴルファーは少なくない。杉原プロのパッティングスタイルだ。その構えは正確に目標へ向けてボールを打ちたい心理から生まれたフライングエルボそのものである。

私がフライングエルボをやめた理由はボールが上がらなかったからだが、それは昔の話だ。今ならボールは上がるだろうし、何よりフライングエルボは飛ぶ、はずだ。

私は飛ばないゴルファーで、それはリストをロックしているからだが、普通のスイングではリストは多かれ少なかれ使われる。アームをシリンダーが押すフライングエルボのスイングが生み出すリストのパッシヴな動きは、普通の、シリンダーがアームを引っ張るスイングが作り出すリストの動きと比べると桁違いに大きい。だから飛ぶ。

左腕でクラブを握っているとしよう。このとき手首が左に向かって強く押されればクラブの重量があるので手首は折れて左に動くがクラブはその場に残る。フライングエルボはそうやって強烈にリストを使わせる。普通のスイングはクラブを引っ張ってくるときにやはりクラブの重さで手先だけが前進しクラブは置き去りにされ、結局手首が折れる。

どちらでも同じ動きにはなるのだが、押すのと引っ張るのとでは手首の折れ方の程度が違う。足で板きれを踏んづけて折るのと板きれを引っ張って折るくらい力の入り方が違う。私はノーコックでクラブを引っ張るスインガーだから飛ばないが、フライングエルボにすると左の手首が恐ろしく激しく動くのがわかる。

手首はパッシヴに動くから押す力は手首の動きの大きさを自由に選べるが、引っ張る力では技術がないと手首の動きを大きく出来ない。それで昔から手を直線的にボールに向けて振れとかいうレッスンが行われている。それでも駄目ならわざと手首を折る。意識的にコックをする。それでややこしい世界に迷い込むゴルファーが後を絶たない。

フライングエルボは元々真っ直ぐ飛ばすための工夫だからミスヒットはない。唯一の問題はドローだと思う。ヘッドのトルクは飛距離を出すためにセッティングされているので、リニアに動かすフライングエルボで打てば真っ直ぐ飛ばずにドローするかも知れない。スワンネックが欲しいところだ。

以前から不思議なスイングだと思っていたフレッド・カプルズのスイングが実はフライングエルボだった。エルボの動きだけではフライングエルボのスイングかどうかすぐにはわからない。フライングエルボは生きていた。まだ他にもフライングエルボのゴルファーがいるのではないか。よかった。筆者

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