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ボールが思った方向に飛ばないことがある。無論、その責任は打った本人にあるのだが、他のスポーツに比べてヘッドスピードが格段に速いために、ゴルファーは非常に微妙な世界に住んでいると言える。特に速いのがドライヴァーショットで、こればかりは計算で結果が出せるものではない。



巨大な天体望遠鏡の鏡面磨きはコンピュータを使った機械で行うが、最後は人間の手で完璧に滑らかな鏡面を磨き上げる。コンピュータと機械では不可能な世界がそこにある。ドライヴァーのティーショットも同じだ。皆さんはゴルフクラブのテストマシンという道具を見たことがあるだろうが、あれをオーガスタへ持ち込んだからと言ってマスターズに勝てるわけではない。



ドライヴァーを打つとき、調子がいいとボールを置く位置は決まっている。しかし、たとえば1ミリ右に置けばスライスし、2ミリならばラフに入り、3ミリ右に置くと右の林に入る。嘘ではない。調子がいい時は、当たり前にティーを立て、当たり前に打ったときに、そのボールの位置が1ミリもズレないのだ。



ティーの位置が左へ1ミリズレた場合、今度は左に飛ぶ。3ミリ左へセットしたら、左O.Bへ入る。理屈はそうなるのだが、ゴルファー自身がズレに気付かないシンプルな場合は理屈通りになるが、ティーの位置に違和感がないのに、構えだけが自然に不自然になることもある。



そこは無意識下の感覚でそういうことが起きる。これが同じ方角へ積み重なると、どこかで破綻するし、何しろ無意識だからこの行ったり来たりを繰り返して大過なく収まる場合もある。アメリカ人は計測を重んじ、正確さを好む。サッカー疑惑もアメリカだからこそ暴くことが出来た。



なぜかと言えば、多民族国家は文化のるつぼだから、それぞれの文化を主張していては成り立たない。何か統一された基準が必要だった。それが科学であり、正確な計測であった。アメリカのプロはそういう文化の中で、ナイスショットの実現に関して、練習通りの決まった手順でアドレスし、決まったグリップと決まったタイミングでボールを打つことに専念する。



ところが、天体望遠鏡の鏡面研磨と同じように、今のところ最後は人間の感覚の方が機械よりも正確だという事実がある。それはたぶん永遠に変わらない、逆転し得ないものだと思っている。アドレスしたとき、何となくスライスしそうだと思ったら、実際スライスするはずだが、その時ゴルファーはいつものスイングをしない。出来ない。



それでスライスせずにホックする。ゴルファーはいつものスイングをしなかったのだ。基本をアメリカ流に「決まったアドレスと決まったスイング」とすれば、ティーグラウンドへ定規と傾斜計、風速計や気圧計などを持ち込まなければならない。それが出来ないとなると、人の感覚を使わなければならない。



ボールが思った方向に飛ばない理由はたった一つだが、そのたった一つの事実の裏には、日光いろは坂ほどの紆余曲折がある。その最後の結果が、華厳の滝の道筋に出る。雨量、気温、風向に風速、誰も今日の滝の姿を綿密に予測することは出来ない。しかし、人間の経験というのは確かなものだ。やはり最後は感覚を信じる、それがゴルフだろう。 筆者

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