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1970年代半ばに作られたベンホーガンが手に入りました。1円スタートのオークションで11円で落札できました。私はクラブコレクターではないので、40年も前のクラブを5000円出して買う気はありません。現用の2代目スワンネックと全く同じアイアンだったから入札を頼んだのです。



私のスワンネック第1号セットはマクレガーで作りましたが、このモデルには名前がなく、004という刻印だけで、同じものを探すのが難しいことと、やはりベンホーガンのアイアンは優れた設計なので、助かりました。もう1セット、2番アイアンを含んだ同じものが1円で出ていたのですが、独り占めすることもなかろうと、遠慮しました。


私が初めて新品で買ったアイアンセットはたった一つ、ダンロップのDP-601ですが、これは現在オーストラリアのクラブにバッグごと眠っているか、あるいはすでに廃棄されていると思います。ベンホーガンと似て、ロフトのセッティングが現在よりも上向きで、9番アイアンが45度になっています。5番が当時の実測で29度、つまり今使われているクラブよりも番手が一つ半ほどずれます。



それに対して現在使っているベンホーガンは4番アイアンが16度でした。何十年も使いながらいじっているうちに、飛距離の出ない私はロフトをかなり立てて使っていたことがわかりました。落札したベンホーガンは無改造ですから、見るからにロフトが寝ていて、スワンネックへの改造が終わって使うときには2番手大きなクラブを使わないといけないでしょう。



ベンホーガンとベニー(ベンセイヤーズ)はキャビティを作って失敗し、消えていきました。ミズノやダンロップは初心者用やアヴェレイジゴルファー用にキャビティ型のアイアンを作り、それで利益を稼ぎながら、古いタイプのプロモデルを作り続けています。そもそもトッププロはキャビティを使いません。



タンバリンのような、あるいはマッチ箱の引き出し部分のようなアイアンは飛距離が出るらしいですが、アイアンの価値は飛距離ではありません。それでもやはり飛ぶ方が売れるのが現実なのでしょう。プロは今でも昔ながらの鉄の板を使ってはいますが、飛距離の出ない設計のベンホーガンを使ったプロは希でした。



この世界で最も興味深いスイングを使って勝っていったフューリックや、私が世界一のゴルファーと思っているドイツのランガーなど、ショットの正確性を第一に考えるゴルファーだけが、ベンホーガンの設計したアイアンを使うのです。それに続いて、多くのプロがプロモデルと呼ばれる伝統的デザインのアイアンを使っています。



一体キャビティの価値はどこにあるのでしょうか。飛距離が出たと言っても、それでスコアが良くなったゴルファーは一人もいないと、私は思っています。スコアだけがゴルフを評価する指針です。それがわからないゴルファーを相手に儲けることを拒絶したのがベニーとベンホーガン。



継続は力なりと言うように、生き続ける会社は立派である。同時に、信念を貫いた末に潔(いさぎよ)く消えていく会社もまた立派だと思う。ベンホーガンアイアンについては大昔に書いた。アイアンショットの方向性に特化したそのアイアンのデザインは素晴らしいと言うしかなかった。



私はそのエイペックスの初期型、最も大量に売れたモデルを頂いて使うようになって、ある時ヘッドの先をカットした。アイアンヘッドのトウ部分は大抵丸みを帯びている。そこを1センチほど縦にバッサリとカットした。スピンを掛けるためのすじ、グルーヴというのがあるが、フェイスの先ではブレイドに対して垂直に揃っている。



この溝の先端から3ミリ程度をノリシロみたいなスペイスとして残し、ブレイドに垂直にヘッドを切り取ってしまうと、アイアンは非常に精悍(せいかん)な顔つきになる。私はそれが好きで、使ったアイアンは全部そういう風にカットして使っていた。この気分の元はベニーだった。



まだ日本には入っていなかったベンセイヤーの中古のアイアンをバラバラに少しずつ、オーストラリアで買ったのだが、ガンメタリックのヘッドの、文字の彫りがあるところには赤の塗料を塗り込んであって、妙に赤い文字の目立つアイアンだったが、どこへ行ったか忘れてしまった。



このアイアンはベニーの長い歴史のなかで、言わば古代のアイアンスタイルから近代的なスタイルに移行し、同時に大量生産を開始した時、最初に生産したクラブだと思うのだが、とにかく素晴らしいデザインのアイアンだった。高級感はなく、しかし無駄な部分を全てそぎ取ったかのような、完璧なクラブだった。



当然に、アイアンの先端は真っ直ぐに切り込まれてリーディングエッジと直角になっていた。フェイスの小ささはニクラウスが作ったミュアフィールドという名前のアイアンフェイスが大きく見えるほどだった。このアイアンには名前がなかったか、私が見落としたか、ベンセイヤーとしか記憶はない。



強いて言えば、レイモンド・フロイドというサインの入ったモデルがあとに出ていて、形がよく似ている。フロイドもまた、スイング研究家としてはベスト3に入れなければならないほど独特のスイングの持ち主だった。スイングもすごいが、あのスイングであの正確なショットを打てるところがすごいし、勝ち数がまたすごい。



というわけで、私は30年ぶりに新しい、古いアイアンを買った。今年中にはシャフトを買うお金を作り、正月明けにはグリップを買うお金を作り、溶接代の支払いを終えて、来年から新しいアイアンでゴルフをする予定でいる。もっとも、今年はまだ合計でたった36ホールしかプレーしていないので、このまま人生が終わるのかも知れない。 筆者



古いベンホーガンを探す貯め、オークションを眺めていて妙なことに気付いた。「・・・なります。」という言葉の使い方。「ベンホーガンエイペックスになります。」そりゃおかしいでしょ。「これはベンホーガンです。」と言うのが普通です。

こういう「なります」という使い方がテレヴィのニュースの中にも出てきた。何かの展示会場で、商品を説明する若い人が使っていた。こういう言葉の使い方を日本人が始めたとは思えない。たぶん中国の人がオークションに出品する際に使ったのではないか。

どことなく、ていねいな言葉使いとして使われている節がある。正しくはないが。もっとも、ベンホーガンのオークションを見ていたとき、「スラレンジャー」のベンホーガンというのがあって笑った。「スラセンジャー」ならまだしも、「スラレンジャー」はないでしょ。ほかにも、明らかにベンホーガンのGrindと書いてあるのに、GRNDとなっているのもあった。

ついでながら、ベンホーガンのクラブで、本当に彼のアイアンに対する思想がハッキリと見て取れるのは初期のベンホーガンエイペックスしかない。それ以降に作られたベンホーガンは彼がデザインするわけがないものばかりだ。

かろうじてプロデューサーと、あとから復刻されたらしいクラシックはホーガンの心が入っているが、彼が愛用したと言われているパーソナルやディレクターには「らしさ」がない。ひどいのはエッジで、これはもはやホーガンではない。使いやすそうなクラブだけれど。

そんなベンホーガンらしくないアイアンを使うくらいなら、ダンロップのDP-601の方が余程ホーガンに似ている。ベンホーガンのアイアンはロフトとは別の、もっと本質的な事情で飛距離が出ない設計になっている。その分安定した方向性を実現している。そこにホーガンの生み出したデザインがあり、思想が反映されている。

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