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現用している1970年代半ばの「ベンホーガンエイペックス改」の7番と5番が使えなくなっていたので、新しくアイアンセットを作ることにした。同じタイプのベンホーガンを手に入れ(1円入札で落札)、久しぶりにアイアンクラブというものについてぼんやりと考えていた。



私はキャヴィティスタイルのアイアンを使ったことがない。タンバリンのような洗面器と言うか、箱形をしたヘッドは鋳物(いもの)が多いのでライ角やロフトを動かせない。鍛造のキャヴィティもあるだろうが、わざわざ探す気もない。



そもそも不思議なのは、プロはキャヴィティを使わず、アマチュアはほとんどがキャヴィティを使っていることだ。普通アマチュアというのはその時代のトッププロが使う道具を使いたがるものだ。それでふと、テニスラケットのことを思い出した。



デカラケが登場して以来、アマチュアに人気があって今ではアマチュアプレーヤーはほとんどデカラケだが、プロはコンヴェンショナルな小さめのラケットを使い続けた。しかし女性の場合はプロでもデカラケを使う傾向が強い。ということは、女子プロゴルファーにはキャヴィティ型のアイアンを使う人が案外多いかも知れないと思った。



打ったことはないが、たぶん私はキャヴィティを使う気にならないと思う。ラケットでも軽いのはボールをヒットしたときの反動が大きく、しかも球離れが早いのでコントロールしにくい。キャヴィティが売れるのはきっと飛距離が出るからだろうが、アイアンに飛距離はいらない。



今度作る新しい(古いモデルだが)アイアンは現在使っているのと全く同じモデルだが、比べてみて驚いた。ロフトが違う。長い間使っている間にかなりロフトを変えたようで、飛ばない私はロフトをどんどん立てていったことがわかった。


ベンホーガンエイペックスは昔のアイアンだからロフトは大きめに作られている。1970年から1990年あたりまで、市場に出るアイアンのロフトは少しずつ小さく、つまり立っていった。低重心のアイアンがボールを高く上げやすくし、カーボンシャフトの軽さも手伝ってロフトを立てても弾道の高さに困らなくなったからだ。



しかもゴルファー心理で、短いアイアンで飛距離を出せる方がかっこいいのか、そういうアイアンセットが売れる。今のアイアンのロフトは知らないが、手に入れた無調整の初期のベンホーガンは9番アイアンがちょうど45度になっていた。今使っている方はウェッジが45度だ。



オリジナルの方の5番アイアンは30度近くある。もっとも、もらい物ばかり使ってきた私が初めて買ったアイアンセットのダンロップDP-601というのも5番アイアンで30度近くあったと記憶している。



余談だが、ダンロップを買ったあとに、どうしても2番アイアンが欲しくて探したが、601モデルがなくてDP-602という、形も色合いも全てほとんど601と変わらないモデルの2番を買った。たった1本なのにアイアンセットとさほど変わらない値段で買ったのだが、使えなかった。


似て非なるもの、と言うが、これほど似て非なるクラブはなかった。どこが違うかわからないが、とにかく打ったら全然違った。この2番はすぐダメになった。ちょっとライ角を動かそうとしたらポキッと折れた。他のクラブは何回となく角度を変えたが折れなかった。軟鉄なのに。



軟鉄鍛造のクラブでも安物は折れるし、いいものでも曲げ過ぎれば折れる。だから私は折れた断面を知っている。ところがこの2番の折れた断面は普通と違っていた。もしかすると鋳物かも知れない、と。キャヴィティでなくても、ヘッドの形がそっくりでも、鋳物は鍛造品と何かが違うのかも知れない。



オリジナルと比べて見ると、私の現用のベンホーガンは恐ろしい怪物になっていた。6番アイアンのロフトはオリジナルの3番と4番の間くらい。長さは39インチで2番アイアンと同じ。この6番アイアンで私は150ヤード打つ。つまり私は150ヤードを、普通のゴルファーが使う3番アイアンで打っていたわけだ。


ところが、一緒にラウンドすることの多い、平均スコアが108程度の非力なゴルファーは、私がこの6番を持つ位置で同じ6番を手にする。届くはずがない。したがってスコアは20も違ってしまう。



上手なゴルファーと回るとき、彼はいつでも私より1.5番短いクラブを持つ。特に飛ばすゴルファーではないが、同じ番手を持つことは全くない。しかし、考えてみれば、私のクラブは普通のクラブより番手にして3番手大きな数字になっているわけで、合計すると5番近く番手が違う。それでもスコアは変わらない。


アイアンに飛距離はいらないと言うのはそういうことだ。私が21度のクリークを持つ場所で、彼は5番アイアンを使う。飛距離も弾道も変わらない。ただ彼はフェアウェイウッドが嫌いなだけで、私はドライヴィングアイアンでも届かないから、代わりにフェアウェイウッドを使うだけだ。


ウォルターヘイゲンウルトラというアイアンで素振りをしていた時代があった。しかし最近ネットで見かけるものは新しいのか、形が全然違っている。あまりいい形とは思わない。私が使っていたウォルターヘイゲンにはウォルターヘイゲンの文字はなかった。




ヘッドの背中のトウに近いあたりに中世の紋章というか、旗というか、そういう模様があって、右上から斜めに区切って、左上側にWの文字、右下にHの文字が刻んであった。確か刻んだ文字には赤い色が塗ってあったように記憶している。その紋章以外に、小さなブロック体でULTRAという文字がヘッドの上の隅に小さく入っていた。



私がこのクラブをウィルソンのクラブだと思っていたのはWがウィルソンのWと勘違いしていたからだと思う。オーソドックスないいクラブだったが、まだ子供だったのでボールを打ったことはなかった。このクラブから現在の各社のプロモデルまで、ヘッドのスタイルはほとんど変わっていない。キャヴィティとは一体何なんだろうか。



私はキャヴィティという構造のアイアンは、昔ながらの普通のアイアンに比べて難しい道具だと想像している。しかしこれから先の、未来のゴルファー達は、プロも含めてキャヴィティ型のアイアンを使うようになる。それは一種の取引というか、難しさの移動というか、そういうことなのだろう。



そしてキャヴィティの難しさを克服する技術を身につけたゴルファーが、プロとして活躍する時代になる。コンヴェンショナルな形のアイアンは、パワーがあって不器用なプロが使い続けるだろうが、いずれいなくなる。



それはゴルフの技術が変化するということでもあるし、ある意味で進化すると言ってもいい。ただし、各社が販売する現在のプロモデルが持っている自然な微妙さ、ボールを打ったときの自然な感触には捨てがたいものがあるのも事実だ。



私はキャヴィティを打ったことがない。しかしキャヴィティという形のアイアンは飛距離の点でも、作りやすさの点でも、コストの点でも、クラブメーカーが生き残るために必須条件であり、後戻りは出来ない。



自分でクラブを作らない限り、未来のプロもキャヴィティで成績を残せる技術を身につけなければ生きてはいけない。そうやって社会は変遷していくのである。そうして未来のゴルファー達は、今私が使っているようなアイアンを不思議な目で見るだろう。



どちらがいいというのではない。テニスラケットについてさんざん書いてきたことだが、メーカーが作らないラケットは誰も使えないわけで、たとえ自分に合ったラケットが昔あったにせよ、それは古いラケットを探し出して使う以外に方法がない。ラケットはゴルフクラブ以上に自作しにくいものだからだ。



私が仕事で使うラケットはダンロップ200Gというモデルで、5本ほど持っているが、40年近く前のラケットである。人生で何十本使ったかわからないが、このラケットは今でもテニスラケットとして最高峰に位置している。ただメーカーが作ってくれないからプロもアマチュアも使わない。使えない。



見方に依れば、私たちは自分に合った道具を使っているのではなく、道具に合わせた技術を磨いているに過ぎない。現代の刀工が素晴らしい刀を作るには、製鉄所に行ってもダメで、沈没した昔の船から錨(いかり)を引き上げ、その鉄を吟味して使う。



なぜなら、現代の製鉄所では刀を作るのに適した鉄は作れない、というより作らないからだ。世の中の変遷は必ずしも進歩を意味しない。しかし人々はその変化に合わせて同じように変化していく。それは必ずしも進歩ではないが、少なくとも適応していく。 私はキャヴィティを使わない。 慣れる時間がない。筆者

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