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釣り竿は真っ直ぐだが、ちょっと変わった投げ釣り竿を紹介する。真っ直ぐ6メートル伸びた先で右に60度、「く」の字に曲がって70センチ伸びる、そういう竿があったとする。60度だと話が面倒なので直角に曲がっているとする。竿にはガイドと呼ばれる小さな輪が所々に取り付けられて先まで行っている。この輪の中に釣り糸を通す。



子供の頃に使っていた竿にはガイドのないものもあった。竿の中を糸が通っていた。スッキリしていておしゃれだったが、この頃はあるのだろうか。それと、普通の竿は高価で、子供に買えるのは6角形の竿だったような記憶がある。ただの丸い竿より余程手間が掛かりそうなのに、安かった。たぶん、今で言う集合材のような、竹の切りくずを固めて作るから安かったのだろうか。



この変な竿で、ゴルフボール3個程度のおもりを付けた仕掛けを遠投する。直角に曲がった先の70センチ分のシャフトは全くしなりのない、硬いものとし、曲がった部分に起こるガイドと釣り糸との大きな摩擦はないものとする。まず、この竿を海に向けて水平に構える。70センチの曲がりの部分も右側にあってしなりはないが水平にはならない。おもりの重さで少し垂れ下がっている。


なぜしなりがないシャフトなのに垂れているかというと、手元から真っ直ぐに、ちょっとしなっている竿には「ねじれ」が起きているからだ。竿はしなりだけではなくねじれもするはずだが、普通の釣り竿を普通に振る場合は問題を起こさない。ゴルフクラブでトルクというのがある。これを測る機械とこの釣り竿とは同じ仕掛けになっている。つまり、「く」の字に曲がった先の70センチのシャフトが何センチ垂れているか、それを測ってトルクと呼んでいる。



この竿で遠投すると、どうなると思うか。普通の竿より飛ぶか飛ばないか。曲がった先を含めて総延長6.7メートルの「く」の字竿と、長さ6.7メートルの普通の真っ直ぐな竿と、どちらがおもりを遠くへ飛ばせるか。無論、そんなことはやってみないとわからないし、曲がり際のところの摩擦をゼロにすることはできないので、やっても本当のところはわからない。



しかし、この竿でおもりを真っ直ぐ飛ばすのがどれだけ難しいかはわかるだろう。本体の竿のしなりだけなら真っ直ぐ飛ばすのは簡単だが、曲がりの先のシャフトも本体のシャフトの「ねじれ」のせいで回転する。タイミングを外せば右にでも左にでもおもりは飛び出す。下手をすれば後ろにさえ飛ぶ。



そう考えると、ゴルフクラブのシャフトはねじれがゼロ、つまりトルクがゼロでありながら大きなしなりを持っているものが一番安全で真っ直ぐ飛びやすい、ということがわかる。シャフトが柔らかいほどねじれも大きい。硬いシャフトほどねじれが少ない。シャフト屋さん達はこの自然の物理学と戦う、はずなのだが。



ところが、今のクラブメーカーはシャフトのトルクをどんどん大きくしたクラブを売り出している。なぜかというと、投げ釣りのおもりを遠くへ飛ばすためにしなりを大きくした上に、さらに曲がりの先の短いシャフトが本体のねじれによって鋭く回転する、そのスピードも利用しておもりをもっと遠くまで飛ばそうとする釣具屋のようなものだ。釣具屋はそんな馬鹿はやらない。真っ直ぐで結構なのだ。



今のゴルフ屋さんはおそろしく難しいクラブを売ろうとしている。しかしそれもゴルファーが異常に飛距離を愛するが故のことで、ゴルフ屋さんの責任ではない。商売だから売らねば意味がない。ゴルフ屋はそもそもクラブヘッドがシャフトに対して曲がって取り付けられているゴルフクラブ、そういう規則になっている道具を上手に設計する。




最初は軽いクラブを追求した。次は初心に戻って長いシャフトの方が飛ぶという力学の基本に還(かえ)った。42インチが標準だったドライヴァーが今や46インチを越えていて当たり前になった。私は20年近く、その長いシャフトのドライヴァーを使ってずっと笑われてきたのに。



シャフトの長さのあと、次のクラブはどうしようかと、クラブやさん達は考えた。そして今どきはねじれの大きなシャフト、トルクの大きさを利用するようなクラブを作っている。しかし、本来はそうあるべきではない。ゴルファーが楽にゴルフを楽しめるようなドライヴァーは、しなりを最大限に利用し、トルクをゼロに押さえたドライヴァーだろうと思う。



ボールが真っ直ぐ飛ばないのは、ねじれがどういう風にヘッドを回すのか、スイングのかすかな違いによって何千倍にも増幅されたスイングの誤差が、ボールを真っ直ぐ飛ばしてくれない。しなりの誤差、その時々のスイングのパワー的な誤差、強弱はせいぜいボールの高さ、弾道を狂わせる程度だろう。



硬くてねじれの大きなシャフトを作るのも神業だと思うが、そんなことに腐心するより、その逆の、柔らかいのにねじれがゼロのシャフトを開発するのが順序ではなかったか。そうすればゴルフは一応簡単になる。その先にもしも、危険だけれどももっと飛ばせるクラブを欲しがるゴルファーのために、硬くてねじれの大きなシャフト、そういうクラブを売り出すべきだった。



たぶん、技術的な困難さの違いが、シャフト屋さん達に楽な道を選ばせたのだろう。ねじれの大きなシャフトの硬さをコントロールする方が、ねじれが極限まで小さくてしかも軽い、柔らかなシャフトを作るより楽だったのだろうと思う。というわけで、練習しないでいいスコアを出したいと思う私は、曲がる危険の少ない「ねじれ」がゼロで、しかも非力な打法の私を助けてくれる柔らかいシャフト、不自然というか、自然に矛盾するような、そういうシャフトがあったらと思う。



私の欲しい未来のシャフトはレディースシャフトのようにしなりが大きい、振動数が200程度しかなくて、かつ、ねじれが小さな、トルクで言えば0.5程度の、ほとんどあり得ないシャフトが希望なのです。 筆者



昔のプロゴルファーで飛ばし屋と言われた人たちのほとんどは、手首の返し方を知っていた。手首を返すという作業にはもちろんシャフトのしなりを大きくする作用もあるが、それよりむしろ、手首だけの動きでたたく、ビンタのような力に効果があっただろう。ねじれはすなわち、ビンタ、になるわけで、そのねじれとしなりの両方を利用してボールを飛ばしていた。



今、プロの世界は手首の返しを使わない方向での進化、道具に頼った進化が進んでいる。前に、まだ彼が有名になるちょっと前、ジョーダン・スピースのスイングについて書いた記憶がある。ドライヴァーをまるでウェッジのようなスイングで済ませているところがすごい、と。



たぶんドライヴァーという道具の変化、メーカーの努力による進化が、プロゴルファーから手首の返しという技術を奪った。ところが、依然として普通の体格の、普通のアマチュアゴルファーの中にいる飛ばし屋達は伝統的な手首の返しで飛ばしている。それが私にはスピースよりも優れた技術に見える。これぞ技術。




読者はプロが一番先を走っていると信じているだろうが、先を走るのは常にアマチュアである。ある意味で時間のない、別の意味では無尽蔵な時間を持っているアマチュアが、世界の先端を走るのである。今のプロは何時か行き詰まる時が来る。そのとき、彼等はシャフトのねじれ、手首の返し、そして「く」の字に曲がった投げ釣り用の磯竿の話を思い出すだろう。



競争というのはそういうもので、テニスでも30年流行が続いたストローク戦が行き詰まりそうな状況で、ヴォレーを試みるプロがちらほらと出てきている。長く続いたストローク全盛の時代だったから、ストローカーはヴォレーヤーに慣れていない。ここで天才的なヴォレーヤーが出てきたら、時代は変化すると思われる。プロゴルフの世界でも、優れた技術というものは必ずよみがえる時が来る。



私は今のスピースのようなプロの新しい打法がアマチュア向きで、アマチュアの飛ばし屋が使っている技術の方が余程プロ向きだと思う。私のドライヴァーのスイングは昔から「ブルドーザがボールを押しているようだ」と言われてきた。まさにスピースの打法なのだが、彼ほど力も体格もないので全く飛ばない。しかし練習なしに安定しているのはそのせいだろう。

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