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「クラブを開いて構える」風のタイトルは沢山書いたが、誰も見向きもしなかった。しかし、アドレスには「嘘」と言うか、「ごまかし」と言うか、矛盾がある。それはゴルフスイングを語る上で避けて通れないはずなのだが、誰もそこを見ない。


アドレスで、アマチュアには30度もフェイスをクローズドにして構えたり、逆に10度くらいオープンにして構えるゴルファーがいる。しかしそこまで極端な構えをするプロはあまりいない。そこに嘘がある。


ドライヴァースイングの高速度撮影ヴィデオを見ると、ボールは打った瞬間に飛び出していないのは明らかだ。パターのようにスイングが遅い場合は何の疑問も起こらなず、目標に対してフェイスを合わせ、バックスイングを20センチ取れば、すでにフェイスは18度くらい開く。


バックスイングしたらフェイスが開いていくのは当然で、パターの場合、私のような前向きパットでない限りリニアに引くことは理不尽なことだ。けれどもパターならばその開いて行ったフェイスを、ダウンスイングで徐々に戻し、インパクトでアドレスの状態、つまりスクエアに戻す練習をすれば済む。


しかしドライヴァーのように高速で動くクラブフェイスの場合はそういう話では済まない。だってそうでしょ。ドライヴァーをスクエアにアドレスして、そこから20センチくらい右へヘッドを持っていって地面に下ろしたら、フェイスは20度近く開いているでしょう。


つまりアドレスでボールの後方にヘッドを置いたならば、そのフェイスはいくらか開いていなければならないわけです。それなのにゴルファーはアドレスでスクエアにフェイスをセットします。ドライヴァーフェイスがボールをヒットしたとき、ボールはパターのようにインパクトの瞬間には飛び出してくれません。


もしもシャフトとドライヴァーヘッドが、現実にはあり得ない、正しい動きをするとすれば、全てのゴルファーはドローしか打てないはずです。理想というのは、しばしばあり得ない状況下での事実を表現するもので、それは無意味なこともあれば、歴史を変えるほどの重要性を持つこともあります。


オデッセイのパターにツーボール何とか、と言うような名前の、ヘッド上部にゴルフボール大の円が二つ描かれたパターがある。ドライヴァーの高速度写真でボールがリリースされるときのフェイスの位置を確認し、ティーがあった場所の上に相当するヘッド上部に、あのパターと同じような円を描いてみた。


おわかりと思うが、アドレスでティーアップしたボールの上にヘッドを持っていき、このマークをボールの真上に重ねるのである。これが本当の、目標方向にスクエアなアドレスである。ここからバックスイングしてもいいが、高さが違うのでトップしそうで怖い。


それで、アドレスした後に右に7センチほどヘッドを動かして地面に下ろす。そうするといつもと同じ構えになるが、フェイスは開いているはずだ。しかしこの構えでなければボールがフェイスからリリースされたときに真っ直ぐ目標方向に飛び出すはずはないのだ。


ないのだが、実際にはあるのが言わば「嘘」の部分である。みんな嘘を付いているとも言えるが、シャフトのしなりやねじれ、大きなライ角によるヘッドの暴れ具合などが関係して、嘘が嘘でなくなっているとも言える。


理想的なイメージというのは「あり得ない」状況で考えることだから、シャフトは全く曲がらない。そんなあり得ない条件で考えても仕方ないと思うだろうが、ややこしい物事を単純なモデルにしてから、それからどうするかを考える方が簡単なことが多い。


むやみにシャフトを替えていては何時うまいシャフトに出会えるかわからない。よく試打と言うが、体のコンディションが一定でなければ意味がないし、そんなことはあり得ない。試打の専門家は打つ前にクラブを持っただけでどんな性質を持っているクラブかわかってしまう。だから試打レポートが的確なのだ。


自動車はアクセルを離すとだんだん速度が落ちる。エンジンをガンガン回しておかないと車は止まる。つまり、力を入れている間は動き、力を抜いたりやめると止まる、と昔は信じられていた。500年前までは大人もそう信じていた。今でもそれは実際にそうだが、人間は本当の事実を発見した。


摩擦という力、空気の抵抗という力、そういう力が車を止めるのであって、そういう力がなければ、一度力を入れて走り出せさえすれば、車は永遠にその速度で走り続ける。速度を上げたいときだけ、もう一度力を入れればいいのだ。


ゲームセンターにある何とかホッケーというのがそうだ。あのパックは摩擦が小さい素材で作られているから不思議なほど速度が落ちない。千年前にあれがあったら、人間はもっと早く事実に気付いていたのだが、何しろ世の中は摩擦に満ちあふれていて、とうとう500年前まで気付かなかった。


このタイトルの「嘘」も、物理的にあり得ない理想の世界で見つけた「アドレスの嘘」である。だから実際の世界では今と何も変わらないのだが、シャフトを選んだり、ヘッドを選んだりするとき、この嘘を知っていることで全てがわかる。


道具を選んだりスイングを選んだりするとき、自分に最適な道具は何か、イメージが浮かびやすくなる。慣性の法則は現実社会の摩擦力によって長い間隠されていた。アドレスの法則はシャフトの柔らかさやヘッドのキック力によって今だに隠されている。私はそれを表に出した。 筆者


余談

高速道を走っていると長い下り坂に出会うことがある。斜度3度から4度の間にギアを抜いても速度が全く変わらない角度がある。ああ、これは摩擦と重力が平衡しているのだな、と妙に感心する、変な私。

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