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ゴルフクラブとスイング、その北極と南極

先日120円で40数本のゴルフクラブを落札した。たった一本のウェッジが目に留まったからだが、40本以上のゴミを捨てるのが大変だった。ヘッドを外して、カーボンとスチールシャフトを分別し、ゴミに出した。



このとき思ったのが、ゴルフクラブという道具の扱い辛(づら)さだ。立てかければ倒れる。横に寝かして置いてもまとまってくれず、ビローンと広がってしまう。ヘッドを上にするとグリップが地面にグリップするのでいいかと思えば、やはりヘッドの重さで大音響と共に倒れる。



ヘッドを下にしてまとめると、アイアンヘッドはツルツルなので滑って、またビローンと大風呂敷を広げる。実に何というか、扱いにくい。しかもバランスが悪いので、ひとまとめに抱えようとしてもまとまらない。斜めになるクラブが出てくるから持ちにくいこと半端ではなかった。これはひとえにゴルフクラブという道具の奇妙な形に由来している。



ところがヘッドを外した途端、全く世界が変わって、実に扱いやすいゴミに変身した。以前から言っているように、ゴルフクラブは力学的に不安定な形状の物体で、それを振り回すとなると、それこそ曲芸師のようなことになってしまう。



クラブが金槌のようなT字ならまだいいのだろうが、クラブはL字型である。重さのあるL字の物体ほど扱いにくいものはない。大きな鉄パイプで出来たL字の物体などは、持ち運ぼうとするとケガをしかねない。


L字は90度だが、この角度がだんだんと小さくなっていくほど、バランスが良くなって扱いやすくなる。つまりライ角が小さいほど動きが単純になっていく。ライ角ゼロになるとただの真っ直ぐな棒で、これはバランス成分が一つしかないから一番扱いやすい。


素朴に言えば、背が低い人ほどクラブのライ角はフラットになるので、スイングも素朴になる。これはいいことだろう。ちなみに横振りと縦振りという区別は、単にスイングを外から見た様子を表している。それに対して、背が高くても低くても、アップライトスイングとフラットスイングは自由に選べる。アップライトとフラットは打法の形式だからである。(私個人の定義による)


しかしライ角は背の高さで決まる。最近は日本人の身長もかなり伸びてきたので、ライ角の大きいものが使えるようになったし、アメリカ風のいわゆるアップライトスイングが、まるで新しい進化したスイングだと言わんばかりのアホなインストラクターが多いので、自然、アップライトに振るゴルファーは増えている。


しかしながらUSPGAのプロの中にどれだけアップライトなスインガーがいるかとなると、多く見積もっても半分に満たないだろうと思う。多くは昔ながらの、ニクラウスやパーマーと同じような縦振りのフラットスイングで済ませている。アップライトスイングの権化のようなグレッグ・ノーマンと同じように振るプロは、背が高くて細身のプロゴルファーに集中している。


話が横に飛んだが、或(あ)る視点から眺めたとき、ゴルフスイングは2種類に分けられる。野球のピッチャーの投球フォームと、ソフトボールのピッチャーやクリケットのボーラー(野球のピッチャーと同じ)のフォームに。野球は手首もひじも曲げ伸ばしして使うが、ソフトやクリケットはひじを真っ直ぐ伸ばしたまま投げる。


これは一方が釣り竿のようにしなやかにしなる道具で、他方は旗棒のように真っ直ぐで曲がらない道具である。一般的に、当然野球の方が速球が投げられる。ただしソフトのピッチャーとして有名になったあの子は、女性でありながら120キロ出るらしいし、クリケットでは150キロと、野球のピッチャーと変わらない速度が記録されている。


野球のピッチングは手首と指の使い方で球質を変えるが、同時に球速を増すためにも手首のコキコキは十分以上に使われている。しかしソフトやクリケットのフォームでは、手首は主に球質を変える、つまり変化球を投げるためにだけ使われるように見える。


手首とひじの両方を使う野球の投球フォームの方が、パワーという点でどう考えても有利だ。ボール投げを全くしたことがない人を除けば、普通の人がボールを投げるとき、ソフトボールの投球フォームより野球のフォームの方が速いボールを投げるだろうし、遠投する事を考えたら、野球のフォームとソフトボールのフォームでは野球の方が遠くに投げられそうな気がする。


ゴルフスイングにもゴルフクラブにも、野球とソフトの投球フォームの違いに似た、二種類の行き方、生き方がある。私のスイングはボールを「押す」スイングだと言われている。ボールの後ろからドドーッと押すように見えるらしい。弾(はじ)くという感じではない。


時計の長針が回る。反時計回りに回っていると想像して頂ければ、ちょうど5時半くらいのところにボールが置いてある。針が動いてボールを打つ、そういうスイングに見えるらしい。


普通のゴルフスイングは長針の途中に関節があって折れ曲がれる。真っ直ぐな針が折れ曲がって重なるくらいまで折れる場合もある。そしてインパクトでその針は真っ直ぐになる。無論私のスイングでもそういう動きがないはずはないのだが、折れ曲がりが戻るのが早いのか、真っ直ぐな針がただブーンと回っているように見えるのである。


旗棒と釣り竿の違い同様、私のスイングでは飛距離が出ない。飛ばしたいと思えば関節は大事だ。それを極限まで使えば、スイング自体のスピードが遅くてもヘッドスピードは上がる。しばしば言うように、クラブヘッドを急角度に降ろしてくるスイングは飛距離が出せる。


さらにアイアンヘッドの形状とシャフトの性質を工夫すれば、クラブ自体もまた、大きなライ角やヘッドデザインによる重量配分によって、シャフトのしなり戻りなどがインパクトでボールを打つときのフェイスの速度を速くできる。


普通のゴルファーは自分に合った最適なゴルフクラブを探すのだが、全てのクラブをその傾向、性質の順に並べたとき、そのゴルファーに最適なクラブはその中間のどこかにあって、端にはない。ところが私のスイングでは最適なクラブは一方の端にある。


時計の針が回る。5時半にボールがある。そういう単純なスイングなので、シャフトのしなりやトルクによるヘッドの行き過ぎだけが問題になる。自分から見てシャフトが逆「く」の字になる分、左に飛ぶ。


無論こういう場合、もっとパワーがあれば「く」の字でボールを打つことになるから、パワーのない私はもう少し柔らかなシャフトを選べばいいかというと、それは恐ろしい選択である。柔らかいとクラブが勝手に動く量が増えて、それを把握(はあく)する手間が増えていく。


必要な練習量が増え、なかなか安定しない。ただし飛距離は出る。ここで飛距離の誘惑に負けて失敗しているのがアマチュアゴルファーという生き物の姿だろう。私は練習しないで素晴らしいスコアが出せるスイングを探し、そういうゴルフクラブを作り続けてきた。


だからわざわざトリッキーなスイングの世界へ足を踏み入れようとは思わない。飛距離が190あればゴルフになる。それ以下になってまだゴルフが出来る体なら、そのときは考えよう。


私のスイングと奇妙なクラブが言わば北極だとすれば、皆さんのゴルフスイングと道具は赤道付近をさまよっている。そしてプロは南極で暮らす。そういう図式になっているような気がする。 


48インチのドライヴァーは42.5インチのドライヴァーよりも打ちにくいと普通は思うし、実際そうだろう。それはスイングのタイミングが非常に繊細だからで、私のようなスイングはシャフトの長さは全く関係ない。むしろ長い方が動きがゆっくりになって見やすいので、都合がいいくらいだ。筆者

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